表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双月のヒナ 〜禁足地の戦乙女〜  作者: 哀川 とあ
序章  〜力の根源〜
7/13

特別編 エピソード3 ヒナ15歳 村の日常と不穏?

エピソード3 中盤です


出来るだけ読みやすいようにまとめてみました


読んで頂けたら幸いです

 湯気が立ち込める。


 ティーナ村の温泉。


 岩風呂に肩まで沈んだ瞬間、全身の力がふわっと抜けた。


「いやぁ〜……生き返る〜……」


 熱い湯がじんわり身体に染み込んでいく。


 さっきまで森で暴れていた筋肉が、ようやくほどけていく感覚。


 これだから温泉はやめられない。


「今日も暴れてたねぇ」


 向かいから、くすくす笑う声。


「暴れてないよ!? 村を守ってたの!」


 即座に反論する。


 ちゃんと仕事だ。


 あれは正当防衛だし、討伐だし、村の安全確保だ。


 ……まあ途中から少し楽しくなってたのは認める。


「途中から楽しんでたろ、お前」


 隣から呆れた声が飛んできた。


 ぎくり。


 思わず視線を逸らす。


「……ちょっとだけ」


「やっぱりねぇ」


 はぁ、とユヅキおばさんがため息を吐く。


「弩級の猿相手に目ぇ輝かせる娘なんて、お前くらいだよ」


「だって強かったし……」


「強かったし、じゃないの」


 笑い混じりの声。


 湯気の中に、柔らかい空気が広がっていく。


 この時間、好きだなぁと思う。


 森で戦ってる時は、頭が熱くなる。


 血が騒ぐというか、身体が勝手に動くというか。


 強い相手ほど楽しくなってしまう自分がいる。


 ……母さんにはあんまり言えないけど。


 でも、それ以上に。


 こうして温泉に入って、くだらない話して、笑ってる時間の方が好きだった。


「でも本当に強いよねぇ」


「んー……まあ慣れ?」


「慣れで弩級の猿倒す人いません」


「えぇー?」


 納得いかずに頬を膨らませる。


 だって本当にそうなのだ。


 小さい頃から森に入ってたし、ゲン父さんに鍛えられたし、ふーちゃんもうるさかったし。


 気付いたらこうなってただけで。


 自分ではそこまで特別な感覚がない。


 すると、ユヅキおばさんがふと思い出したように口を開いた。


「そうだ、おみくじ引いてみない?」


「またぁ?」


 思わず顔が引きつる。


 以前引いた時、盛大にろくでもない内容だった記憶が蘇った。


『調子に乗ると死ぬ』


 とか。


『口は災いの元』


 とか。


 あれ絶対あたしだけ辛辣なんだよ。


「いいからいいから♪」


 にこにこしている。


 その笑顔が逆に怖い。


 嫌な予感しかしなかった。


 でも断ると余計面倒になるのも知っている。


「……絶対変なの出るじゃん」


「大丈夫だって〜♪」


「その“大丈夫”が一番信用できないんだけど……」


 ぶつぶつ言いながら、あたしは湯船の縁に頬を乗せた。


 ――この時はまだ。


 そのおみくじが、妙な方向で当たるなんて思ってもいなかった。



     ―――――

 


夕暮れ…


 空が茜色に染まって、村の端にある小さなおみくじ屋も、赤い光に包まれている。


 提灯が風でゆらゆら揺れて、ちりん、と風鈴が鳴った。


 あたしは箱を両手で持って、ぶんぶん振る。


「むむむ……今日は良いの来い……!」


「欲がすごいねぇ、ヒナちゃん」


 ユヅキおばさんが、呆れたように笑う。


 このおみくじ屋をやっている、村でも有名な占い好きのおばさんだ。


「だって! 紫とか出たら絶対嫌じゃん!」


「そういう時だけ信じるんだ?」


「うっ」


 図星。


 ユヅキおばさんは、くすっと笑った。


「はいはい、まずは引いてみなさいな」


「むぅ……」


 カラン。


 一本だけ棒が落ちる。


「おっ」


 番号を見て紙を受け取り、そのまま開いた。


「……あ」


 固まった。


 紫。


 一瞬だけ空気が止まる。


 隣のユヅキおばさんの笑顔も、ほんの僅かに固まった気がした。


「うわ、最悪〜……」


 思わず頭を抱える。


 脳裏に浮かぶのは、つい先日やらかした事件。


 父さんの剣で、自分の双剣の強度を試した結果――


 見事にへし折った。


(うん、絶対アレだ……)


 すると隣にいたコトハが、小さく首を傾げた。


「……もしかして、お父さんの剣ですか?」


「えっ!? なんで分かったの!?」


「顔に書いてあります」


「うそぉ!?」


 慌てて自分の頬を触る。


 そんな分かりやすい!?


 するとコトハが吹き出した。


「あははっ……」


「笑ったな!?」


「すみません。でも、お父さん怒ると静かになりますから……」


「あー……分かる……。静かになるんだよ……あれが一番怖い……」


 そのやり取りを見て、ユヅキおばさんも肩を揺らして笑う。


「ゲンさん、普段優しい分ねぇ」


「そうなの! 怒鳴られる方がまだマシ!」


 二人で笑う。


 張り詰めかけた空気が、少しだけ柔らかくなった。


 けれど。


 その時、あたしは気付かなかった。


 笑っていたユヅキおばさんが、一瞬だけ。


 夕暮れの向こうを見つめるような、遠い目をしていたことに。

次回はエピソード3完結のお話です


それにしても、寒暖差が激しいですよね…


哀川の身体も環境変化に対応が鈍化しています笑


皆様、お身体にお気をつけ下さいませ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