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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第一章 『辺境農民、騎士になる』

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第一話前編 『辺境農民の俺、騎士になる』

 グレンのことを書いてみよう

と思って、書いてみたものの

なかなか上手くいかなくて、再構成してみた


 辺境農民の、

体が丈夫なことだけが取り柄の

そんな少年が

どんな成長を遂げるのか?

ご期待ください

 朝日が昇るより早く、

      その少年は畑に立っていた。


「よし!」

  

 作業は一区切りを終え、

    満足そうに微笑み額の汗を拭う。


    グレン・テミストクレス


 まだ十五歳の少年だというのに、

    その身体つきは同年代の者より

      一回り大きい。

 いや、大きく見える。

というほうが正しいのだろう。

均整のとれた体格と溢れ出る活力が、

        存在感がそう思わせる。


 日に焼けた肌。

 鍛えられた腕。

 農作業で自然と身についた足腰。


 グレン自身にとって、

    それは自然な事でしかなかった。


 朝は、誰よりも早く起き、畑へ出る。

   土を耕し、種をまき、水をやる。

 収穫の時期になれば、

        家族総出で作業する。


 それが、

グレンにとって当たり前の暮らしだった。


「兄ちゃん!」

    背後から声がした。


 振り返る。


 そこには七歳の双子の弟が二人、

      泥だらけの顔で立っていた。


「終わった?」


「ああ。お前たちは?」


「俺たちも手伝った!」


「……ほとんど遊んでただろ」


「ち、違う!」


「ちゃんと石を拾った!」


「そうか」


 グレンは笑って、弟たちの頭を撫でた。


「じゃあ、家へ戻ろう」


「うん!」


 二人が駆けていく。


 その後ろ姿を見ながら、

        グレンは空を見上げた。


 気持ちの良い、晴天だ。


 太陽神の加護を信じるアステカの民。

彼らにとって、朝の太陽は特別なものだ。


 南の大陸。


 豊かな大地と強い日差しに恵まれた

  農耕の国、アステカ。


 都では穏やかな王が国を治め、

          民を慈しんでいる。


 だが、都から遠く離れた辺境では、

      事情が違った。


 領主同士の小競り合い。

 土地や水を巡る争い。


 その都度、召し出される農民たち。


 グレンの祖父も。


 父も。


 かつては畑を耕す一人の農民だった。


 しかし、戦になれば領主の私兵として

     戦場へ送られた。


 祖父は帰ってこなかった。

 父も、グレンが幼い頃に戦死した。

 七歳の弟たちは父の顔を知らない。


 家へ戻ると、

    母が朝食の支度をしていた。


「おかえり、グレン」


「ただいま、母さん」


「今日も早起きね」


「弟たちが手伝ってくれたよ」


「まあ」


 母が双子を見る。


「どんなお手伝いをしたの?」


「……石を三つ拾った」

     声が揃う。


     母が吹き出した。

「それは偉いわね」


「へへー」


 得意げな弟たち。


 その横で、妹が呆れた顔をしていた。


「兄さん、甘やかしすぎ」


「そうか?」


「そうよ」


 聡明な少女だ。


 妹は二つ下の十三歳。

母の手伝いをしながら家のことを覚え、

         農作業もよくこなす。


      自慢の妹だ。


「兄さん」


「なんだい?」


「今日、町へ行くのでしょう?」


「ああ」


「例の話?」


「……うん」


 妹の表情が少し曇った。

 母も手を止める。


「もう決めたの?」


「ああ……決めたよ」

     グレンは静かに答えた。


「俺、騎士になる」


 部屋に沈黙が落ちた。

      やがて祖母が口を開く。


「お前の父親も……そうだったねえ」


「いや、そうじゃない」

     グレンは首を振った。


「父さんは領主様に召し出された」


「……」


「俺は、自分で選ぶ」


 祖父も父も、

  戦うことを望んでいたわけではない。


 ただ、

  領主に命じられたから戦場へ行った。


 農民として生き、

    家族を養い、

       畑を守っていた。


 それでも戦が起きれば、

       剣を持たされた。


「都には騎士がいる」

     グレンは言った。


「王家に仕えて、国を守っている」


「ええ」


「だけど、こんな辺境には……

俺たちの村には守ってくれる人が少ない」


 グレンは家族を見回した。


「領主同士が争えば、

   最初に巻き込まれるのは俺たちだ」


 母が黙って聞いている。


「父さんみたいな人が、

 これ以上死ななくて済むようにしたい」


 それが、グレンの答えだった。

 正義感だけではない。

 家族を養うためでもある。


 正規の騎士になれば、

   農作業だけでは得られない

       安定した報酬がある。


 母や祖母。 妹。

    そしてまだ幼い弟たち。


