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辺境農民の俺、騎士になったら世界を救うことになりました  作者: ニャンコ
第三章 『テルス』

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19/24

第十話前編 『世界同時多発事変』

第九話はいかがでした?

新章で雰囲気変わった?とか、思ってます?

変な違和感でなければ良いなって、

そういう思いでおります。さて、第十話。

世界です。様々な動き。

これからのグレンは………

 異変は、

七大国の辺境でほぼ同時に起きた。


 魔族の将が率いる魔物の軍勢。

彼らは人間の国境を越え、

王都を目指して進軍を始めた。


 各国はすぐさま軍を動かした。

敵の規模は決して小さくない。だが、

国軍が適切に対処すれば

      撃退できる範囲だった。

 少なくとも、

各国の元首たちはそう判断した。

 誰も望んでいなかったこの戦いは、

誰もが戦いの前に進めていた計画に

大きな支障をきたすことになる。



      ルージア帝国


「西方への派兵を延期せよ、だと?」


 皇帝の声が執務室に響いた。


 机上には、

辺境から届けられた戦況報告と、

別の軍事計画に関する書類が並んでいた。


「はい。現在の兵力を維持したまま

西方へ軍を進めれば、

     北部の防衛に支障が出ます」


 宰相は慎重に言葉を選んだ。


「北部の敵は、我が軍で十分に対処できる

と報告にあったはずだ」


「通常の魔物であれば、その通りです。

しかし、

 今回は魔族が軍勢を率いております。

敵の指揮系統が明確である以上、

単なる魔物の暴走とは考えられません」


「だからこそ、早期に叩くのだ。敵を放置

すれば、被害は広がるではないか」


「ですが、その為に兵力を集中させれば、

西方への備えが薄くなってしまいます」


 皇帝は宰相を睨んだ。


 西方への進出は、以前から準備を進めて

きた計画だった。周辺国が動く前に影響力

を広げ、帝国の優位を確立する。今回の派

兵は、その第一歩となるはずだった。

 それが、辺境に現れた魔物の軍勢によっ

て止められようとしている。


「……他国の動きはどうなっている?」


「各国とも、同様に

辺境での戦闘に対応している模様です」


「ならば、なおさら好機ではないか。

周辺国が動けぬ今こそ、

      我が国が先んじるべきだ」


「陛下」


 宰相の声がわずかに強くなった。


「そのような賭けに出るべきではありませ

ん。此度の防衛戦での消耗が確認出来てか

らでなくば、帝国存亡の危機を迎えるやも

しれません」


 皇帝は黙った。


 敵は目の前にいる魔物だけではない。

国境の向こうには、

帝国の動向を見張る国々がある。

 その事実は、

皇帝自身が誰よりもよく理解していた。


「……忌々しい」


 皇帝は報告書を握りつぶしそうになり、

寸前で手を止めた。


「まずは辺境の敵を排除せよ。

   西方への計画は凍結する。

だが、戦いが終わり次第、

  直ちに再開できるよう準備を怠るな」


「賢明なご判断と存じます」


 宰相が一礼する。


 皇帝は窓の外へ目を向けた。

戦争を終わらせる為に兵を動かす。

そんな当たり前の判断にさえ、

別の国の思惑を考えなければならない。

 それこそが、

大国を治めるということだった。



       シン帝国


「ルージアは

西方への派兵を延期した、とのことです」


 宰相の報告に、皇帝は口元を緩めた。


「ハッ。あれほど急いでいた計画を、

止めざるを得なくなったとはのう」


「はい。北部の戦況が落ち着かなければ、

再開は難しいでしょう」


「ならば、こちらにも好都合だ」


 皇帝は卓上の地図を指でなぞった。


 シン帝国は、他国の動きを見てから動く

ことを好む。相手が何を望み、何を恐れ、

どこに兵を割くのか。それを見極めたうえ

で、自国に最も利益のある手を選ぶ。


 正面から争う必要がなければ、

