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破滅の女神とは【19】

 他方……再び、視点をミナト達に映すと、


「マジで……いや、本当にマジで勘弁してくれません? そろそろ……俺、見えたらヤバい川のせせらぎが聞こえて来たんですけど……っ!」


 今にも口から泡を吹いて卒倒してしまい兼ねないミナトの姿があった。


 ……と言うか、意識は既に朦朧としていた。


 ああ、駄目だこれは……もう、意識を保てない……ヤベェ、これ……本気で死ぬんじゃね?……とかなんとか、薄らいで行く意識の中、ミナトは胸中でのみ呟いていた。


 途中までは、パインとココナッツと言う、太古の時代から互いに育って来た二人の女神が仲直りをすると言う、近くにいたミナトも『良かったな?』と、祝福の言葉を紡いでしまう程度にはハートフルな空気で溢れていたと言うのに。


 気付けば、内臓を死ぬほど強烈に圧迫され、意識が朧気おぼろげになってしまうのだから……まさに、一寸先は何が起こるか分かった物ではない。


 ……と言うか、これはちょっと予測しろと言う方が難しいのではっっ⁉︎


 正直、これが原因でくたばったのなら、絶対にパインの枕元に化けて出てやるからな!……と、痛烈に胸中で絶叫していたミナトは、間もなく完全に薄弱化して行く意識をゆっくりブラックアウトして行くのだった。




            ◀︎◀︎◀︎◀︎◁




 数時間後。


「……マジで死ぬかと思った……」


 ココナッツに情熱的な抱擁を受け……更にパインが万力染みた勢いで引っ張った事で、危うく内臓破裂を起こしそうになったミナトの意識が回復したのは、ボチボチ夕暮れに差し掛かった頃であった。


 自宅にある自室のベットまで運ばれたミナトは、しばらく安静にされた状態で寝かされ……その数時間後となる現在、ようやく意識を回復させてはベットからムックりと起き上がるミナトの姿があった。


 内心では思う。


 ど〜して、こ〜なった?


 訳が分からない。

 

 ミナトの記憶が確かであるのなら、パインは恋愛感情が封じられていた筈だし、ココナッツはキータの伝承になっている女神様だった筈。


 歴史のお勉強が苦手だったミナトの学力だと、そこまで詳しくは知らなかったんだけど……偉い女神様だって言う事は分かる。

 つまり、その程度の知識しかなかった!


 歴史は苦手……とか言っているけど、実は他の教科も苦手のミナトらしい知識量であった。


 流石は妹にすら『私のお兄ちゃんは、世界トップクラスの馬鹿!』と、にこやかな笑顔で飄々と言われるだけはある。


 あるんだけど……ミナトの馬鹿レベルに関しては今更なので、脱線はここまでにして置こう。


 ……ガチャッ


 その時、自室のドアが開いた。


 ドアを開けたのは、リオだ。


「お兄ちゃん……起きてる?」


「ああ……起きてる……と言うか、さっき起きた」


 ドアを開けたかどうかと言う所でやって来たリオの問いかけに、ミナトはちょっとだけ苦い顔になって声を返した。


 別段、リオが悪いと言う訳ではなかったのだが、ミナト的には不本意な気絶の仕方をしていた為、あまり良い顔をする事が出来なかったのだ。


「思ったよりも元気だね?……良かった」


 ドアを開け、室内に入って来たリオは、ベットから上半身だけ起き上がらせているミナトの姿を見て、少しホッとした声を吐き出す。


 リオとしても、ちょっと心配していたのだ。


 本日は平日であった関係上、学校へと向かわなければならなかったのだが……ハッキリ言って、学校に行ける状況ではなかったリオは、そのまま自宅に引き篭もる形を取っていた。


 ミナトの性格を知っていたリオだけに……自宅から消える様に居なくなったパインを追い掛けるのは、誰よりも容易に予測する事が出来た。


 ……そう。


 それは、とっても簡単に予測する事が出来た。


 ミナトはバカが付くまでのお人好しだからだ。

 特に、弱い立場の人間を助けたくなる。

 きっと、これはもう……ミナトの性分なんだろう。


 現にリオだってそうなのだ。

 リオはミナトの妹だったから……と言うのもあるのだろうが、その根本にあるのは『困っている相手を見過ごせない』と言う心理だ。


 更に言うのであれば『助けられるのは自分以外に居ない』と言う条件に弱い。


 場合によっては、思い上がりも甚だしい場合だってあるのだが……極論からすれば、他に頼れる存在が居ない、弱い立場の人間を放って置けない性質を持っている。


 そうなれば……ミナトがパインを助けるのは必然だったのだ。


 故に、リオは切ない気持ちで一杯になってしまう。


 ミナトの性質を理解しているから……だからこそ、焦燥感で一杯になってしまうのだ。


 ……そして、思う。


 ミナトは、今のリオを……パインを突き放す様な態度を取った自分と言う存在を、良くは思っていない……と。

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