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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第三章 『テルス』

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22/24

第十一話後編 『七つの星』

蛇足ですが

一子相伝の暗殺拳とか、眉太マッチョとは

関連のないお話です。

世界はまだ、死んでません。

    この世界に生きる人々は、

  中央大陸こそが世界の全てである

      と考えていた。


 古代より、

海の向こうには何もない

    と伝えられてきた。


 大陸の東側には、

天を遮るように連なる巨大な山脈がある。


 人々はそれを、チョベリグと呼んだ。


 その山脈は、

人の世と神々の領域を隔てる境界。

人の足で越えることのできない、

神々の住まう地へと続く壁である

と信じられていた。


    山脈の最高峰、モランマ


 その頂は、この時代に至ってもなお、

     人類未踏の地である。


 雲を突き抜けるその頂には

神々が住まう。そう語り継がれ、

人々は畏敬を込めて、

そこを『神々の地』と呼んでいた。


 そのモランマの西の麓に、

      一つの小さな国がある。


      ディウス神聖国


 国土は、一つの街ほど。

モランマに住まう神々を信仰する宗教国家

であり、その門徒の数は大陸最大を誇る。


 七大国のいずれにも多くの信徒を抱え、

国境を越えて人々の心に深く根付いた信仰

は、時に国家の枠組みさえも超える影響力

を持っていた。


 その国の頂点に立つのが、

  現教皇ラーマ・ソフト二世である。


 その日、ディウス神聖国の大聖堂には、

多くの聖職者と信徒が集まっていた。


 高い天井を支える巨大な柱。

壁面を彩る神々の彫刻。祭壇の奥には、

モランマを模した神聖な紋章が掲げ

られている。


 教皇は祭壇の前に立ち、

   静かに祈りを捧げていた。


 大聖堂を満たすのは、

      祈りの声と、

          厳かな沈黙。


 その時、空間がこの世界とは異質な

“何か”に変化したような感覚。大聖堂の中

皆がその感覚に入る。と変化を感じた時。


『世界に散った七つの星が連なる時、

     暗闇は消え去る』


 声が響いた。


 それは、大聖堂のどこから

  聞こえてきたものでもなかった。

 天井からでも、祭壇からでもない。

 大聖堂そのものに、声が満ちていた。

そして、“その声”以外の音は消えていた。


 そこにいた者たちは、

誰一人として聞き逃さなかった。

 “その声”を受け入れて間もなく

    空間は日常へと帰る。


 祈りを捧げていた者も、

祭壇を見つめていた者も、

    皆が一斉に顔を上げる。


 教皇ラーマ・ソフト二世もまた、

    静かに目を開いた。


「……神託」


 誰かが、震える声で呟いた。


 それを皮切りに、

大聖堂の中にざわめきが広がっていく。


       神の言葉


 それは、

人の世に直接もたらされることなど、

    そうあるものではない。


 教皇は祭壇を見つめたまま、

    しばらく動かなかった。


 やがて、

   ゆっくりと両手を胸の前で組む。


「神よ……」


 その声には、

    深い畏敬が込められていた。


 神託は、ただちに記録され、

ディウス神聖国の名のもとに公表された。


 そして、その言葉は

瞬く間に世界へと広まっていった。


          ◆


 神託が各国へ伝わると、

七大国では古くから語り継がれてきた

伝承に、改めて注目が集まった。



      ブリタニア王国


『空を穢れが覆う時 

        天空の子 これを祓う』




       シン帝国


『曇天落つる時 火槍これを穿つ』




      ポルタス王国


『地の底より出ずるは魔

        天の子は地に降り立つ』




     アトランティス王国


『北から禍が湧き起こるとも海神が討つ』




      パニアス王国


『降りかかる災禍は聖母の歌に救われる』




      ルージア帝国


『凍てつく大地を

       大いなる愛で女神が包む』




       アステカ王国