      それで良し。

 相手が勝手に消耗してくれるのならば、

      それに越したことはない。


「ルージアが西方に手を伸ばせなくなった

今、周辺国はどう動く?」


「現時点では、

どの国も自国の防衛を優先しております。

こちらに働きかけてくる余裕はないかと」


「それは好都合だな」

     皇帝は満足そうに頷いた。


「では、国境の部隊を少し動かせ。

ルージアとの境界ではなく、南方だ」


 宰相が顔を上げた。


「南方、でございますか?」


「そうだ。あちらの国境に小規模な部隊を

展開させる。演習という名目で構わん」


「しかし、今それを行えば、

    隣国は警戒するでしょう。

魔物の軍勢への対応に加え、我が国の動き

まで気にせねばならなくなります」


「好機」

     皇帝は地図から指を離した。


「敵が迫っている時に、別の国境まで気にしていられまい。兵を割けば魔物への対応

が遅れる。無視すれば、こちらが何をする

か分からない。どちらを選んでも、あちら

は余計な負担を抱えることになる」


 宰相は黙って聞いていた。


「もちろん、

今すぐ侵攻するわけではない。

相手がどれほど反応するかを見るだけだ」


「……承知いたしました」


「それと、ルージアの西方派兵延期。

周辺国へ情報を流しておけ」


「公式発表を待たずに、

    でございますか?」


「真偽など瑣末なこと。周辺国がルージア

の弱みを意識すれば、それだけであの国は

動きづらくなる」


 皇帝は椅子に深く腰掛けた。


 他国が魔物と戦っている間にも、

国同士の駆け引きは続いている。

 いや、こういう時だからこそ、

   駆け引きの価値は増す。


「戦いが終わる頃には、周囲の勢力図も

変わっているだろう。

こちらが何もせずとも、

他国が勝手に動いてくれるのだからな」


 皇帝は笑みを浮かべた。


 だが、その笑みは長く続かなかった。


「陛下。追加の報告がございます」


「何だ?」


「南方の魔物の軍勢ですが、

当初の予測よりも数が多いとのことです。

国境の部隊だけでは、

対応に時間がかかる可能性がございます」


 皇帝の表情から笑みが消えた。


「……こちらの軍を動かす必要があるか」


「現地の指揮官は、

     増援を求めております」


「分かった。必要な兵力を算出させろ。

ただし、他国との境界に展開する部隊は

維持するのだ」


「よろしいのですか? その分、

魔物への対応が遅れる恐れがございます」


「隙を見せるなと言うことだ」


 皇帝は冷ややかに告げた。


 他国の隙を突くことと、

 自国の隙を晒さないこと。


 その両方ができなければ、

   シン帝国の立場は保てない。


 だが、今回はその計算を狂わせるほど、敵の動きが広範囲に及んでいた。


 皇帝は地図を睨みつけた。


 他国を出し抜くために使うはずだった

余力が、少しずつ失われていく。


 それでも、

彼はまだ諦めてはいなかった。


 この混乱の中にこそ、

他国が見落とす機会があるはずだった。


      パニアス王国


「南部の街道が使えなくなった、と?」


 パニアス王は、

報告書を手にしたまま宰相へ問い返した。


「はい。魔物の群れが街道沿いに広がり、

周辺の村々にも被害が出ております。

軍の輸送経路を変更せざるを得ません」


「兵站の輸送は?」


「一部に遅れが出ております。現時点では

備蓄で対応できますが、戦闘が長引けば、

前線への補給に影響が出るでしょう」


 王は報告書を机に置いた。


 敵を撃退するだけなら、

軍の力で何とかなるかもしれない。


 だが、兵を戦場へ送り続けるには食料が

要る。負傷者を運ぶ道も必要だ。戦場とな

った村々の生活を立て直すことも考えなけ

ればならない。


 戦いの勝敗だけを見ていては、

     国は保たない。


「街道の復旧を急がせよ。

軍の補給を優先しつつ、

周辺の住民にも食料を届けるのだ」


「その場合、前線への物資が不足する恐れ

