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聖女を信じて悪役令嬢を陥れ続けたら、断罪されたのは私でした  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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この街の教会

 荷物を整えて二週間以上過ごしていた宿を後にする。

 ここから首都へ向かうことになる。

 ニコラさんに頼んで旅路たびじに必要な食べ物は、分けて貰った。

 私のお金で買ったものもあるから。


「サフィー、教会に行って良いかしら?」


「は、はい」


 アプリルがそう頼んできた。

 確かに行ってみるのも悪くないかも。

 聖女様の加護はないとしても、神頼みくらいはしても良いよね。


「アプリルさん、本日出られるのですね」


「ええ。お世話になりましたわ」


 アプリルはカーテシーをしながら、教会のシスターに挨拶をしていた。


「お祈りをしても?」


 私はシスターに問いかける。


「勿論」


 この世界の教会における作法で、女神像に祈りを捧げる。

 ふと目に入ったのは、聖女らしき肖像画が見えていた。

 綺麗に描かれていて、描かれてから日数は経っていないみたい。

 光が差していて、女神像よりも心なしか豪華だった。

 まるで、祈りの中心が入れ替わっているみたいだった。


「お美しいですね」


 私はふと呟いていた。


「はい、女神様は私達に見えませんが聖女様は度々現れます」


「そうなんですね」


 確かに、あの聖女様もいるのだから。

 だからこそ、私は少し怖くなった。


「我が国にもいらっしゃいますが、隣国の王国では有名な聖女様がいらっしゃるとか」


「……グルナ・フスト様でしょうか」


 私は絞り出すようにしながら問いかけた。

 すると、シスターは驚いていた表情をしている。


「よくご存じですね!」


 知っているんだ。

 となれば、このまま居続けても良くなかったかもしれない。


「グルナ様は様々な奇跡を起こせるとか」


「奇跡……」


 確かにあった気がする。

 不安になっていた人を安心させていたから。

 シスターは、本当に尊敬しているようだった。


「聖女様は迷える者を正しい道へ導いてくださいます」


 正しい道。

 私って、正しい道じゃなくて脇道に逸れちゃったけれど。


「ただ、聖女様に逆らった者は、皆破滅しました」


「……破滅?」


 その言葉に、私もアプリルも動揺してしまう。

 私達は破滅したのだから。

 胸の奥を、冷たいものが撫でていく。


「聖女様は正しい方ですから、間違った人物が裁かれるのは当然なのです」


 ……聖女様が断罪するのはおかしくないのか。


「お二方、こちらにいたんですね」


 ロータスが合流した。

 彼女もしていた仕事先に挨拶あいさつをしていたから。


「聖女様ですか……最近、こういう話が増えているみたいです」


 さらにロータスは続ける。


「商人や旅人の間でも、聖女様の噂が広がっています」


「そうなのね」


 近くの参拝客の話を聞いていると、同様に聖女様の話が。


「聖女様のおかげで、この国や地域が守られている」


「逆らうなんて恐ろしい」


 結構浸透しているんだ。

 店番していたときには、あまり聞こえてこなかったけれど。


「……バレたらマズいよね」


 私達が、聖女様に裁かれた側だと知られたら。


「信仰は、人を救うだけではありませんわ」


「だよね」


 私達は、そこから外れた側なのかもしれない。

 再び女神像に一礼をした後、教会を後にする。


「首都へ行きましょう」


 アプリルがそう伝える。


「……うん」


 私は頷きながら、この街の石畳を歩いていった。

 この街から離れることに、少しだけ安堵している自分がいた。

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