破滅の女神とは【25】
「メチャクチャ軽いな……」
余りの変わり身の早さに、ミナトはつい面食らってしまった。
ミナト的に言うのなら、今住んでいる場所に愛着はないのか? と、リオに言いたくなってしまうレベルだった。
「だって、だよ? この家に良い部分なんてある? 無いでしょ? 私だってさ? 本当はさ? 同じクラスの友達とかを自宅に招待したいんだよ? だけど、こんなじゃない? 恥ずかしくて誘えない訳だよ? 少なくとも、自宅の話になってマウントを取る事は出来ないし? むしろ、いじられる原因にもなるじゃないっ⁉︎ だから全面的に賛成!」
「……そ、そうな……」
しかしながら、再び答えたリオの言葉に、ミナトは何の反論も出来ずに、頷く事しか出来なかった。
実際、現状の自宅は荒屋以外の何物でもない!
それ以外に表現する言葉が、果たして他にあるのだろうかっ!
いや、無い!
それって、単純にボキャブラリーが少ないだけなんじゃないの? と、ツッコミを喰らいそうな話ではあったのだが……ともかく、リオもリオで、この自宅にはある程度の妥協と不満を持っていたと言う事だけは分かった。
「……だけどさ? お前の友達って、学校の近所に住んでいるんだよな?……お前の自宅に来るだけの為に、わざわざ来る物なのか?」
「学園寮に住んでいる生徒の中には、同じキータ市街地に実家がある人も居るんだよ! 本当はその友達とかをわたしん家に誘いたいな〜? って気持ちは前々からあったんだけど……こうじゃない? 何処のスラムですか? って感じの自宅でしょ? ボロボロで汚いし、狭いし、お兄ちゃんは馬鹿だし……ほらね? 良い所が一つも無い!」
「最後だけは、引っ越しをしても同じだと思うんだが?」
苦々しい顔のまま、口早に捲し立てて来たリオに対し、ミナトは地味に苦い顔になってぼやきを返す。
自宅の事を思い切りディスって来た事に関しては、百歩譲らないでも無いのだが……その中の一つに『お兄ちゃんは馬鹿』と言う、住宅事情とは全く関係のない話まで出て来た為、地味に腹立たしい気持ちで一杯になっていた。
最後のは単なるやっかみでしかない。
何なら、単純にリオが言いたかっただけ。
「ともかく! そう言う訳だよ! これで立派な屋敷とかになったらさ? 私も同級生とかに自慢出来るし? ホーム・パーティとかも出来るしさ?……私、そう言うのが夢だったんだよね!」
「……な、なるほどなぁ……」
何やら、虚空を見つめるかの様な視線で、うっとりした顔になりながら答えるリオに、ミナトは一応の相づちなんぞを打ってみせた。
ミナト的な本音を言うのであれば、自宅なんぞ狭くても構わない。
何なら、雨風を防げて、普通に寝る事が出来たのなら、それ以上は特に何も望まない。
三年間の冒険者生活は、言うなればサバイバル生活と言っても過言ではない。
仕事を受注している間は、テントや馬車の荷台で寝れたら良い方。
場合によっては、連日連夜で野宿する……なんて事だってザラだ。
そこらを考慮するのであれば、ちゃんと雨風を防げて、食事がゆっくり取れる上に、この上なく安全に眠る事が出来る場所であるのなら、ミナト的には十分過ぎる環境ですらあったのだ。
よって、こんな荒屋であったとしても、ミナト的には気楽に住める場所であり、特に何も困らない場所ですらある。
水道は通っているし、冷蔵庫(魔力で動いている)はあるし、照明もあれば風呂場もある。
ちゃんとお湯だって出るので、特段困る事だってない。
当然、自室にはベットもあるし……寝ている途中で夜行性のモンスターに襲われると言う危険性もない。
十分に快適!
ある意味、冒険者生活に最適化してしまったミナトだけに、自宅は荒屋でも満足だった。
しかし、これは冒険者とか言う、あまり一般的とは言えない仕事をしている人物だからこそ感じる感覚であって……一般的な考えではない。
リオも、こないだ冒険者として協会に入りはしたが……まだまだ、冒険者として馴染むまでには至らないだろう。
言うなれば、一般人と大差ないと言うのが、ミナトなりの考えだ。
まして、リオは女の子。
男のミナトとは、やっぱり美点が違う。
根本的な着眼点からして違うだろう。
そこを加味するのであれば……リオも、かなり我慢して来たのではないか?
こんな事を、ミナトは考えたりもした。
……結果、
「じゃあ、引っ越すか」
「むぐぐぐぅぅぅっっ!」
リオに思わぬ負担を掛けていた事実を知り、甲斐性なしな自分のせいで自宅に友達すら呼べない苦労があった事実を知ったミナトが、やんわりとリオの言葉に賛同した所で、パインの呻き声みたいな物が、周囲に大きく響いた。




