馬鹿な冒険者に福音の到来【15】
ハッキリと物を言うのであれば、反論したい気持ちもある。
否……反論したい気持ちで一杯だ!
自分に対してクッソ甘い事を言う癖に、ミナトには酷い台詞を平然と言ってのけるし。
ナチュラルに奇抜な台詞を言って来るのに、自分はマトモな女神様だと大きく勘違いしているし。
何より、ミナトが困るのを見て楽しんでいる事が多い!
挙句、その理由が『だって、楽しいから!』……と、来た!
こんな野良女神を、どうして愛せると言うのかっ⁉︎
ズバリ言って、パインを愛せる要素は微塵もない!
……ない筈なのに。
「……はぁ」
ミナトは苦笑のまま嘆息した。
本当に自分はどうかしている……そう思えてならない。
この、妙に高慢で自己中で、息を吸うかの様に人を困らせる野良女神が、途方もなく可愛い存在に見えてしまうのだから。
しかも、それは外見の事を言っているのではなく……パインの持っているあらゆる要素……その全てをひっくるめ、それら全てが『そこもパインらしさだよな?』と、納得した上に、妙な愛着の様な物まで抱いてしまう。
これは正常な考えではない。
そう思うミナト。
けれど、パインに対して好意的な感情もまた……ミナトの中に生まれている事も確かであった。
「参ったな……俺は何処でどんな間違いをしてしまったのか……?」
ミナトは眉を寄せ……大きく悩む様な仕草を作りながらも、両腕を組んでみせた。
そんなミナトを見て、隣にいたパインはキョトンとした顔になってから、
「……? どうかしました? ミナトさん?」
それとなくミナトに声を向けてみせる。
声を掛けられたミナトは、ちょっとだけドキッ! っとした顔になった。
パインに異性的な意識を持っていたタイミングで、丁度本人から声を掛けられていたが故に、ついつい驚いた顔になってしまった。
……が、間もなくミナトは微笑んだ。
冷静に考えれば、パインは真横に座っていたのだから、普通に声を掛けて来て当然と言えた。
何より、
「いや……なんつーか、さ? パインも可愛い女の子なんだよなぁ……ってさ?」
別に、隠すまでもない事だと思える。
ここもまた、ミナトなりにあった心境の変化と言えるだろう。
少し前のミナトであれば、絶対に言わない事でもあるし、それが事実であったとしても、全力でパインに悟られない様な行動をしていたに違いない。
けれど、今のミナトは違った。
そして、パインの態度も。
「……はへ?」
次の瞬間、パインが大きく激しく赤面した。
こんな顔なんて、少し前のパインは絶対見せなかった。
しかし、今のパインは大きく変わった。
やはり、これも……恋愛感情が復活したが故の行為であり、態度であるのだろうか?
詳しくは知らないが……なんとなく、そんな気がする。
「も、もう! パインさんを揶揄うなんて百年早いですよ! ミナトさんの癖にっ!」
パインは顔を真っ赤にした状態のまま、ブンブンッ! っと顔を左右に振ってから、憎まれ口としか他に表現出来ない台詞を叫んでいた。
「はははっ! 揶揄う……か。まぁ、今までの俺を考えれば、確かにそう言う台詞が一番しっくり来るな」
「そうですよ!……もう! 本当にそう言うのはやめてくれません?……あ、ううん? べっ別にパインさんを可愛いと言ってくれる事は、それで構わないのですが……あ、そっそうだ!」
そこで、パインは『ハッ!』っとした顔になって言う。
何処となく、強引に話題を変えたがっているかの様な態度で答えたパインは、
「そう言えばですね? パイン・システムから伝言がありました。ちょっと長いのですが、大体はこんな感じです『まずは、パインの中に眠っている破滅の女神を起こさずに済ませてくれた事に感謝したい。良くぞやってくれた! 褒めてやろう!』と」
「……地味に上から目線なのがムカつくんだが?」
「まぁまぁ、そう言わないで下さいよ? 一応、パイン・システムもミナトさんに感謝してはいるみたいですから? コラ、パイン・システム!『実はそこまで感謝してない』とかって、本音を言うんじゃないの!」
「……いや、そこ……お前が言わなければ、俺には伝わらなかったと思うんだけど?」
ミナトはビミョーな顔になって眉を寄せた。
こないだに見せられた、三夜連続による悪夢を見せてくれた相手でもあるだけに、ミナトもパイン・システムと言う存在を、ある程度までは理解していたりもする。
まぁ、あんまり良い意味での理解はしていなかったのだが。
実際問題、パイン・システムの性質はパイン本体を更に凌駕する程の大概さである事だけは、最初から知っていた。
そこらを加味するのであれば、上から目線で物を言う程度の事で、いちいち目くじらを立てていたら会話なんて成り立たない……とかって、ミナトは考える。
「まぁ、そこは良いさ? それで? 伝言はそれで全部なのか?」
仕方ないから、ミナトは妥協する事にした。




