馬鹿な冒険者に福音の到来【14】
パーティー・メンバーは、ミナト・リオ・パインの三人に加え、偶然を装う……と言うか、最近はあんまり隠すつもりもなかったシリアと、いつの間にか冒険者協会に入会して冒険者になっていたココナッツの五名。
仕事の内容は……まぁ、いつぞやと同じである。
前回は、いきなり出現した盗賊達によって、まともに仕事を熟す事が出来なかった為、再び輝きの実を納品する仕事を請け負った形となった。
正直、ミナトとしては、この様なクッソ不味い仕事なんぞ、二回もやりたくはないのだが……周囲にいる女性陣が、熱烈に『もう一回行こう!』と、ねだる様に言って来た為……その迫力に気圧される形で承諾してしまった。
また、リオとココナッツのランクも関係している。
ココナッツの場合は、協会側の人間もかなりの実力者である事を既に認めている為、ランクは低くてもそれなりに危険度の高い仕事を受注しても、すんなり許可をして来そうではあるのだが、リオの場合はその限りではない。
最下級のランクであり、額面通りの仕事しか受注する事が出来ないとなれば……現況で受ける事が可能だった仕事は、輝きの実の納品しか存在しなかったのである。
実力主義の縦社会でもあった冒険者の世界だけに、こればかりは仕方ないと言える。
まともな仕事が取れないのなら、努力して上位の冒険者になり、より割の良い仕事を受注出来る権利を自分の力で手にするしか、他に方法がないのだから。
これら諸々の事情により、リオの仕事に他のメンバーが付き合う形となった訳なのだが……それは表向きの話。
実際には、ちょっと違う。
どう違うか?
まず、仕事を受注こそしているが、仕事をしに来たと言う雰囲気などない。
それは、比較的大きめの馬車に乗車しているパーティー・メンバーの顔を見ていると分かる。
もう、完全に『遊びに来てます』の雰囲気だ。
お気楽ムードのまま、馬車の荷台部分でカード・ゲームしながら盛り上がる女性陣がいる。
女性陣と形容したのは他でもない。
このパーティーで唯一の男と言えるだろうミナトは、前回と同様に手綱を持って運転する役をしていた。
「今回は最初からシリアも居るし……ココナッツさんも居るんだから、代わってくれても良いんじゃないのか……?」
ミナトは地味に理不尽な何かを感じながらも、ブツブツと苦言を漏らしていた。
そんな、不遇過ぎる状態に、大きな不条理を抱くミナトがいた頃、
「まぁまぁ、ミナトさんも『綺麗なおねーさんが隣に座っている』と言う、超絶級の役得を得ているのですから、ここはヨシとして置きましょうよ?」
やたら陽気な声で言うパインの返事がやって来た。
ミナトのぼやきに素早く反応していた所から分かるかも知れないが、現在のパインはミナトの隣に座っている。
ここも、前回とほぼ同じで『交代でミナトの隣に座る』と言う形を取っている。
強いて前回と違う所と言えば……パインの持っている心境の変化だろうか?
以前のパインが、ミナトの隣に座りたがった理由は、単純に暇だったから。
それ以上でもそれ以下でもない。
けれど、今は違う。
恋愛感情が復活した、現在のパインは……。
「綺麗なおねーさんだと? 隣に座っているだと? おかしいな? 俺には全く見えないんだが?」
「それは大変ですよ、ミナトさん! 眼科に行かないと駄目なレベルです! それは失明しているか、視力が0.1未満かのどちらかです! どちらであっても裸眼ではかなり危険です! 馬車だって運転出来ません!」
「安心しろパイン。俺の視力検査は、定期的に協会でやっているが、両目とも2.0を下回った事がない!」
「それなら、可愛いパインさんが見えてるじゃないですか! ハチャメチャに酷い! 酷過ぎます!」
……と、ちょっとした冗談であったとしても、思い切り傷付く様になっていた。
まぁ、ある意味でいつも通りの態度と言うか、ショックの受け方をしているので、ミナトには見分けが付かない……と言うのが、正直な所であったのだが。
……否、実は少し違う。
「……まぁ、そんなに怒るなよ。俺も少し言い過ぎた」
なんだかんだで、少し前のパインとは違い、本気で傷付いている雰囲気と言うか……パインの気持ちをそれとなく汲み取るかの様な態度を取るようになった。
ミナトも少しだけ進歩したのだ。
厳密に言うと、少しだけ……本当に少しだけではあるのだが、パインの気持ちを理解出来る様になっていたりもする。
どうしてそうなるのかは……密かに、ミナト本人にも分かっていない。
しかし……でも……何故だろう?
心の奥底にいる、もう一人の自分がミナトへと語るのだ。
パインの気持ちが分かるのは、割と自然な事なんだよ?……と。




