グルナに届いた報告
【グルナ視点】
わたしは学院にある聖堂の高窓から、光を見上げていた。
優しい光がわたしを包んでくれて、気持ちが落ち着く。
大丈夫、あの二人の動向は分かっていない。
おそらく、廃都かどこかで果てている。
何も報告が来ないのが証拠かもしれない。
動向があれば、来るのだから。
特に廃都で果てているなら、報告する人間なんているわけ無い。
『心配しているのですよ、グルナ』
優しい声が頭に響く。
「大丈夫」
『余裕みたいですが、そうなのかしら』
すると、聖女様の声が聞こえてくる。
わたしだけに聞こえる、導きの声。
「えっ?」
まるでわたしの考えが間違っているかのように。
『廃都は抜けようと思えば抜けられる。一人だけでは不可能ですが、アプリルの存在があれば……』
「そんなこと」
少し俯きながら、聖女様の言葉を聞いていた。
『どうでしょうね』
わたしを厳しい言葉で言い放った。
それから、少しして学院の侍女がわたしのところへ。
「グルナ様、隣国の廃都に近い街において、マッサージで有名な露店があるようです」
マッサージで有名?
どういうことなんだろう。
「あの、どうしてその話題を?」
「何日か前から金髪の少女が店主不在の間、行っているらしく、人気らしいです」
その言葉を聞いて、身体が震えた。
もしかして、サフィー・プラハなの?
彼女はマッサージが上手だった。
容姿が一致している。
『だから言ったではありませんか。あなたが緩めたから、闇が息を吹き返そうとしているのです』
聖女様はわたしを糾弾した。
まるで犯罪者を逃がしたかのように。
「でも、そこで終わる可能性だって」
小さな街で生きているだけ。
それならば、影響は大きくないはず。
『いいえ。放置すれば、闇は世界を包みます』
「あの二人は、もう十分苦しんだはずです」
わたしは俯きながら、弱々しく言葉を返す。
「だから……」
いくら特別な存在だからって、こんなに言うなんて。
あの二人は魔王の手先?
違うかもしれないけれど。
「歪みは、やがて人を惑わせます』
切り捨てるように聖女様は言い放った。
『あなたは甘すぎます。見ていられません』
呆れかえった声がわたしに響いていく。
まるで断罪するような声が。
『もうあなたの甘い考えでは、世界は壊れるでしょう』
「聖女様……!」
まるでわたしを見捨てるかのような言葉。
わたしは狼狽えてしまい、涙が出てくる。
『大丈夫ですよ、あなたは消えません。わたくしが、正しい世界を守りますから』
すると身体の自由が効かなくなった。
目の前の景色は分かるけれども、身体が動かせない。
指先一つ動かせない。
なのに、立ち上がる感覚だけが伝わってくる。
「さて、あの二人の動きを探らなくては」
わたしの口元が、勝手に微笑んでいた。




