破滅の女神とは【13】
パインとミナトの二人が、見苦しい攻防戦(?)を展開している中……りんごとココナッツの攻防戦も始まっていた。
……否、違う。
攻防戦ではない。
一方的な攻撃だ。
悠然としていたりんごの態度が、そのまま根拠として示されているかの様な……見事なワンサイドの展開を、至極当然の様に見せていたのだ。
自我のない、獣じみた状態になっていたココナッツが、攻撃対象をユニクスからりんごへと変え、襲いかかる勢いで拳を振るおうとするも、全く当たらない。
ヒョイヒョイ……っと、軽やかなフットワークで避けるりんごの表情には、太々しいまでに余裕の笑みが漏れていた。
きっと、戦っている相手側からしたら……ムカつく事、この上ない。
全く本気を出している様には見えなかったりんごは、
「さぁ〜て? どんなお仕置きが良いかしら? やっぱりここは、定番の『お尻ペンペン』が良いかしら?」
ココナッツに罰を与える方法を考えながらも、攻撃を全て避けていた。
もはや、実力の差は歴然である。
倒す気になれば、数秒を必要としなかったのではないだろうか?
それら一連の流れを見て、
「……まさか、こんな化け物が身近にいたとはなぁ……」
ういういが地味に苦い顔になっていた。
一応、ういういなりにりんごの実力が高いと言う事は知っていた。
みかんの妹だけに、反則レベルの実力を誇示していると言うのは、ういういの視点からするのなら、誰彼から聞くまでもない常識ですらあった。
しかしながら、ういういなりに予測してた実力さえも……更に更に大きく上まる、全てを超越した所にりんごの実力は存在していたのだ。
まさに、想像を遥かに超える実力だった。
それは、ういういだけではない。
「……マジか、参ったな」
近くにいた、リダも同じだった。
完全にノックアウトしてしまったユニクスを助ける為、埋没していた地面から掘り起こす形で助け出していたリダは、間もなく追い討ちを掛けて来るだろうココナッツを警戒した。
最悪の場合、近くにいたアリンが一時的に凌いでくれるだろう……と、予測しての行動ではあったのだが、どうやら追い討ちを掛けられる心配は、全くの杞憂に終わった模様だ。
……否、それ所の話ではない。
これまでが、単なるお遊び同然だと言わんばかりにりんごがココナッツの前に向かうと、圧倒的な実力差を見せ付けて来た。
これにはリダも舌を巻く。
素直に言うと……最悪の場合、リダは自分が動いて決着をつけようとしていた。
破滅の女神が持つ実力は、もはや大魔王にも匹敵する能力で……勇者の力を得たユニクスでさえ太刀打ち出来ないまでの力を誇示してはいたのだが……それでも、会長様と言えるリダの能力を以てすれば、そこまで苦労する事なく勝利出来ると、リダなりに確信を抱いてはいた。
……が、しかし。
破滅の女神には勝てる自信はあっても……正直、りんごには勝てる気がしない。
そもそも、戦う理由もない為、対戦する事はないだろうが……反面、そこはかとなく、劣等感にも似たような感情がリダの中に生まれていた。
「まだまだ、私も甘い……そう言う事なんだろうな」
リダは誰に言う訳でもなく呟いた。
世の中には、まだ……自分なんかよりも強い猛者が居る。
それなら……まだ、努力をする甲斐もあるし、必要だってある。
「いつか、りんごさんとも、戦ってみたい所だな……」
リダは……あたかもライバルを見るかの様な好戦的な瞳でりんごを見据え、軽く笑みを浮かべていた。
他方、その頃。
「決めたわ! ここは、オーソドックスに火炙りからの水責めにしようかと思うの? それで良いかしら、ココナッツ?」
ぽんっ! っと、手を軽く叩いてから言うりんごの姿があった。
ハッキリ言って『それで良いです!』なんて言う人間がいるとは思えないまでに、殺伐とした台詞をニコニコ笑顔で答えていた。
それら一連の流れを、少し遠くで見ていたミナトは、自分の背景を暗転させてから再び逃げようと試みる。
……もちろんパインがガッチリ掴んで離さなかった。
「ふっふっふっ! パインさん一人だけが苦しむなんて……そんな理不尽を認めると思っているのですか? もちろんミナトさんも一緒です! 道連れにしてやらないと気が済まないですからね! パインさんが!」
そして、パインとミナトの二人による、見苦しい戦いが第二ラウンドを迎えていた。
……本当に、この二人は何をやってるんだろうね?