『新たな光が六つの星を援け

           再び太陽が輝く』



 それぞれの国に伝わる、救世主の伝承。

これらが、今回の神託にある

      『七つの星』

     と関係しているのではないか。


 そう考える者は少なくなかった。


 そして、もう一つ。


 先の戦いで、各国には

人々から英雄視される人物が現れていた。


 七つの国に、一人の英雄。


 偶然と片付けるには、

あまりにも符合するものが多かった。


 やがて、各国の首脳たちの間で、

    一つの案が浮かび上がる。


 七大国の英雄を、一堂に集める。


 神託の意味を確かめる為に。


 そして、

  これから訪れる戦いに備えるために。


           ◆


     ルージア帝国、帝都


 皇帝の居城にある会議室では、各国の

首脳が魔導通信を介して卓についていた。


 円卓を囲むように設置された通信装置。

その上には、

 各国の代表者の姿が映し出されている。


 会議の議題は、ディウス神聖国から

   発表された“神託”について。


「神託と、

各国に伝わる救世主の

 伝承……か」

     ルージア帝国皇帝が、

           低く呟く。


「七つの星が連なるという言葉と、

七大国の関連。何もないとは考え難い」

     シン帝国皇帝が、

        冷静に言葉を返した。


「そうね。

伝承と神託が結びつくのは興味深いけれ

ど、都合よく解釈してしまうのは危険ね」

     ブリタニア女王も、

        慎重な姿勢を崩さない。


「なれど、各国に

  英雄と呼ばれる者がいることも事実」

     アトランティス王が

          口を開く、そして。


「僭越ながら述べさせていただきます。

先の戦いで、

それぞれが常人を超える働きを見せた。

七つの国に

七人の英雄がいる。

それが神託の示すものと無関係だとは、

          私には思えません」


「アルク殿の言うことも一理あるな」

     ポルタス王が頷き


「神託の真意が分からぬ以上、

我々に出来ることは限られておる。

ならば、まずは七人を集めてみるべき

             ではないか」


「私も賛成です」

     パニアス王が続けた


「今は各国が別々に戦う時ではない。

人々を守る為にも、互いの力を知り、

協力できる道を探すべきであろう」


 アステカ王も静かに頷いた。


「神託が何を意味するにせよ、

今の人類に必要なのは力を合わせること。

七人の英雄が集うことで、何かが見えるの

であれば、試す価値はあるのではないか」


 各国の視線が、

ルージア帝国皇帝へと向けられる。


 この会議の場を設けたのは

ルージア帝国であり、七人を集める場所も

また、ルージア帝都が候補となっていた。


 皇帝は

   しばらく沈黙した後、口を開いた。


「良いだろう。

七人の英雄を、この帝都へ招く。

各国はそれぞれの英雄を送り出してくれ」


 こうして、

七人の英雄を集結させることが決まった。



          ◆



       ………


     ルージア帝国、帝都


 皇帝の居城にある大広間。

その最奥には、

威厳を湛えた玉座が据えられていた。


 広間の中央では、

男女が和やかに言葉を交わしている。


 女性は、

ルージアが誇る付与術師セレネ。


 男性は、ブリタニア史上最高と称される

        聖騎士アークだった。


 二人が並ぶ姿は、

   どこか絵画のようでもある。


 世界の危機さえなければ、

見ている者まで幸せな気持ちに

  させるような光景だった。


 そこへ、一人の少女が現れた。


 聖職者を思わせる服装とは対照的な、

柔和な笑顔。

パニアスの聖女と呼ばれる施療師アリア。


「お二人とも、

   もういらしていたんですね」


「こんにちは、アリアさん」

     アークが笑顔で迎える。


「お待ちしていました」


「ふふ。

そんなにかしこまらなくてもいいですよ」


 アリアは二人の間に加わり、

まるで以前から知り合いだったかのように会話を始めた。


 三人は初対面のはずだった。


 それでも、そこには不思議なほど自然な空気が流れていた。


 しばらくすると、広間の入口から一人の男が歩み寄ってきた。


 並々ならぬオーラを放つ男。


 二十歳前後の三人とは、

