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双月のヒナ 〜禁足地の戦乙女〜  作者: 哀川 とあ
1章  禁足地の少女
9/70

第1話  月夜の禁足地

第1話 無事に書き終えました


不安定なペースの執筆ですが


読んで頂ければ幸いです


⸻


夜の禁足地は静かだった。


静かすぎた。


本来なら、


森には葉擦れの音が満ちているはずだった。


枝が軋む音。


草を撫でる風の音。


夜鳥の羽ばたき。


遠くで鳴く獣の気配。


だが、


禁足地の夜は違った。


音だけが異様に遠い。


まるで森そのものが、


息を潜めているようだった。


その不自然さに、


ロイド・ディドラスは眉を寄せた。


「団長?」


後ろから部下の声。


ロイドは視線を森の奥へ向けたまま答える。


「……いや」


短く返す。


だが違和感は消えない。


肌にまとわりつくような、


冷たい風。


夜になってから、


禁足地の空気が明らかに変わっていた。



⸻



王国第一騎士団。


総勢百二十名。


ディドラス王国最強と呼ばれる精鋭部隊である。


今回の遠征目的は三つ。


禁足地内部の調査。


高位素材の回収。


そして、


奥地に発生した異常現象の確認。


遠征開始から数日は順調だった。


S級モンスターを複数討伐。


希少鉱石や魔獣素材も確保。


被害は軽微。


むしろ歴代でも成功に近い遠征だと、


誰もがそう思っていた。


――今日までは。



⸻



「各班、夜営準備を開始しろ」


ロイドの指示が飛ぶ。


騎士達は即座に動き始めた。


周囲の警戒。


結界杭の設置。


天幕の展開。


焚き火用の薪運び。


長期遠征に慣れた第一騎士団の動きに無駄はない。


「第三班、東側の警戒線を広げます!」


「補給班は食事の準備を急げ!」


声が飛び交い、

静かな森にわずかな活気が戻る。


やがて中央に焚き火が灯った。


赤い火が暗闇を照らし、

騎士達の鎧を鈍く反射させる。


討伐した魔獣の肉が焼かれ、

香ばしい匂いが漂い始めた。


「ここまで順調だと逆に不気味ですね」


若い騎士が苦笑する。


「馬鹿言え。

何も起きないのが一番だ」


別の騎士が笑い返した。


だが。


ロイドだけは、

笑わなかった。


彼は焚き火の揺れを見つめたまま、

静かに目を細める。


風向きがおかしい。


火が、

森の奥へ吸われるように揺れている。


そして。


ふっ――……


冷たい風が、

頬を撫でた。


その瞬間。


禁足地の空気が、

静かに変わった。


ロイドは腰の剣に手を添える。


――グルルルル……


低い唸り声が、

静まり返った森の奥から響く。


騎士達が一斉に立ち上がった。


空気が張り詰める。


「来るぞ!!」


誰かの怒号が飛んだ。


直後。


森の闇の中で、

紅い双眸がゆっくりと浮かび上がる。


それは、

異様な巨体だった。


木々の隙間から姿を現した黒い獣。


通常のヘルハウンドとは比較にならないほど巨大な体躯。


漆黒の毛並み。


剥き出しの牙。


口元から漏れる赤熱した吐息。


一歩踏み出すたび、

地面が重く沈んだ。


騎士達の間に動揺が走る。


ヘルハウンドは本来、

群れで行動する魔獣だ。


単独で現れること自体が珍しい。


まして、

これほど巨大な個体など、

誰も見たことがなかった。


ヘルハウンドは低く唸りながら、

騎士達を睨み据えている。


まるで、

獲物を選別しているかのようだった。


「総員、迎撃!!」


ロイドの声が夜に響く。


瞬間。


魔法陣が次々と展開された。


炎弾。


氷槍。


閃光。


無数の魔法が一斉に放たれ、

ヘルハウンドを爆炎が包み込む。


轟音が森を揺らした。


だが。


爆煙を突き破り、

黒い巨体が飛び出す。


「なっ――!?」


巨体とは思えない速度だった。


振るわれた爪が、

騎士を一人鎧ごと吹き飛ばす。


骨の砕ける音。


遅れて響く悲鳴。


「散開しろ!!」


ロイドが地面を蹴った。


銀色の剣閃が走る。


斬撃がヘルハウンドの肩を深く裂き、

黒い血が飛び散った。


しかし、

止まらない。


灼熱の牙がロイドへ迫る。


ロイドは剣で噛み付きを受け流し、

そのまま腹部へ蹴りを叩き込んだ。


巨体が僅かによろめく。


「今だ!!」


騎士達が再び魔法を放つ。


炎。


氷。


雷。


集中砲火がヘルハウンドへ降り注ぐ。


咆哮。


片目が潰れ、

全身から黒煙が立ち昇った。


それでもなお、

ヘルハウンドは立っていた。


騎士達の顔に恐怖が浮かぶ。


ロイドは剣を握り直した。


重い。


強い。


だが、

倒せない相手ではない。


ヘルハウンドが咆哮し、

再び突進する。


ロイドは真正面から迎え撃った。


激突。


火花。


牙と剣がぶつかり合い、

衝撃が大地を震わせる。


そして。


「――はあああああッ!!」


裂帛の気合いと共に放たれた一撃が、

ヘルハウンドの首元を深く切り裂いた。


巨体が大きく揺れる。


血を撒き散らしながら、

ヘルハウンドは地面へ崩れ落ちた。



ロイド•ディドラス•アーシニア


ロイくんと呼んでます笑


この世界ではかなり強い騎士様です


次回のお話は出来ていますので


順次、更新していきたいと思っております

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