破滅の女神とは【15】
ミナトが、誰からの共感を得ないだろう、心の叫びを上げまくっていた頃……
「さぁ、これでトドメよ? 精々……死なない事を祈りなさい!」
……なんか、りんごが恐ろしい台詞を口にしていた。
あなたは、単純にココナッツへとお仕置きをしていただけだったんじゃないのですかねぇ?……と、思わずツッコミを入れたくなってしまう様な台詞を、臆面もなくほざく。
そして、
超絶水流魔法!
両手を上げて発動させて来た魔法もまた、ココナッツを本気で殺しに掛かっている様な魔法だった。
発動の瞬間、りんごの背後に巨大な滝みたいな水流が発生する。
規模もべらぼうに大きい。
もはや、大津波だ!
他方のココナッツは、全身火傷状態になっていて、立ち上がる事すら出来ない!
虫の息と述べて良いまでに完膚なきまで叩きのめされた状態になっていたココナッツは、りんごの発動した魔法を防ぐ事も逃げる事も出来ず……ただただ、ひたすら倒れた状態で、ガタガタと震えるしか出来なかった。
……その時だった。
「待って下さい! お母様!」
超絶水流魔法を発動させ、ココナッツに狙いを定めた直後、倒れて動く事が出来なかったココナッツの前に、パインが立ちはだかる形で空間転移して来た。
余談だが、ミナトも一緒だ。
「……って! オイッ! 俺はただの人間だぞっ⁉︎ お前とは身体の構造からしてデリケートに出来てんだぞっ! マジで死ぬからっ⁉︎」
突発的に超絶魔法の射程圏内にやって来てしまったミナトは、瞳から滝の様な涙を流しながらも、パインに訴え掛けていた。
ミナト的には、全く生きた心地がしない!
どうして、自分はこんなデット・オア・ライブな死線の最中にいるの言うのか?
これだけでも理不尽極まりない話だと言うのに、
「うるさいですね! さっきも言ったでしょう? 死ぬ時は一緒です!……と!」
更に輪を掛けた理不尽を押し付けて来たパインに、ミナトのフラストレーションは爆発寸前の心境にまで陥っていた。
「……どきなさい、パイン。これはココナッツへのお灸なのよ? あなたは受ける必要など無い物なんだから」
「いやです! ココナッツは確かに私を悪く言いました! そして、破滅の女神である私を酷く糾弾もしました!……あれ? それなら、お仕置きされても良いかも知れない?」
りんごの言葉に、パインは諭されそうな顔になっていた。
一体、何をしたかったと言うのだろう?
「……いや、違います! そうではないのです、お母様! ココナッツと私は同じです! ここで、ココナッツを見捨てたのであれば、私を糾弾したココナッツと私は同じ事をしたも同然だと思うんです!」
しばらく考えたパインは……そこから、一念発起する形で再びりんごへと叫んでみせた。
途中『……いや、それってパインの事情だろ? 俺、全く関係ないよね?』とかって感じの台詞を、パインの真横で言っているミナトの姿があったんだけど、軽やかにスルーされていた。
「……へぇ。そう? じゃあ、あなたも一緒に、私が作った水流の中に飲み込まれる……これで良いのかしら?」
りんごは、好戦的な笑みのままパインに答えた。
「……うぅ……本当はそれでも嫌です……凄く怖いですし……苦しそうです……でも、だけど、大丈夫! ミナトさんがいるから!」
「それはどんな理屈だよ!」
覇気のある声音で、胸を張って断言するパインに、ミナトがソッコーでツッコミを入れたのは、言うまでもなかった。
しかし、御無体なシチュエーションに大きなストレスを剥き出し状態で顔にアリアリとみせていたミナトは……間も無く気付いた。
パインの手が大きく震えていると言う事に。
……本当は、恐怖と不安で一杯になっていると言う事実に。
「………」
ミナトは無言になる。
素直に言うのであれば、パインの横暴さにはついて行けない。
文句だって、一つや二つでは済まないまでの不服が、ミナトの胸中にギッシリ詰まっている勢いだ。
だけど……思う。
本当はその場から逃げ出したい気持ちで一杯だったパインを見て。
「……ったく」
ミナトはつまらない顔になって、小さく舌打ちする。
確かに巻き込まれている事は甚だ迷惑だし、なるべくはやって欲しくない事ではある……あるんだけど、だ?
それでも思う。
怖がっている女の子を……目の前で不安そうな態度を見せている娘がいるのに、それでも全く助けないで、ただ不満をぶつけるだけで終わるのか?
そんな……クッソダサい奴で……良いのか?
答えは……当然、否だ!
「おい、パインのお母様とやら! アンタはもう十分にお仕置きをしただろ? そろそろお開きにしないか? きっと、ココナッツさんも十分反省したと思うしさ!」
顔を一気に引き締め、真剣な顔になったミナトは、パインの前にズイッ! っと出る形を取ってから、眼前で超絶水流魔法を発動しているりんごへと叫んでみせた。