年齢も纏う雰囲気もまるで異なる。


 ポルタスの騎士にして、

“守護神”と称されるクリスチアーノ。


 その姿が近づいても、

      三人の表情に変化はない。


「これは、クリスチアーノ殿。

        お会いできて光栄です」


 アークが自然に挨拶をする。


「こちらこそ。

      聖騎士殿に会えて光栄です」


 クリスチアーノも、

    落ち着いた声で応じた。


 アリアも笑顔で挨拶を交わし、

 セレネも静かに頭を下げる。


 傍から見れば、

     理解しがたい光景だった。


 “守護神”と呼ばれるほどの人物を前にし

て、誰一人として気圧された様子がない。


 だが、クリスチアーノ自身は、

心なしか居心地が良さそうにも見えた。


 それからしばらくして、

また一人、広間に姿を現した。


 先ほどまでの男たちとは違う。


 その男が纏うのは、

    爆炎のようなオーラだった。


 齢五十に迫る武将


 シン帝国の剣聖、シリュウ。


 神々の山の向こうにあるシン帝国。

その名と共に伝わってくる、

   半ば神話のような人物である。


 これまで穏やかだった広間に、

   わずかな変化が生まれた。


 四人が五人になった時。


 そして、

   “守護神”と“爆炎の剣聖”が

           互いを認めた時。


 空間そのものが引き裂かれてしまう

       ような緊張感が広がった。


 クリスチアーノとシリュウ。


 二人は言葉を交わすこともなく、

       ただ互いを見据えている。


 その場にいたアークとセレネでさえ、

        表情を強張らせていた。


「こんにちは」


 そこへ、

  あまりにも日常的な声が響いた。


 空気が固体化したかのような広間に、

柔らかな声が染み込んでいく。


「すみません。

   思っていたよりも遠くて……」


 現れたのは、グレン。


 クリスチアーノが、

   シリュウから視線を外して応じる。


「お待ちしておりました。

     貴公がグレン殿ですね」


「はい。

アステカから来ましたグレンです。

    よろしくお願いします」


 まるで出張先に

挨拶しに来たかのような落ち着きだった。


 グレンは一礼する。


 その後、アリアと目が合った。


 二人は軽く会釈を交わす。


 それは、バイト先で

隣のクラスの子と顔を合わせたような、

    何気ない雰囲気だった。


 先ほどまでの緊張感とは、

まるで異なる世界にいるかのように。


「はじめまして、大魔導師殿。

    私はアークと言います」


 聖騎士アークが歩み寄ってくる。


 これほどの空気の変化にも、

    まるで動じていない。


「いやあ、

  やはり私が一番遅かったですね」


 グレンが照れ笑いを浮かべる。


「いや、グレンくん。

   君は六番目ではないかな」


 アークは眩しいほどの笑顔を向けた。


「そうですか。でも、アトランティスも

      かなり遠いと思うのですが。

一番乗りとは、どうやって

   そんなに早く来られたんですか?」


 グレンは大広間の隅へと視線を向けた。


「驚きましたね。

   あなたは、本当に魔導師ですか」


 問いに応える声と同時に、

   そこに人影が浮かび上がる。


 アトランティスの隠者、

       アルクだった。


 いつからそこにいたのか、

       誰も気づいていなかった。


「お初にお目にかかります。

       アルクと申します」


 アルクは執事のような

    丁寧な所作で一礼した。


「なるほど。気配を隠すことに

    長けていらっしゃるのですね」

     アーク。どことなく

    動揺を隠すように言葉を発した。


「それほど大したものではありません、   が……どうやら、

 私の方が驚かされてしまったようです」


 アルクの口元に、

   わずかな笑みが浮かんだ。


 これで七人が揃った。


        その時


 アークの表情が変わった。


 先ほどまでの柔和な笑顔は消え、

     瞳に鋭い光が宿る。


「グレンくん」


「はい?」


「少し、手合わせをお願いできないかな」


 声は穏やかだった。

しかし、その目は違う。


 そこにいるのは、聖人のような言葉を

紡ぐ美少年ではない、

    一人の武人の姿だった。


