特別編 エピソード2 ヒナ10歳「外側の限界と、内側の覚醒」②
中盤まで特別編できました
あまりうまい言い回しが出来ないですが
読んで頂けたら嬉しいです
森は静かだった。
遠くで遠吠えが響き、木々がざわめき、フクロウの声が夜に溶けていく。
音はあるのに、静かに感じる。
足元の感触がやけに鮮明で、すべてが分かる。
土の柔らかさ、落ち葉の重なり、踏み込んだときの沈み方まで、ひとつひとつが手に取るように伝わってくる。
耳に入る音も同じだった。
枝が擦れる音。
小さな動物が走る気配。
遠くで鳴くフクロウの、静寂の中に溶けるような歌。
全部が聞こえる。
でも。
「……違う」
どれも違う。
耳に入ってくるすべての中から、何かひとつだけが外れている。
はっきりとは分からないのに、確実に“違う”と分かる感覚。
その違和感を辿るように、足が自然と動いていく。
考えているわけじゃない。
選んでいるわけでもない。
ただ、そちらへ向かってしまう。
やがて、木々の間がわずかに開けた場所に出る。
視界の先に、それはいた。
黒い竜。
巨大な体を静かに横たえ、まるで眠っているかのように動かない。
月明かりに照らされた鱗が、ゆっくりと光を返している。
銀とも青ともつかない淡い輝きが、呼吸に合わせてわずかに揺れる。
その光景は、あまりにも静かで――
「……綺麗…」
思わず、そう零していた。
怖いはずなのに。
危険なはずなのに。
それでも、目を奪われる。
その一瞬。
呼吸が、わずかに乱れる。
意識が、ほんの少しだけ緩む。
そのわずかな隙間から、自分の存在が外へ漏れ出したような感覚が走る。
――しまった。
そう思った時には、もう遅かった。
竜の首が、ゆっくりと持ち上がる。
それだけの動きなのに、周囲の空気が押し潰されるように重くなる。
さっきまでただそこにあった存在が、はっきりとこちらへ向けられる。
見られている――そう理解した瞬間、背中を冷たいものが走った。
足元の地面が、わずかに沈んだ気がする。
呼吸が止まる。
逃げなきゃいけないのに、身体が動かない。
そして。
闇の奥で、ゆっくりと開いた瞳が――
真っ直ぐ、こちらを捉えた。
「――っ、まずい!」
弾かれるように身体が動く。
横へ跳ぶ。
直後、振り下ろされた爪が地面を抉り、土と石を弾き飛ばした。
衝撃が空気を震わせ、遅れて風圧が頬を叩く。
「速い…!」
着地と同時に足を踏み込む。
躊躇している時間はない。
「はぁっ!」
斬り込む。
刃が鱗に触れる。
確かに当たっている。
それなのに。
「え…!?」
手応えが、すり抜ける。
次の瞬間、押し返すような圧が身体を弾いた。
「危なっ…!」
地面に叩きつけられる勢いのまま、身体を転がして爪の軌道から逃れる。
背中に残る衝撃を押し殺しながら、無理やり身体を起こす。
呼吸が一気に崩れる。
空気を吸おうとしても、浅くしか入ってこない。
胸が詰まるように苦しい。
それでも。
止まれば終わる。
「まだ…!」
歯を食いしばり、乱れた呼吸のまま踏み込む。
再び距離を詰める。
刃を振る。
わずかに遅れる。
そのほんの一瞬。
肩に熱が走った。
「うっ…!」
かすっただけのはずなのに、衝撃が深く残る。
腕が重い。
動きが鈍る。
押されている。
はっきりと分かる。
「このままじゃ…!」
後ろへ跳び、間合いを切る。
でも、それでは追いつかれるだけだ。
地面を強く蹴る。
身体を持ち上げる。
空中で身体を捻り、残っている力をすべて刃に乗せる。
――ここで決める。
振り下ろす。
確かな手応え。
だが。
軽い。
嫌な感覚が手に残る。
「……え」
視線を落とす。
双剣が、途中から折れている。
刃が、無残に途切れている。
「折れちゃった…」
その事実が、ゆっくりと胸に落ちる。
終わった。
そう思った瞬間。
「やっぱり…母さんの言う事…聞いとけばよかったな…」
自嘲のように漏れたその言葉の直後。
背後からの衝撃が、容赦なく身体を弾き飛ばした。
地面が遠ざかる。
視界が回る。
何とか腕と足を使って体勢を整え、地面に叩きつけられる直前で衝撃を逃がす。
それでも、完全には殺しきれない。
着地と同時に膝が崩れる。
力が入らない。
視界に入った血が、月と同じ赤に見えた瞬間、頭の奥が繋がる。
言い回しなどはある程度執筆ができたら
見直して直す予定です
本編開始まで頑張ります




