破滅の女神とは【22】
本日のミナトは、パインのお陰で散々な出来事のオンパレードだった。
朝からいきなり家出したかと思えば、今度は神々の親子喧嘩に巻き込まれそうになって、生きた心地がしない状況がひたすら続き……最後は最後で、女神様の熱い……熱過ぎて意識が遠のいてしまうまでの抱擁を喰らい、敢えなく失神。
こんな思いは二度とゴメンだ! と、本気で叫んでしまえる程度には惨憺な一日だった。
そんな、最低な一日を作り出した立役者こそがパインだったりするのだから……高笑いなんぞされた日には発狂モノである。
てか、事実ミナトは発狂状態になってパインへと喚き散らそうとしていた。
……が、しかし。
「パインを責めるのであれば、私を責めて欲しいの……事の発端を作り出したのは、間違いなくこの私なのだから……」
ミナトの怒りが絶賛大爆発する寸前の所で、パインとミナトの間にココナッツが入り、必死で止めて来た。
「……はは……そ、それはそうかも知れないけど、ココナッツさんがそこまで責任を感じる必要はないですよ? この野良女神が調子に乗っているのはココナッツさんのせいではないですし……」
素早く間に入って来たココナッツに、ミナトは思わず苦笑混じりになって声を返す。
ただ、ココナッツの言い分も、決して分からない訳でもない。
破滅の女神になるかも知れない……と言う理由だけで、パインを一方的に責めた事から、この騒動は始まりを迎えていたからだ。
確かに、かつてのパインは怒りで自我を崩壊し……辺り一面を死の大地にしてしまった事があったのかも知れないが、だからと言って今回もまた同じ結果になるとは限らない事実もまた、そこに存在していたからだ。
極論からすれば、ココナッツはちょっと過剰に反応してしまった……と、判断する事だって出来なくもない。
「ココナッツもこう言っている事ですし、ここは素直に反省して貰う……と言う事で、今回の話は終わりにしちゃいましょー! ああ、パインさんってば優しい!」
……だけど、やっぱりミナトの焦点は、今のパインが見せる態度にあったりもする。
事の発端を作ったのはココナッツ。
ここは、ミナトも認める。
だから、素直に『ごめんなさい』と謝って来ている。
ここも、ミナトは理解する。
例え女神であろうと、自分が間違っていた事をしたのなら、その過ちを認めてしっかりと謝罪する姿は、ミナトとしても見ていて清々しいばかりだ。
故に、ミナトはもうココナッツを許している。
ごめんなさい……この一言が貰えるのであれば、もう他に欲しい物もない。
「それにしても、ミナトさんは優しいですね〜? そもそも、ですよ? 一番最初に私とダンジョンで出会った時に謎のモンスターが、ミナトさんを殺そうとしてたじゃないですか?……あの魔導人形を操っていたのって、ココナッツ……ふぐぅっ!」
だけど、ちょっと不穏な話が混じっている様な気もするな?
「あはは! ちょっと、パイン! なんか勘違いしているみたいだけど? あの魔導人形はパインだけを狙う様に作った特殊な物で……まさか、ミナトさんまで狙うとは思っても居なかったのよ! どこでどんな風に、調整を間違えちゃったのか……?」
……いや、これ……ごめんなさいで済む話なのかな?
「……なぁ、パイン? その話を、もう少し詳しく教えて貰っても良いか?」
ミナトは眉を地味に捩った状態のまま、パインへとそれとなく尋ねた。
一応、顔では笑みを作っていたんだけど……当たり前の当然の様に、目は全く笑ってなかった。
「その……ね? あれはね? 事故! 本当に事故なのよ! ちょっと……その、私もね? もし、近くに冒険者と言うか、発見者が現れたら……口を封じても構わない……かな? 的な事は、魔導人形へと命令はしてたんだけどねぇ?」
ミナトの問い掛けに答えたのは、パインの口を全力で封じていたココナッツだった。
額には、嫌な汗がドバドバと流れ……『私はとっても焦ってます!』と言う態度を、ひたすら露骨に作り出していた。
挙げ句、必死の言い訳とも形容出来るだろうココナッツの言葉も……ミナトの感覚からすれば、思い切り大概であった。
つまる所が、
「あの化け物は、ダンジョンで迷った冒険者が、間違ってパインを起こさない様にする為にココナッツさんが作った魔導人形だったのかよ……」
ぼやき声にも近い声音で答えたミナトは、ビミョーに遠い目になってしまった。
ポイントは、近付く冒険者がいた場合は、そのまま口を封じても構わない……と言う所だ。
あの当時のミナトは、必死になって逃げ出し……どうにか生き延びる事が出来たのだが……場合によっては命を落としていた可能性すらあったと言う事になってしまう。
「本当……生きてて良かったよ……」
ミナトは、げんなりした顔になって毒吐きを入れた。