がございます」


「前線だけを満たして、

後方の民を飢えさせるつもりか?」


 王の声に、宰相は口を閉じた。


「軍には、可能な限り現地での調達を避け

るよう伝えよ。民の食料を奪って戦うので

は、守るべきものが逆転してしまう」


「承知いたしました」


 宰相は一礼したが、

すぐに次の問題を告げた。


「陛下。軍の再編に伴い、予定していた

隣国との会談にも影響が出ております」


 王の目が細くなった。


 その会談は、単なる外交儀礼ではない。

周辺国との関係を安定させ、

今後の交易や文化交流を

さらに発展させるためのものだった。


 王自身、

実りある会談になることを期待していた。


「先方には事情を説明し、

     延期を願い出よ」


「すでに使者を送っております。しかし、

先方も辺境での戦闘に対応しているため、

日程の再調整は難航するかと」


「……そうか」

     王は窓の外へ目を向けた。


 国同士の関係は、積み重ねるには

長い時間がかかる。だが、

一度の行き違いで崩れることもある。


 それでも、今は自国の民と兵を

守らなければならなかった。


「会談は必ず改めて行う。

こちらの事情だけを押しつけるのでは

なく、先方の状況も考慮して調整せよ」


「かしこまりました」


 王は頷いた。


 戦いが終われば、復旧が始まる。そこで

もまた、国の力が試されることになる。

 今は、その時まで国を保たなければ

ならなかった。


     ポルタス王国


「敵を追撃する必要はない。

防衛線を維持し、住民の避難を優先せよ」


 王は、

地図を前にした将軍たちへ命じた。


「しかし陛下、敵をここで叩けば、今後の

被害を減らせる可能性がございます」


「追撃によってこちらの兵が大きな損害を

受ければ、別の場所で防衛線を維持できな

くなる。敵を倒すことだけが、国を守るこ

とではない」


 王の言葉に、

将軍たちは互いの顔を見合わせた。


 ポルタスは平和を重んじる国だ。

だからといって、

軍事力を軽んじているわけではない。

 戦うべき時には戦う。ただし、

必要以上の戦いを求めない。


「敵の進軍を止める。そのために必要な

兵力は惜しまぬ。だが、敵が退いた後まで

追い続ける必要はない」


「承知いたしました」


 将軍たちが退出すると、

   宰相が一歩進み出た。


「陛下。今後の防衛を考えますと、周辺国

との連携も検討すべきかと存じます」


「他国との連携か……」


「はい。今回の異変は、

複数の国で同時に起きております。

各国がそれぞれ対処している現状では、

情報の共有にも限界がございます」


 王はしばらく考え込んだ。


「こちらから協力を求めれば、

    相手も応じるだろうか」


「国によります。

自国の防衛を優先する国もあれば、

この混乱を利用しようとする国も

            あるでしょう」


 宰相は慎重に答えた。


 王は小さく息を吐いた。


「それでも、話をする価値はある。国境を

守るために必要なのは兵だけではない。

互いの状況を知り、

無用な疑念を減らすことも大切だ」


「では、各国へ使者を?」


「今はまだ早い。

まずは戦況を見極めよう。

こちらから協力を求めるにしても、

相手が何を必要としているかを

        知らねばならない」


 王は地図を見つめた。

 平和を守るために、戦わねばならない。

 その矛盾を抱えながら、

    王は次の報告を待った。


     ブリタニア王国


「予定していた会議は中止。

派遣するはずだった使節団も、

いったん待機させなさい」


 女王は、宰相の報告を聞きながら

次々と指示を出していた。


「しかし陛下、あの会議は

周辺国との関係を整理する重要な機会で

ございます。延期すれば、こちらの主導権

が弱まる恐れがございます」


「分かっています」


 女王は即座に答えた。


「だからこそ、ただ中止するのではなく、

こちらの事情を説明したうえで、

改めて日程を提示するのです。主導権を

