破滅の女神とは【10】
他方、その頃。
「なんだよ、これは……」
ミナトが唖然茫然となって、ユニクスとココナッツとの戦いを見据えていた。
ハッキリ言って、レベルが違い過ぎた。
パワーやスピードはもちろん、技のキレや威力が……おおよそ人間が出せる代物なのか? と、思わず口にしたくなってしまうレベルだった。
少なからず言える事は、破滅の女神と言う存在が仮に降誕していたのなら……キータと言う街は……否、国その物はアッサリと滅亡していたであろう。
三年間の冒険者生活をして来たミナトだけに、これまで幾度もの修羅場を迎えては、生死の境界線を乗り越えて来たが……ここまで段違いに無茶苦茶な能力を持つ相手を見た事がない。
ユニクスにしても、ココナッツにしても……仮に同等程度の能力を持つモンスターと遭遇していたのなら、今のミナトはとっくにくたばっていたと思えてならない。
恐らく、逃げる事すら出来なかっただろう。
いや、そもそも『逃げよう!』と言う意思を持つ事すら出来ないんじゃないのだろうか?
その様な思考を生み出す時間さえ与えられる事なく、冥府の門を開けてしまうに違いないのだから。
故にミナトは愕然とした面持ちで、ユニクスとココナッツの戦いを見つめていた。
「……世の中って、広いな……」
上には上がいる事なんて事は、今更誰彼に聞くまでもなく分かっていが……そこを差し引いても、ここまで大きな差がある事実を目の前で露呈されてしまうと……なんとも複雑な心境に陥ってしまう。
自慢にもなりはしないが、今のミナトが千人いても敵わない。
下手をすれば一万人居ても無理かも知れない。
……そして、その様な化け物じみた実力の持ち主が、現実として眼前にいる事に、ただただ……度肝を抜いてポカンと口を開ける事しか出来なかった。
「ココナッツは……もう一人の私です」
……と、そこでパインがミナトへと口を開く。
「……え?」
ミナト小首を傾げた。
言っている意味が分からない。
ココナッツと言うのは……恐らく、自我を無くしてしまった『始まりの女神』を指しているんだろうなぁ……と言う事は、ミナトなりになんとなく分かった。
外見もパインそっくりである所を加味するのであれば、パインとは双子の女神なのかな? 程度の予測だって、ミナトなりに無い知恵を絞り出して考える事が出来る。
しかし『もう一人の私』と言うのは、少し理解に苦しむ台詞だった。
「おいおい、パインさんよ……お前も、あんな魔王みたいな存在になるって言うのか? 冗談は顔だけにしてくれよな?」
ミナトはカラカラ笑いながら、冗談半分にパインへと口を開く。
この言葉に、パインは素早く怒っては、怒鳴り声をまき散らして来るんだろう……と、その時のミナトは考えていたのだが……実際には違った。
「冗談であれば良かった……私だって、笑って『そんな訳ないですよね〜!』って言えたら……良かったのです。本当に……そうであれば、どれだけ心が軽くなるか……」
答えたパインは、悲痛に顔を歪め……最終的には鳴き声になってミナトへと声を吐き出していた。
心が痛かった。
そして、怖かった。
一つ間違えれば……何かが違えば……破滅の女神として、ユニクスと戦っていたのは……パインであったかも知れない。
否……りんごが来なかったのであれば、パインが破滅の女神となっていた。
飽くまでも可能性の問題ではあったが、決して低い確率ではないのだ。
故にパインは心が痛んだのだ。
「パインさんには分かるんです……ココナッツだって、好きであんな姿になった訳じゃないと」
パインは瞳から、ポロポロと涙を溢して言う。
「そして、パインさんは怖いんです……自分の中にもココナッツと同じ……破滅の女神としての力が眠っていて……いつか、爆発しちゃうんじゃないか……と」
再度声を吐き出したパインは、カタカタと身体を震わせた。
破滅の女神としての力は、言うなれば核弾頭にすら匹敵する。
何かの拍子で、そんな物が暴発してしまったのなら……当然、周囲に居る者の命などなく、その肉体は秒を必要とする事なく灰塵に帰すだろう。
もちろん、そんな事をパインは望んでいない。
パインは、みんなと楽しく過ごしたい。
安寧とした穏やかな環境の中、笑顔の絶えない世界で一緒に共通の時間を過ごして行きたい。
……けれど、心に核弾頭を積んでいる様な存在が……いつ、周囲の人間に傷を付けてしまうか分からない自分が、果たして共存の道を歩んでも良い物なのか?
パインには分からなくなっていたのだ……。
そんな時だった。
「……っ⁉︎」
パインの瞳が大きく見開かれた。
理由は簡素な物だ。
ミナトが、パインを優しく抱きしめたからだ。
尚、ユニクスとココナッツの戦いは、リダ本編で書かれる予定です。
興味がある方はリダ本編で更新された時に、軽く目を通して頂けると幸いです。
……尚、みかん本編が掲載されている(2021年1月31日現在)では、まだ更新掲載日は未定なので……気長に待って頂けると幸いであります。




