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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第一章 『辺境農民、騎士になる』

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第一話後編 『辺境騎士、魔力を測られる』

 グレンが魔力測定する話です。

周りを取り巻く環境だとか、

これからどんな人と関わっていくかとか、

そういうところも少しずつお話しします。

 騎士になって、

       最初の給金を受け取った。


 グレンは、

     革袋の中身を何度も確かめた。


「……これだけあれば」


 家族全員が、少しは楽になる。


 祖母の薬も買える。

 母に

 新しい農具を買ってやることもできる。

 妹にも、何か買ってやれる。

 弟たちには、


「……いや」

     グレンは首を振った。


 自分のことを考えるのは後でいい。


 必要最低限だけを手元に残し、

     そのほとんどを故郷へ送った。


 それから数日。


 グレンは、いつも通り訓練場にいた。


「相変わらず真面目だな、お前」


 声をかけてきたのは、カイルだった。


「騎士になった以上、当然です」


「その顔で言われると、

      嫌味に聞こえるんだよなぁ」


「なぜです?」


「自覚がないところまで含めて

      化け物なんだよ」


 カイルは笑いながら木剣を構えた。


「ほら。今日も一本やるか?」


「お願いします」


 グレンも木剣を構える。


 そして、


「……参りました」


       数分後。


 グレンは地面に膝をついていた。


 カイルは息ひとつ乱していない。


「三か月前よりはマシになった」


「ありがとうございます」


「だが、まだ俺には勝てんな」


「はい」

     グレンは悔しそうに頷いた。


「……普通なら、ここで腐るんだけどな」

     カイルは木剣を肩に担ぐ。

「お前、負けても楽しそうだよな」


「楽しくはありません」


「そうか?」


「悔しいです」


「なら、なんでそんな顔してる?」


「次は勝てるかもしれないと思うと、

             楽しみです」


「……そういうところだよ」

     カイルは苦笑した。


 その様子を、

少し離れた場所から見ている少年がいた。


 金髪。

 仕立ての良い訓練服。

 胸元には貴族の家紋を示す徽章(きしょう)。

 年齢はグレンと同じくらい。


 その後ろには、

       一人の少女が控えていた。

 質素なメイド服。

 小柄な身体。

 農村から出稼ぎに来た少女だった。


 その少年、アルベルト・レイグランは、

二人のやり取りを見つめていた。


「……また、あの平民か」


「はい」

     メイドの少女が小さく答える。


「何が気に入らない?」


「いえ……」


 アルベルトは鼻を鳴らした。

 自分も剣術には覚えがある。

 貴族として

  恥ずかしくない程度には鍛えている。


 だが、カイルに

稽古をつけてもらったことは一度もない。


 頼んでも、


「お前にはお前の師匠がいるだろ」

     そう言われるだけだった。


 それなのに。

 農民上がりの新人騎士には、

   カイルのほうから声をかけている。


「……気に入らない」

     アルベルトは呟いた。


「でも、あの人……

      毎日ずっと訓練しています」

     少女が言った。


「何?」


「朝も早くから来て、

        最後まで残っています」


「だから何だ」


「……いえ」

     少女は口を閉じた。


     アルベルトは少女を睨む。

「余計なことを言うな、まったく

  どいつもこいつも、なんなんだよ!」


「はい……申し訳ありません」

     少女は俯(うつむ)いた。

 しかし、もう一度だけグレンを見る。


 木剣を握る手。

 泥のついた服。

 何度倒されても立ち上がる姿。


 少女には、それがとても眩しく見えた。


          ◆


 翌日。


 グレンが訓練を終えたところで、

      アルベルトが近づいてきた。


「おい」


「なにか?」


「お前、魔法は使えるのか?」


 突然の質問だった。


     グレンは、少し考えて

「知りたいですか?」


「聞かれたら答えろ」

     苛立ちが滲み出ている。


「貴方はバカですか?」


「無礼だぞ農民!」


「聞かれたら答えるのでは?」


「くっ!」

     

「黙れ!

俺は王立魔導学院では、上位の成績だ。

 剣術も貴族の嗜みとして一通りできる」


「凄いですね、ですが……

  人に物を聞く態度がなっていません」


「農民風情が生意気を言うな!」


「たしかに、私は農民ですが」

     グレンは正対し応えた。

「王国騎士です。王国の剣を愚弄するのが

貴族の嗜みだと?」


「………」

     アルベルトは絶句した。


「良いですか、おぼっちゃま…

どこの名家のご子息かは存じませんが」

     グレンは静かに話した。

「人に訊ねる時は、

  まずは自ら名乗るのが筋というもの」

 

 アルベルトは、ワナワナと震えながら


「よく聞け農民!

