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双月のヒナ 〜禁足地の戦乙女〜  作者: 哀川 とあ
1章  禁足地の少女
10/50

第2話  紅蓮の業火

第2話です


執筆分は、1日おきに更新しようと思ってい


ます


楽しんで頂ければ幸いです

     ―――――


森が静まり返る。


「……倒した、のか?」


誰かが呟いた。


ヘルハウンドは痙攣し、

動かない。


ロイドは警戒を解かぬまま、

ゆっくりと近付いた。


剣を構える。


トドメを刺そうとした。


その時だった。


雲の切れ間から、

月光が差し込む。


白い月明かりが、

ヘルハウンドの巨体を照らした。


――ゴキッ。


嫌な音が響く。


ロイドの動きが止まった。


骨が軋む。


肉が膨れ上がる。


倒れていた巨体が、

音を立てながら変形し始めた。


騎士達の顔から血の気が引く。


裂ける首。


割れる肉。


血飛沫を撒き散らしながら、

新たな頭部が押し出される。


さらにもう一つ。


さらにもう一つ。


骨格が肥大化し、

黒い肉が脈動する。


「後退しろ!!」


ロイドが叫ぶ。


だが、

遅かった。


三つの首を持つ災厄が、

月光の中でゆっくりと立ち上がる。


それを見た瞬間。


誰もが理解した。


終わった、と。


「……ケル、ベロス……」


絶望が零れ落ちる。


次の瞬間。


中央の首が、

ゆっくりと口を開いた。


轟音。


紅蓮の業火。


爆発的な炎が、

夜を呑み込んだ。


絶叫が響く。


騎士達が鎧ごと焼かれていく。


肉が炭化し、

骨が砕け、

人だったものが崩れ落ちる。


たった一撃。


それだけで、

第一騎士団は半壊した。


焚き火は消え、

森は炎獄へ変わる。


それでも。


ロイドは叫んだ。


「戦えええええッ!!」


騎士達は恐怖を押し殺し、

なお剣を取る。


突撃。


斬撃。


魔法。


だが。


通じない。


ケルベロスは騎士を噛み砕き、

爪で引き裂き、

炎で焼き払っていく。


圧倒的だった。


力の差が違いすぎる。


悲鳴が次々と消えていく。


地面には死体が積み上がっていった。


焼け焦げた肉。


千切れた腕。


転がる頭部。


地獄だった。


ロイドの呼吸が乱れる。


勝てない。


こんな怪物に。


その時。


ケルベロスが、

死体を貪る動きを止めた。


三つの首が、

ゆっくりと生き残り達を向く。


騎士達が恐怖で後退した。


「来るぞ……!!」


誰かが叫ぶ。


次の瞬間。


ケルベロスが地面を砕き、

突進した。


暴風だった。


巨大な死そのものが、

一直線に迫ってくる。


「防御壁展開!!」


騎士達が一斉に魔法陣を展開する。


幾重もの障壁。


光の壁。


だが。


ケルベロスの爪が触れた瞬間。


――バキン。


呆気なく砕け散った。


絶望の声が漏れる。


直後。


炎。


牙。


鮮血。


騎士達が一瞬で喰い散らされる。


血飛沫が夜へ舞った。


ロイドは剣を構えたまま、

真正面から衝撃を受ける。


牙が腕へ食い込んだ。


骨が砕ける。


右腕が、

喰い千切られた。


さらに。


左腕にも牙が食い込む。


肉が裂け、

骨が潰れる。


ロイドの身体が宙を舞い、

地面へ叩きつけられた。


血が広がる。


立てない。


腕がない。


霞む視界の中。


ケルベロスが、

ゆっくりと近付いてくる。


その赤黒い瞳だけが、

異様なほど鮮明だった。


ロイドの喉が、

浅く鳴った。


呼吸をするたび、

肺に熱が入り込む。


焼けた血の臭い。


焦げた肉の臭い。


仲間だったものが、

辺り一面に散らばっていた。


「……っ……」


剣を握ろうとして、

そこで気付く。


右腕はない。


左腕も、

まともに動かない。


それでも。


ロイドは歯を食いしばり、

血塗れの身体を起こした。


騎士団長だからだ。


ここで倒れるわけにはいかなかった。


たとえ、

もう勝てないとしても。


ケルベロスが近付く。


ズシン。


ズシン。


一歩ごとに、

地面が揺れる。


三つの首。


燃えるような赤黒い瞳。


口元から滴る、

騎士達の血。


中央の首が、

ロイドを見下ろした。


獲物を見る目だった。


「……来いよ……」


掠れた声。


ロイドは折れかけた剣を構える。


腕の感覚は、

もうほとんどない。


立っていることすら奇跡だった。


だが。


騎士として。


王国第一騎士団団長として。


最後まで剣を捨てる気はなかった。


ケルベロスが咆哮する。


轟音が森を震わせた。




モンスターは悩みますよね…


ケルベロス…


名前の響きが好きです笑


ガオーって3つ…


ほんとにいたら怖いですね…


次回は明日、更新致します


読んで頂き、ありがとうございました



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