破滅の女神とは【23】
「あはははは! そ、そうよね? 助かって良かったよね? うん! 私も心からそう思っているわ!」
直後、ひたすら必死になってミナトへと叫ぶココナッツの姿があった。
地味に笑っているのは……きっと、あわよくば笑って誤魔化そうとしているのだろう。
……このしたたかさは、何となくパインに通ずる何かがあった。
故に、ミナトは思ったのだ。
やっぱり、ココナッツさんも……パインとあんまり変わらないかも。
取り敢えずは、パインの様に露骨なしたたかさが、全面に出ていない分だけマシ……と言う事にして置こう。
そして、なるべく関わらない様にしよう。
面倒な女神の相手は、一人だけで十分だと思ったからだ。
「結果的に、俺を殺しそうになってしまった事は……まぁ、事故って事で良いです。そもそも、俺は冒険者で……かつ、ダンジョンに潜っていたんですからね? 自分の命をベットして仕事を熟すと言うのは、冒険者の基本ですし……そこをあれこれ言うつもりもないです」
……でも、二度とやらないで欲しいな。
ミナトはココナッツへと答えた後……心の中で付け足していた。
「えっ? 事故とはいえ……あなたの命を脅かしたと言うのに、それすらも簡単に許してくれると言うの? 事故ではあったけど!」
簡単に許した側面には、あんまりココナッツとは関わりたくないから……と言う感情が存在していたけど、ココナッツはミナトの言葉を耳にして『じぃぃ〜んっ!』と感動していた。
……ちょっと大袈裟な態度にしか、ミナトには見えなかった。
そして、ちゃっかり『事故』と言う単語を二回言っていた。
ああ、やっぱりこの人もパインの同類なんだなぁ……と、地味に実感するミナトがいた。
だからだろう。
「ええ……もう大丈夫です。気にしなくても構いませんよ? そんな訳ですから、女神・ココナッツ様……今後もキータを豊かにする為に、頑張ってくださいね!」
ミナトは快活な笑みのまま、サムズアップした。
厳密に言うと、半ば強引に会話を終わらせようとしていた。
つまり、もう関わらないで置こうと思ってた!
しかし、そうはならなかった!
「やっぱりミナトは心が広い……ああ、まるでアダムがこの世に再び転生したかのよう……ううん、違う。アダムはミナトとして『私の前に』再び復活したんだ!」
感情が良い感じに盛り上がっていたココナッツは、頬を高揚させた状態のままミナトをジッ……と見つめ、瞳を潤ませて行く。
その姿は『恋する乙女!』の教科書と形容しても、過言ではない!
「……へ?」
ミナトはビミョーに口元を痙攣らせながらも、軽く後退りする。
内心では思った。
……あれ? これは、なんか……自分の思っていたシチュエーションと違うぞ? と。
「むがーっっ! むごぉぉっっ!」
直後、ココナッツに口を封じられていたパインが、彼女の胸元で思い切り暴れていた。
見る限り、かなり本気で足掻いている様にみえる。
しかし、本気の抵抗をみせるパインの動きを、完全に力で押さえ込んでいるココナッツの姿があった。
この光景を見て、ミナトは地味にギョッ! っとなる。
パインが作中で怪力を見せるシーンはなかったのだが……実は、日常生活の中で地味に力持ちな行為を、しれっと見せていたりもする。
力自慢のミナトであっても、パインの怪力っぷりには舌を巻く。
リビングの机を掃除するのに、右手でヒョイっと机をずらしたり……大人が二人でやっと持ち上げられるまでの重さがあるソファを、これまた右手で普通に浮かしてしまう。
その気になれば、キングサイズのベットだって片手で持ち上げる事が出来るだろう。
まさに人間を超えた……超人レベルの腕力を持つ女神様だった。
だがしかし……人間の力を大幅に凌駕した、途方もない腕力の持ち主であったパインが……完全に力で押さえ込まれているではないか!
ジタバタと、みっともなく足掻く物の……ぎゅぅぅぅぅっっ! っと押さえられているパインは、ココナッツの腕から逃れる様子は微塵もない。
それだけに……ミナトは思った。
ヤベェ……このおねーさん、人間じゃねぇ……。
実際問題、純粋な人間ではなかった。
同時に思うのだ。
ココナッツさんに逆らったら、マジで殺される!
ミナト的に言うのなら、破滅の女神であろうとなかろうと……ココナッツは脅威以外の何者でもなかった。
そんな……内心で思い切りビビり捲るミナトがいる中、
「ミナトには、一つ言わないと行けない事があるの」
高揚した頬を上気させ、愛情のこもった声質のままココナッツはミナトへと口を開いた。
「な、ななな……なんでござましょーか?」
ミナトは咄嗟に返事をして見せる。
でも、完全にビビっていたので、言葉がおかしな事になっていた!
まるで、恐喝喰らった哀れな中学生みたいな顔になっていた!
良く見ると、後ろの方でリオが笑っていた!
困ったミナトを見て、楽しんでいた!
そして、助ける様子は全くなかった!
やっぱりリオちゃん、恐ろしい子!




