馬鹿な冒険者に福音の到来【11】
今から十年後。
一体、彼等はどんな未来を送っているのだろう?
パインは?
ココナッツは?
二人の娘達は、笑って過ごせる日々を送れるのだろうか?
……そして。
前世は、自分の子供と言えたミナトは『誰と結ばれている』のだろうか?
それは、実際にその時が来なければ分からない。
りんごが知っている誰かと結ばれる未来が訪れているのか?
それとも、全く知らない相手なのか?
あるいは……独身になってしまうのか?
りんごの予測としては、今の所……それら全てに、同等の可能性が存在している様に感じる。
けれど……願わくば。
「パインやココナッツが『ちゃんと納得する』結果になる事を祈るわ」
りんごは呟く。
それは、前世のアダムが出来なかった事。
弱い心が……結果として、最悪の選択肢を選んでしまったが故に、未達成のまま今日まで続いている事。
だから……思う。
どんな形でも良いから。
もう、高望みはしないから。
せめて……そう、せめて。
パインとココナッツの納得が行く結末になる事……ただ、その答えをしっかりとミナトが出してくれたら……もう、それ以上は何も望まない。
「そう言えば、南の大陸に……まだ、一夫多妻制の国が残ってたわねぇ?……ああ、そう言えばニイガも近未来には一夫多妻に、ルミ女王がしちゃうんだった……ふむ、これは案外、答えは簡単に出るかも知れないなぁ……」
りんごは少し考え込む感じの顔を作りながらも呟いていた。
すると、近くにいたいよかんが地味に眉を寄せ、
「……それで良いの? 答え的にさぁ……」
口を尖らせながら、りんごへと声を吐き出してみせた。
ドラゴン……と言うか、龍神皇の世界にも、密かに一夫多妻は存在していた。
厳密に言うと、かなり大昔に廃れてしまった話ではあったのだが……一応、ある事にはあった。
しかしながら、強いオスが多数のメスを妾に持つと言う状態は、おおよそ文化的ではないと言うか……獣染みている感じがして……いよかんは、どうにも賛同出来ない。
やっぱり、一人の男性は一人の女性と添い遂げる方が、理知的かつスマートに見える。
山奥に住んでるボス猿じゃあるまいし、一人のオスが多数のメスを独占すると言う形は、根本的に受け入れにくい気持ちにさせられた。
……しかしながら、りんごは言う。
「良いのよ? 要はね?『パインとココナッツの二人が幸せなら』それで良いの。お互いに納得してさ? 幸せに暮らせるんであれば……私はもう、どんな形であろうと全てを受け入れる気なのよ?」
笑みを混じらせ、爽やかに。
「……そう言う物なのかなぁ……」
心からの笑みを作って言うりんごに、いよかんは一定の反論をしたい気持ちになりつつも、それ以上の言及を避けた。
なんと言うか……言い難い雰囲気だった。
それだけ、りんごが晴れ晴れとした表情を作り、色濃く笑みを浮かべていたからだ。
更に、りんごは言った。
「人の心が千差万別である様に、恋の形だって人それぞれよ? 他の人が納得しなくたって、その当人達が納得出来ていれば、それは一つの答えであり、終着点だと思うの。だから良いのよ? 大切なのは心だと思う。ちゃんと、心の底から納得出来てさえいれば、それが最善の終着点だと思うのよ」
「……な、なるほど」
りんごの言葉を耳にしたいよかんは、思わず納得してしまった。
妙に大人の発言に感じた。
実際に、いよかんよりも全然年上なのだからして、大人の発言をしていても、なんらおかしな事ではなかったのかも知れないが……いかんせん、りんごの外見は年端も行かない少女にしか見えない。
一応、りんご曰く『外見は十六歳の設定よ?』とかほざいてくれちゃってるが……いよかん的に言うのであれば、中学生だっておかしくない様な外見にしかみえなかった。
そこらを加味するのであれば、どうしても年上に見えない時があったりもするのだが、
「やっぱりさ?……りんごさんは大人なんだねぇ……ちょっと思った」
いよかんは苦笑混じりに答えた。
自分よりも大人であり……母でもある。
なまじ、外見が中学生風味である上に、子供染みた言動や態度なんぞも良く見せる為、何かと幼く見えてしまう傾向にあるのだが……実際にはそうではないのだ。
こんな事は今更だったかも知れないが、いよかんは改めて実感していたのだった。
そんな中、
「シズ1000先生! どーか! どーか、あと一万! うん、一万で良いから貸してくれませんかっ!」
今にも土下座しそうな勢いで、頭上にいたシズ1000へと懇願するういういの姿があった。
思い切り卑屈な態度を露骨にとっているういうい。
ハッキリ言って滑稽であった。
これはどう言う事なのだろう?
まぁ……果てしなく下らない理由が存在している事だけは分かるのだが。




