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破滅の女神とは【16】

「……ミナトさん」


 パインは、大きく目を見開く。


 それは、パインにとって予想外の態度であり……想定外の行動でもあった。


 まさか、ミナトが自分を庇う様な態度をとって来るとは思わなかった。


 同時に、胸がドクンッ!……と、跳ねる。


「本当に……変な所で格好付けるんだから……」


 か細く呟いたパインの瞳には、じんわりと涙が滲んだ。

 

 今なら、分かる。

 ……否、かつての自分は分かっていた事かも知れないけれど……でも、再びそれが『分かる様に』なった!


 結局、パインは……かつて、イヴと呼ばれていたパインが苦しい時は、必ずアダムが助けてくれた。

 例え、どんなに劣勢であったとしても。

 場合によっては、自分の身に大きな危険が発生しても……尚。


 だから、あの当時のイヴは……パインは、アダムを……ミナトを心から愛したのだ。


 それは、遥か悠久の彼方に存在した、化石の様な古い古い追憶。

 風化どころか、完全に化石になっているんじゃないのか?……そうと、嘯きたくなるまでに遠い遠い追憶の彼方に存在していた、かつての熱い感情。


 太古と形容出来るだろう熱情が蘇った今……パインは、自分を助けようと必死で身体を張ってみせるミナトの姿に感涙が止まらなくなってしまった。


 結局やっぱり……格好良いなぁ……くそぅっ!


 普段のミナトを知っているパインだけに、男前な態度を取るミナトがいても素直に『格好良い!』だなんて、口にしたくない!

 

 ……でも、格好良い!

 ちょっと悔しいけど……認めるしかない!


「……やれやれ。変な所で見せ付けてくれるわね?……はぁ」


 予想以上に勇敢な態度を見せて来たミナトと……その姿を見て、瞳に涙を浮かべていたパインの二人がいた所で、りんごが妙に興醒めしたかの様な口調になって嘆息する。


 その直後、発動途中だった超絶水流魔法エグジクリィ・ウォータをキャンセルした。


 同時に、これまであった大津波みたいな水が……まるで嘘の様に消滅して行く。


「ここでアンタ達ごと、水流に飲み込んでやっても良かったんだけど……そんな事をしたら、今度こそ本気でパインやココナッツに毛嫌いされちゃうだろうしね……悪役にはなりたくないのよ? 私も」


 ちょっと根負けしたかの様な口調で、りんごはパインとミナトの二人へと答えて行った。


「……はは、そうですよね……はは」


 りんごの言葉に、ミナトは地味に渇いた口調で声を返す。


 きっと、りんごにとっては単なるお仕置きでしかなく、そこまで深い意味はなかったのだろう。

 軽い感覚で娘に道理を教えると言う名目で命懸けのとばっちりを被るミナトからすれば溜まった物ではない。

 現に、りんごの選択肢の中には、このままミナトごと大津波を発生させて流してしまおうと言う意図が存在していた模様だ。


 もちろん、そうなったらミナトの命なんて風前の灯に過ぎないだろう。

 思いとどまってくれて、本当に良かった……。


「ココナッツ!……大丈夫っ⁉︎」


 他方のパインは、すぐ真後ろ辺りに倒れていたココナッツの元へと向かう。


 破滅の女神と化してしまったココナッツだけに、怒りで自我が崩壊していて、会話にもならない……と、パインなりに予測していたのだが、


「……あ、あぁ……アダム……アダムがいる……生きてた……生きてたんだ……」


 その怒りも徐々に収まり、今では自我を取り戻しつつあった。


 この姿にパインは驚いた。

 一度、崩壊した自我は、早々簡単に治る物ではない。

 精神崩壊してしまった人間が、物の数分で元に戻る事などない様に。


 だが、ミナトの無事を知った事で、ココナッツの心に大きな変化の兆候が見られた。

 そして、自分を庇う様に前に出てりんごへと声を発してくれた辺りから、自我が徐々に回復して行ったのだ。


 これまで血走った目をしていた瞳も……今では穏やかで理知的な瞳へと変化している。

 このまま行くのなら、元の精神状態に戻るのも、時間の問題であろう。


「ココナッツ! あなた、ちゃんと会話が出来るの? 凄い! 私は、会話が出来る様になったのは、お母さんが色々と私の感情を封印してからだった! やっぱりココナッツは私と違って、優秀な女神だね!」


 穏やかな瞳へと変化して行くココナッツの姿を見て、パインは無条件で褒め称えた。

 ちょっと卑屈が入っているんじゃないのか?……そう思えるまでに、太鼓持ちにも近い勢いで褒めていた。


「……パイン、それは違うわ……」


 すると、ココナッツはパインへとゆっくりと声を返した。


 そこからニッコリと笑みのまま、再び口を動かして行く。


「まずは、あなたに謝らないと行けない。お母様は言ったわ?『パインと私は一緒だ』と。その事実を、私は大きく拒絶した。私はあなたの様な存在とは大きく掛け離れた女神だ……決して、破滅の女神であるパインと一緒であろう筈がない……そう思い込んでいた」


 淡々と答えるココナッツは、そこまで言うと俯いた。

 

 そして、ポツリと言う。


「……でも、違った」


 ココナッツは、か細い声音を弱々しく吐き出した。

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