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破滅の女神とは【28】

「勝手におかしな台詞をほざくんじゃないわよ! せっかく人が、感傷に浸っていたんだから、邪魔しないで頂戴!」


「およ? 干渉に浸っていた?」


「漢字が違うでしょ! 漢字が! そもそも、私が何に干渉したと言うの! おかしな事ばかり言ってるんじゃないわよ!」


 りんごは額に怒りマークを大きく作った状態で喚き散らした。

 さっきまであった機嫌も、瞬時に斜め四十五度は傾いてしまった。


 ……が、しかし。


「別に、残っても構わなかったんだぞ?」


 いきなり真剣な眼差しを向けて答えたみかんの言葉を耳にし、りんごはちょっとポカンとなる。


「随分と殊勝な言葉を言うものねぇ? どうしたのかしら? 私の事を心配してくれているの? あはは! これは、明日はきっと天変地異よ!」


「茶化すな愚妹。みかんさんにだって家族はいる。いよかんがみかんの孫だと言う事はお前だって知っているだろう?……だから、みかんなりに分かっているんだ。家族の大切さが」


 からかい半分に笑って答えたりんごに、依然として真剣な顔を崩す事なく声を返すみかん。


 故に、りんごの表情も大きく変わった。


「……そうね? 腐れキノコの言う事はごもっともよ? 私もね? パインとココナッツの二人と一緒に居たいと言う気持ちがあるわ? だって、私の娘ですもの……目に入れても痛くない程には可愛いし、可能な限り近くで見守って上げたい……困った時にすぐ助けられる様な所に居たい……そう言う気持ちはあるわ?……でもね?」


 りんごは、そこまで答えると視線をみかんから虚空に変え……再び口を開いた。


「空は繋がっているわ? 別に同じ所に住んで居なくても良いじゃない……この世界が滅びない限り……空がちゃんとある限り、いつかまた会えるわ?」


「……りんご、お前……何か変な物でも食ったのか? そんな臭い台詞を言うキャラじゃないし……?」


「どーゆー意味よ!」


 割と本気で心配そうな顔になって言うみかんに、りんごは再び『イラァッ!』っとした顔になって叫んでいた。


 そこから、地味に不服そうな顔になりつつも声を吐き出して行く。


「子供は、いつか親離れする物よ?……それが、今だったと言うだけの話。寂しくないと言えば、単なる私の強がりかも知れないけれど……反面、親としては嬉しい所もあるの。だから、これで良いのよ」


「……まぁ、お前がそれで良いと言うのなら、別に構わないが」


「私が良いと言ってるの。だからこれで、この話はおしまい!……それより、これからどうするつもり? もう、キータには用事はないわよね?」


 りんごは、半ば強引に話を終わらせる形で、会話のベクトルを変えて来る。


「ん〜?……特にはないかな〜? 強いて言うのなら、トウキ帝国の外れにあった高難度ダンジョンが復活するから、そこに行ってみるのも悪くない〜?」


 みかんは、少し考える様な仕草を作ってから、りんごの問い掛けに答えてみせる。


 実際問題、みかんも深く考えてはいない。

 そもそも、みかん達に主だった目的なんぞ、最初からないのだ。


 別に、勇者と言う訳でもなし。

 特に、英雄と言う訳でもなし。

 特段、大きな大義だってない。


 世界をフラフラと漫遊しながら、気楽に今をエンジョイしながら旅をしつつ、一攫千金を狙っている。


 最初から行く当てもなく、目的もなく……世界に存在しているだろう秘宝を求めて彷徨さまよう、名もなきトレジャー・ハンター。


 それが、みかん達なのだから。


「本当にアンタ達って計画性がないのね……やれやれだわ? 私がついて居ないとダメね? 根本的に行き当たりばったりな生活ばかり送っていたら、ダメな人間になっちゃうわよ?」


 りんごは眉間に皺を寄せてぼやく。


 すると、みかんは不思議そうな顔になり、小首を傾げてから声を返した。


「何を今更〜? そんな事は、みかんのパーティーに入った時から決まってたじゃないか〜? そもそも、計画とか美味しい? ねぇ? 美味しいの?」


「……はぁ……ダメだわ……もう、ダメダメよ……こんなんじゃ行けないわ? 今後は、私がバッチリきっちり綿密なスケジュールを作ってあげる! 不毛で非効率な旅なんて許せないんだから!」


 しれっと無計画な旅である事を口にしていたみかんに、りんごは恐ろしくいかめしい顔を作っては、おもむろに断言してみせた。


 その後、みかん達の旅が、計画性のある有意義な旅になったのかと言うと……実はそ〜でもなかったりするのだが、余談だ。


 何はともあれ。


「ともかく、今日の所は近くの宿屋ホテルに宿泊ね? チェックインを済ませちゃいましょ?」


「……およ?」


 りんごの言葉に、みかんは再び小首を傾げた。


 地味に可愛く小首を傾げていた。

 何だか、みょーにイラッ! っと来る態度だった。

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