失わないために、相手を無視してよいと

いうことにはなりません」


 宰相は一瞬、言葉を失った。


 女王は誇り高く、国の威信を重んじる。

自国が他国に後れを取ることを嫌い、

外交においても主導権を握ろうとする。


 だが、

無謀な判断をするわけではなかった。

 必要とあれば、

予定を捨てることもできる。


「それから、

辺境の戦況を詳しく調べなさい。

敵の数、指揮官の能力、こちらの損害。

全てです」


「軍からの報告は届いておりますが、

まだ全体像は把握できておりません」


「ならば、

把握できるまで情報を集めなさい。

敵の正体も分からないまま、勝った負けた

と騒いでも意味がありません」


 女王は机上の地図を指で叩いた。


「これだけ広い範囲で、ほぼ同時に魔物が

出現したのです。

偶然であると考える方が不自然でしょう」


「何者かが、各国を狙っていると?」


「そこまでは断言できません。ただ、

何者かの意図があるのなら、こちらが

気づく前に次の手を打ってくる

          可能性もあります」


 女王は宰相を見た。


「他国が何を考えているかも調べなさい。

戦いの最中に、こちらの動きを利用しよう

とする国が現れるかもしれません」


「……シン帝国も、でございますか」


「どの国であろうと例外ではありません」


 女王は言い切った。


 魔物の軍勢だけでも厄介だというのに、

他国の思惑まで考えなければならない。


 だが、

国を守るとはそういうことだった。


 女王は窓の向こうに目を向けた。


「敵が誰であれ、我が国の判断を

他者に委ねるつもりはありません」


 その声には、強い誇りがあった。


 そして、

     アトランティス王国


「各地の戦況を、

     もう一度整理して報告せよ」


 王は、並んだ将校たちへ告げた。


「敵は複数の辺境から進軍しております。

こちらの防衛線を探るような動きも

確認されております」


「探る、か」


 王は報告書を手に取った。


「敵が王都を目指しているのは確かです。

しかし、すべての部隊が同じように進んで

いるわけではありません。こちらの兵力配

置を確かめるような動きが見られます」


「単なる偶然か。それとも、

こちらの防衛を調べているのか」


「現段階では判断できません」


 王はしばらく黙っていた。


 戦場では、

敵の意図を読み違えれば大きな損害に

つながる。目の前の軍勢を撃退するだけ

では不十分かもしれない。


「各部隊には、敵の動きを記録させよ。

戦闘の結果だけでなく、

進軍経路や部隊の動きも報告するように」


「承知いたしました」


 将校たちが退出した後、

      宰相が口を開いた。


「陛下。今回の異変が各国で同時に起きた

以上、国同士で情報を共有する必要が

あるかと存じます」


「各国は応じるだろうか」


「分かりません。自国の情報を他国に渡す

ことを嫌う国もございます。

特に、軍事上の弱点が

明らかになることを恐れるでしょう」


「それでも、

何も知らぬまま戦うよりは良い」


 王は地図に目を落とした。


「まずは自国の戦況を正確に把握する。

その上で、必要な情報を

各国と共有できるよう準備せよ」


「かしこまりました」


 王は頷いた。


 各国が同じ敵と戦っているとしても、

各国の事情は同じではない。


 その違いが、

いずれ大きな意味を持つことになる。


 そして、

     アステカ王国でも


 辺境の空を、魔物の軍勢が覆っていた。


 王都へと続く道を塞ぐように、

      異形の群れが進んでくる。


 その先頭には、魔族の将がいた。


 アステカの軍は、

      すでに動き始めていた。






後編につづく



どうでしたか?ぐぐっと、こちら側に戻した

っていう風に思ってやってます。

世界は、どうなっていく?急激な変化に

世界は?グレンは?

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