破滅の女神とは【14】
「お前だけにしとけよ! 俺まで巻き添えにすると言う事に、良心の呵責は生まれて来ないのかっ⁉︎ お前だって女神の端くれだろっ⁉︎ 少しぐらいは清い心と慈悲深さがあって良いだろうぉぉぉぉがぁっ⁉︎」
「あ〜……何を言っているのか分かりませんねぇ? ちょっとパインさんの耳は調子が悪いみたいです。これは後で耳鼻科に行かないと行けませんねぇ?」
「耳鼻科じゃなくて脳神経外科に行って、脳ミソを観て貰って来ぉぉぉぉいっっ!」
ミナトとパインの二人による、見苦しい雑言の応酬が、ひたすらみっともなく展開されている中、
超絶火炎球魔法!
ボフゥゥゥゥゥゥゥゥッッッッ!
バカみたいに巨大な火炎の球が、りんごの頭上に生まれていた。
大きさは軽くりんごの十倍以上はある。
しかし、ポイントはその大きさではない。
大きさだけを言うのであれば、りんごが今発動した一つ格下の魔法『超火炎球魔法』よりも小さい。
よって、威力的には、格下の魔法でもある超火炎級魔法の方が高いんじゃないのか?……そう思われてしまうかも知れない。
しかしながら、もちろんそんな事はない。
大きさは多少小さくなっているが……生まれて来た火球の中に含まれる魔力の密度は、ハッキリ言って段違いと述べても過言ではない。
魔法とは、発動した時の外見(物理的な物)ではなく、その時に含まれている魔力の濃密度によって大きく左右されるのだ。
よって、外見的には地味になったとしても、その威力は凝縮された魔力の濃密度の高さによって格段に変わってしまう。
果たして。
「……うぅ……ぐぅ……ぅぅっっ!」
超絶火球魔法が眼前にまで押し寄せて来たココナッツが、咄嗟に魔導防壁を発動するが……超高密度の魔力によって、アッサリと防壁を突破されてしまう。
「うがはぁぁぁっっっ!」
発動した魔導防壁の上から、致命的なダメージになるだろう一撃を受けたココナッツは、業火の炎に包まれる形で悲鳴を上げながらも吹き飛んで行った。
「……パインの母さんって、破滅の女神にすらゴリ押しで通せるんだな……」
ミナトはポカンとしながらも、パインへとぼやきを入れた。
正直、至近距離であったが故に、パインが張った魔導防壁がなかったのなら、今頃はりんごの作り出した超絶火炎球魔法のもたらす予熱で肉体が骨まで蒸発していたであろう。
何から何まで規格外の魔法である。
そもそも、野良女神の母親と言う時点で、人間ではないとは思っていたが……。
「これが、神々の戦いってヤツなんだな……」
ミナトは遠い目をしながら声を吐き出した。
やってる事は、単なる親子喧嘩程度のレベルなのだろうが……相手がどちらも神クラスとなれば、もはや最終戦争にだって匹敵する。
単なる第三者的な人間……ミナト辺りからすれば、傍迷惑と言う次元を超え、狂気から来る悲劇にすらなりかねない。
そして、親子喧嘩は野良女神にも向けられるのだから、
「……俺、まだ死にたくないんだけど? 綺麗なおねーさんとイチャラブする人生計画とか、全然出来てないんだけど?」
その近くに居る事を強制されたミナトの命運は……尽きたも同然と言えた。
「心外ですね、ミナトさん! 綺麗なおねーさんなら、あなたの近くにいるじゃないですか! 今もガッチリと抱きしめあって、イチャラブしてるではありませんか! もう、既にミナトさんの人生プランは達成してます! やりましたね! ミナトさん!」
「綺麗なおねーさんとか、自分で言うんじゃねーよ! それに、イチャラブとかしてるか? ただ単に、お前が俺を拘束してるだけだろうがっ! 言葉的に大きく違うんだよ! 雰囲気とかシチュエーションとか、全然違うだろ!」
「え? シチュエーションにも拘るのですか?……もう、ミナトさんったら、ロマンチストなんだから! パインさんは現実主義者ですから? いつでも何処でもミナトさんがいれば、ハッピーですよ! ああ! なんて経済的なパインさん! 高いお店に連れて行けとかも言わない! あなたが近くに居るだけで良い! スマイル0マールが一番の贅沢! どうです? ミナトさん? パインさんに惚れましたよね?」
「惚れるか、アホッ! 状況を見て言え! つか、それの何処が現実主義者なんだよ! 話を聞いてる限り、何処にもリアリティーなんざねーじゃないかよぉぉっ!」
パインの言葉に、ミナトはひたすら悲嘆していた。
もう、この野良女神は、一体どんな神経をしていると言うのだろうか?
そして、もう駄目だ……おしまいだぁ! と、マジで思っていたりもする。
りんごが次の標的にしていたのはパインだ。
そして、超絶火炎球魔法によって黒焦げ状態になっていたココナッツを見る限り、後はトドメを指すだけの状態になっている!
このまま行けば……りんごがミナトごとパインに超絶魔法を浴びせ、見事なとばっちりと同時に三千世界へと旅立つ羽目になるのは必定!
なんでこんな事になるんだぁっ!
せめて、せめて……!
俺は、オーマの歓楽街にいるおねーちゃんと遊びたかったぁぁぁっ!
ミナトは内心で悲痛の叫びを、心からの咆哮と形容出来る勢いで放っていたが……内容が内容だけに、余り同情は出来なかった。