 家族を守るためには、

     それが一番現実的だと思った。


「十五になったら成人だ」

     グレンは言った。


「だから俺は、俺にできることをする」


 母がしばらく息子を見つめる。

      そして、静かに笑った。


「お父さんにそっくり」


「そうかな」


「ええ。でも」

     母は少しだけ

          寂しそうに笑った。


「お父さんより、ずっと頑固」


 妹が笑う。 弟たちも笑う。


 グレンも笑った。


「行ってきます」


「気をつけてね」


「ああ」


 家を出て振り返る。


 小さな家、そして畑。 家族。


 グレンは胸の奥に刻み込むように、

         その景色を見つめた。


 必ず帰ってくる。


 そう心に決めて、町へ向かった。


         ◆


 町の外れには、

  アステカ国軍の騎士団施設があった。


「騎士になりたい?」


 受付の男が、

      グレンを上から下まで見る。


「はい」


「十五か」


「はい」


「農民だな?」


「はい」


 グレンは、真っ直ぐに応える。


 受付の男は少し困ったように笑った。


「騎士ってのはな、

 剣を振れればなれるものじゃないぞ」


「承知しています」


「厳しいぞ」


「承知しています」


「死ぬかもしれん」


「それも承知しています」


 迷いのない返事だった。


 男は少しだけ目を細めた。


「……そうか。見習い騎士、採用だ。」


「ありがとうございます!」


 こうして辺境農民、

   グレン・テミストクレスは、

         騎士見習いになった。



 訓練初日。


「構えろ!」

     教官の怒声が飛ぶ。


 グレンは木剣を構えた。


「前へ!」


 踏み込む。 振る。


「遅いっ!もう一度!」


 振る。


 また振る。


 何度も。


 何度も。


 手の皮が剥けても。 足が震えても。


 グレンは木剣を置かなかった。


「休め!」


 周囲の見習い騎士たちが座り込む。

 グレンも息を切らしていた。


 だが、すぐに立ち上がる。


「教官」


「なんだ」


「もう一度、お願いします」


「……まだやるのか?」


「はい」


 教官は呆れた顔をした。


「お前、今日が初日だぞ」


「承知しています」


 その日から、グレンは毎日鍛えた。

 農作業で培った体力。そして、

     家族を守るという明確な目的。


 その為に、ひたすら剣を振った。


 一日。


 一週間。


 一か月。


 通常、一年かかる見習い期間。


 だが、入団から三ヶ月。


「グレン・テミストクレス!」


「はい!」


「前へ!」


 教官の前で、グレンは

   一人の正規騎士と向き合っていた。


「勝負は一本」


「はい!」


「始め!」


 木剣がぶつかる。

       カァン!


 グレンは踏み込んだ。 速い。


 だが、


「甘い!」


 弾かれる。


 グレンは転がった。


「立て!」


「はい!」

     言うや否や立つ。


 また向かう。


 また弾かれる。


 それでも、目は死んでいない。


「そこまで!」

     教官が制止する。


 グレンは息を切らしながら頭を下げた。


「ありがとうございました!」


「まだまだだな」

     正規騎士が苦笑する。


「はい」


「だが……」

     騎士は教官を見る。


「こいつ、本当に三ヶ月ですか?」


 教官は腕を組んだ。


「ああ」


「……バケモノですよ」


「失礼な奴め」


「いや、俺は褒めてるんですよ」

     騎士は笑った。


「おい新入り、名を教えろ。

   俺はカイル・ベルナール。

  騎士団ではそれなりに名が通ってる」


「グレン…

  グレン・テミストクレスと言います。

よろしくお願いします、ベルナール騎士」


「おう」

     カイルは背を向け、歩き出す。


 そして、ふと足を止めた。


「……そのうち、

    俺の名前なんか忘れるくらい

        強くなるかもしれんな」


 グレンは聞いていなかった。

 ただ木剣を見つめている。


 まだ届かない。


 だが――

      いつか届く。


 そう信じていた。


「グレン」

     教官が呼ぶ。


「お前を正規騎士として認める」


「……!」

     グレンが顔を上げた。


「本日付で騎士団への正式配属とする」


「ありがとうございます!」


 深々と頭を下げる。


 十五歳。

辺境の農民だった少年は、騎士になった。


 家族を守るために。


 そして、

まだ本人も知らない。

 この日が、

世界を救う英雄の始まりになることを。



後編につづく



 グレンの育った環境、価値観。

そういうところを描いてます。

前編後編でやるほうが、なんかしっくりくる

という勘でブラッシュアップしました



◆◆◆設定紹介コーナー◆◆◆


アステカ

(南の大陸)

近年まで中央や東から認知されていなかった。独自の文明をもつ、太陽信仰の国。現王は慈悲深く、国民を愛する。



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