俺はアルベルト・レイグラン

      レイグラン子爵家の次男だ」


 グレンは、一礼した


「これは子爵家のご子息でしたか、

先程の話ですが、私は魔法を使えません」


「ふっ、ふふっ……やっぱりな」

     アルベルトの口元が歪む。


「農民には魔法なんて縁がないか」


 背後の少女が、わずかに顔を上げた。


「ですが、」

     グレンは続けた。


「魔力が無いわけではないと思います」


「……何?」


「誰にでも魔力はあると聞いています」


「だったら使ってみろよ」


「使えません」


「ははっ!」

     アルベルトは笑った。

「そうだろうな!」


 その声に、周囲の騎士たちが振り返る。


「なら、

  魔力測定でも受けてみたらどうだ?」


「魔力測定?」


「ああ。王立魔導学院には測定器がある」


 アルベルトは

      意地の悪い笑みを浮かべた。


「せっかくだ。

  自分に魔法の才能がないことを、

        数字で確認してこいよ」


     グレンは少し考えた。


「……分かりました」


「え?」


「受けてみましょう」


 アルベルトの笑みが一瞬止まった。


「本気か?」


「はい」


「……後悔するなよ」


 そう言い残し、

      アルベルトは去っていった。


 その後ろを、少女が追いかける。

 少女は一度だけ振り返った。


 グレンと目が合った。

 慌てて頭を下げる。


「……?」

     グレンは首を傾げた。


         ◆


 翌日。


 グレンは王立魔導学院を訪れていた。


 案内された測定室には、

      大きな水晶が置かれていた。


「こちらが魔力測定器です」


 声をかけてきたのは、若い女性だった。

 王立魔導学院の職員らしい。


 長い髪を後ろでまとめ、

 白い魔導師用の衣服を身につけている。


「私は測定担当のリリアです」


「グレン・テミストクレスです。

        よろしくお願いします」


「こちらこそ」

     リリアは微笑んだ。


「では、

   右手をこの水晶に置いてください」


「はい」


 グレンが手を置く。


「力を抜いてくださいね」


「分かりました」


 リリアが魔力測定用の術式を起動する。


 水晶が淡く光った。


「……」


 リリアは測定器を確認する。


 数値が上がっていく。


「……あれ?」


 彼女は首を傾げた。


「どうしました?」


「いえ……少し反応が強いような」


 リリアは術式を止めた。


「念のため、もう一度測ります」


「はい」


 二度目。


 同じ結果が出た。


「……」

     リリアの笑顔が消えた。


「すみません。もう一度だけ」


「どうぞ」


 三度目。

     結果は変わらない。


「これは……」


 リリアは

    測定器を見つめたまま固まった。


「何か問題がありますか?」


「問題……というより」


 彼女は困惑した顔でグレンを見る。


「あなた、

   魔法を使った経験はありますか?」


「ありません」


「初級魔法も?」


「使えません」


「一度も?」


「はい」


「魔法理論を学んだことは?」


「ありません」


 リリアは絶句した。


「……なのに」

     測定結果をもう一度確認する。

「魔力総量だけなら……」

     小さく息を呑んだ。

「大魔導師級……?」


「大魔導師?」


「いえ、こちらの話です!」

     リリアは慌てて口を押さえた。


 そして、

 測定器を抱えるようにして立ち上がる。


「少々お待ちください!」


「はい」


 リリアは部屋を飛び出していった。


 しばらくすると、

        廊下が騒がしくなった。


「学院長に報告を!」


「この数値をですか?」


「そうです!」


 グレンは首を傾げた。


 その時だった。


「ほう」


 廊下から、小さな足音が聞こえてきた。


         ◆


 現れたのは、一人の少女だった。


 グレンは、目の前に立つ少女を見た。


 長い金髪。

 碧い瞳。

 そして、頭の両側から伸びる尖った耳。

 おそらくエルフだ。


 外見は、自分より年下にしか見えない。


 それなのに、


「おぬしがグレンか?」


「……はい」


「ワシが王立魔導学院の学院長じゃ」


「…………」

     グレンは固まった。


 どう考えても、学院長には見えない。


「……子供が?」


「失礼な」


 即座に返ってきた。


 グレンはエルフ少女の顔を見る。


 もう一度、

    頭のてっぺんから足元まで見る。


 そして、

     すっと目線を下げた。


「たしかに、ご立派です」


「どこを見て言っておるのじゃ!」


「え?」


「え? ではない!」


 エルフ少女の顔が真っ赤になる。


 その様子を見ていた学院の職員は、

          慌てて顔を背けた。

 笑ってはいけない。

 学院長相手に笑ってはいけない。

 そう思っているのだろう。

 しかし、肩が震えている。


「……グレン」


「はい」


「おぬし、

    なかなか良い性格をしておるの」


「はい、ありがとうございます」


「褒めておらんわ!」