「手合わせ、ですか?」


「うん。君のことは聞いている。

アステカの大魔導師。先の戦いでも、

   素晴らしい働きをしたそうだね」


 アークは一歩、前へ出た。


「僕は、君の力を知りたい」


 その言葉に、敵意はなかった。


 ただ純粋に、目の前の相手と

向き合いたいという気持ちがあった。


 グレンは少しだけ考え、

      穏やかに頷いた。


「私でよければ」


 次の瞬間、二人の間に緊張が走った。


 先に動いたのはアーク。


 その踏み込みは、先ほどまでの柔和な

雰囲気からは想像もつかないほど鋭い。


 グレンはその一撃を受け流す。


 金属音が大広間に響いた。


       ズギュィーーン


 アークは止まらない。


 間合いを詰め、剣を返し、

     次の一撃を放つ。


 グレンもまた、

最小限の動きでそれを捌いていく。


 剣と剣が交わるたび、

     衝撃が広間を揺らした。


「……!」


 セレネが息を呑む。


 アークの剣は速い。


 ただ速いだけではない。

正確で、無駄がなく、相手の反応を見極め

ながら次の一手を組み立てている。


 その一方で、

グレンの動きにも隙がない。


 攻撃を受け流し、間合いを外し、時には

一歩踏み込んでアークの剣を押し返す。


 二人の剣戟は、

次第に激しさを増していった。


 周囲の者たちも、もはや口を挟めない。


 聖騎士の名に相応しい剣技。


 そして、

 それを正面から受け止める大魔導師。


 やがて、

  アークの表情に笑みが浮かんだ。


 楽しそうに、嬉しそうに。


 それは、

戦うことそのものを喜ぶ武人の顔だった。


「素晴らしい……!」


 アークの剣が、さらに鋭さを増す。


 グレンもまた、

   応じるように剣を振るった。


 その時、広間の扉が勢いよく開いた。


「そこまでだ!」


 ルージア帝国の親衛隊が

      駆け込んでくる。


 剣を構えた兵たちが、

二人の間に割って入った。


「皇帝陛下の御前となる場所だ! 

    これ以上の狼藉は許さん!」


 アークは剣を引いた。


 グレンもまた、構えを解く。


「失礼しました」


 アークは、先ほどまでの鋭い表情を消

し、いつもの柔らかな笑顔に戻っていた。


「いや、こちらこそ。

   素晴らしい手合わせでした」


 グレンも穏やかに応じる。


 その時、広間の奥から声がした。


「何事かと思えば、ずいぶんと

   賑やかな歓迎になったようだな」


 玉座へ続く扉が開く。


 ルージア帝国皇帝が、

    親衛隊を伴って姿を現した。


 その場にいた者たちが

    一斉に姿勢を正す。


「皆、よく集まってくれた。

     余がルージア帝国皇帝である」


 皇帝は七人を見渡した。


「各国より集う英雄たちよ。

此度は遠路はるばる、よくぞ参られた」


 その言葉に、七人がそれぞれ礼を返す。


 そして、皇帝がさらに

言葉を続けようとした、その時だった。

 空間が異質なものへと変化した。

空気の無い、だが苦しみはない空間。


『世界に散りし七つの星よ』


 声が響いた。

音の無い空間に、唯一聴こえるもの。


 広間にいた全員が、動きを止める。


『力を合わせ、闇を払うがよい』


 それは、ディウス神聖国の大聖堂で

響いたものと同じ声だった。


        神託


 七人の英雄が集まった、この場所に

再び神の言葉が齎(もたら)さられたのだ。


 声が消える。


 直後、七人の身体を、

言葉では説明できない感覚が駆け抜けた。


 内側から何かが満ちていく。


 これまで積み重ねてきたものが、

さらに深く、強くなるような感覚。


 七人は、それぞれに自分の中で

起きた変化を感じ取っていた。


 だが、誰もそれを口にしなかった。


 ただ、互いの顔を見つめる。


 神託は、彼らを認めた。


 そして、七人の力に何かを齎(もたら)した。


 神託と伝承。

彼らが世界を救う鍵となることを

議論する必要はなくなった。






      第十一話 了



この世界観とそぐわない表現ですが、

異世界に相応しい表現よりも分かりやすい

ほうが良いかなって。どうでした?

バグりますか?

書き換えたほうが良いのかなあ

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