 学院長室に、エルフ少女の声が響いた。

金色の長い髪が揺れる

 不満そうに頬を膨らませて言う。


「失礼な奴じゃのう」


「申し訳ありません!」


「まあよい」


 エルフはグレンを見上げた。


「おぬしがグレン・テミストクレスか?」


「はい」


「そうか」


 彼女の視線が測定器へ移る。


「……ふむ」


 数字を見る。


 そして。


「ほう……」


 碧眼が輝いた。


「これは面白い」


 リリアが慌てて説明する。


「学院長、この数値ですが――」


「分かっておる」


 エルフは

    測定器を覗き込みながら言った。


「この少年、魔法を一度も

     使ったことがないのじゃな?」


「はい」


「魔法教育も?」


「受けていません」


「なるほど……」


 エルフの顔が、

       子供のように輝いていく。


「それで、この魔力か」


 グレンには

    何が起きているのか分からない。


「失礼ですが……あなたは?」


 尋ねると、

     エルフは少しだけ胸を張った。


「ワシか?」


「はい」


「エレノア・アルヴェリスじゃ」


 その名を聞いた瞬間、

        リリアが姿勢を正した。


「王立魔導学院、学院長」


 そして、もう一つの名を口にする。


「『白金の魔女』です」


 グレンは目を見開いた。


 魔法に詳しくない彼でも、

   その名だけは聞いたことがあった。


「白金の魔女……」


「ほう。おぬしでも知っておるか」


 エレノアは満足そうに笑った。


「ならば話が早い」


 彼女はグレンの前に立つ。


「グレンよ」


「はい」


「魔法を学んでみる気はあるか?」


 グレンは少し迷った。


「私は騎士です」


「知っておる」


「家族を養うために騎士になりました」


「うむ」


「ですから、

   騎士を辞めるつもりはありません」


「誰が辞めろと言った?」


「……え?」


 エレノアは楽しそうに笑った。


「おぬしが騎士を続けたまま、

     魔法を学べばよい」


「そんなことが……?」


「できる」


 即答だった。


「ワシが教えてやろう」


 グレンは言葉を失った。


 エレノアは、そんなグレンを見て

        楽しそうに目を細めた。


「なにせ、」


 そして、測定器を見る。


「こんな面白い素材を見つけて、

    放っておけるほど

      ワシは大人しくないからの」


「素材……?」


「気にするな」

     エレノアは笑った。


 その時。


 測定室の外。


 アルベルトが、

     扉の隙間から中を覗いていた。


「……大魔導師級?」


 聞き間違いではない。


 確かに聞こえた。


 農民の少年。


 魔法を使ったことすらない少年。


 それが、


「……そんな、馬鹿な」

     アルベルトは拳を握った。


 一方。


 その後ろにいたメイドの少女は、

   驚いた顔でグレンを見つめていた。


 そして、小さく笑った。


「……やっぱり」


「何だ」


「いえ……」


     少女は胸の前で手を握る。

「すごい人なんだなって」


「黙れ」


「……はい」


 少女は俯いた。


 それでも、

   その顔から笑みは消えなかった。


         ◆


 この日。


 グレン・テミストクレスは、

自分が持つ魔力の異常な大きさを知った。


 そして同時に。

   自分を快く思わない者と。

   自分に憧れを抱く者と。

   後に人生を大きく変える師と。

       出会った。


 だが、グレン自身はまだ何も知らない。


 ただ一つ。


 今まで

剣しか見ていなかった少年の前に

   新しい道が開かれようとしていた。




      第一話 了



 アルベルト。というキャラが登場。

グレンとの関わり方を決めて、話を進めて

なんか違うなあと、思って少しずつ

変えていったところがあります。

グレンとの掛け合いです。

当初は、グレンが大人しくアルベルトの

話を聞くタイプで描いてたのですが、

ちょっと違うなあ、なんか違うなあ。

と、思いました。

謙虚さと誇りを両立した感じにしよう。

と、そういう変更をしています。


◆◆◆キャラ紹介コーナー◆◆◆


⭐️王立魔導学院長


正式名:エレノア・アルヴェリス

二つ名:白金の魔女

公的呼称:学院長/学院長先生

親しい者だけが呼ぶ愛称:ノア


金髪ロリ巨乳。口調は老けてる。

* エルフ

* 実年齢:200歳以上

* 外見年齢:13〜14歳程度

* 金髪ロング

* 碧眼

* エルフ耳

* 小柄

* 豊かな胸

* 王立魔導学院長

* 「白金の魔女」の異名

* 中身は200年以上魔導を研究してきた

 探究者

* 性格は知的・飄々・好奇心旺盛

* 魔法の話になると

 子供のように目を輝かせる

* グレンの才能に興味を持つ

* 最終的にはグレンを誰よりも誇りに思う

 師匠

ここだけの話、cv.のイメージはあります。

書いている時は脳内再生してます。

発表したい!けど、ダメですよねー(泣




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