破滅の女神とは【8】
その後、パインは散々ミナトに顎を鷲掴みにされ『絶対に言ってやる物かぁぁぁっ!』と、良く分からない不屈の根性を燃やし、最終的には『謝ったら負け』とか言う、謎の戦いを始めた顛末に、ごめんなさいと素直に謝ったらしいのだが……余談程度にして置こう。
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「やっと、みかんさんの出番が来ました!」
開口一番……無駄にハイテンションなキノコがしゃかりきになって叫んでいた一方で、
「あんたの出番はないわよ? 腐れキノコ?」
冷静なツッコミをしれっと口から吐き出すりんごがいた。
「ノォォォッッ! そんな馬鹿なっ! みかん本編じゃ、みかんさん出ないから……せ、せめてリダ本編だけでも無駄に出しゃばってやろうと言う、みかんさんの崇高な作戦は無駄だったと言うのですかっ⁉︎」
そこに崇高な物などなかった。
「何を訳の分からない事を言っているのか分からないけれど……リダに迷惑を掛けるのはやめておきなさい? 恥を曝け出すのは、私達だけで十分……ううん、根本的に迷惑だからやめて頂戴。それと、みかん本編も一部シンクロしているから、リダ本編だけじゃなくてみかん本編でもあなたの醜態が出て来るわ?……残念な事にね?」
そして、りんごは嘆息混じりに身も蓋もない台詞を臆面もなく答えていた。
確かにそうなんだけど、そうではなく。
「ともかく、そこで大人しくしている事ね?」
りんごは、話を強引に打ち切る形で『シッシッ!』っと、右手をプラプラさせてみかんを払うと、軽く前を見据えた。
その先にいたのは……怒りで自我崩壊してしまったココナッツと……勇者ユニクスの姿が。
ここに関しては、主にリダ本編で出て来る話ではあるのだが……みかん本編をメインに読んで頂いている方もいらっしゃるでしょうから、軽く端折り書きをして置こう。
デコピンの一撃により、キータの中心市街地から郊外まで吹き飛んでいたココナッツ。
そんなココナッツが再び中心市街地まで戻って来る前に、彼女の前にやって来たりんごは、傲慢な娘にお灸を据えるべく、お仕置きをしてやる……予定だった。
予定と形容したのは他でもない。
滑空魔法によってココナッツが飛んで行った方向へとやって来たりんごであったが、間もなくリダ達もやって来たからだ。
そして、今回の責任を取りたいと申し出た末に……ユニクスがココナッツと戦っている。
責任を取らせてくれ!……と言ったのはリダだったけど、責任を実際に取っていたのはユニクスだった。
地味に理不尽な話しかも知れないが……今回のリダは勇者のお供と言う立ち位置だったから……と言う、ちょっとした事情が側面にあったりもする。
簡素に言うのであれば、リダではなくユニクスが責任とって、勇者として破滅の女神と戦う!……って感じの内容に、リダがしていたのだ。
これに、ユニクスは思い切り非難の声を上げたんだけど……『ちゃんと真面目にやったらトウキに戻った後、一回ぐらいは一緒に買い物とかしてやらん事もない』と言うリダの言葉を耳にしたユニクスは『一回ぐらいは一夜を共にしても構わないんですね!』と、あさっての台詞を鼻血を噴射しながら叫んだ結果、リダに爆破された後、ココナッツと戦う事になって行くのだった。
かくして、りんごではなくユニクスが勇者としてのケジメを取る為に、ココナッツへと戦いを挑んでいたのだが、
「……くっ」
その戦況は、余り芳しくはない。
勇者としての能力を、新しく手に入れていたユニクスの実力は凄まじく……かく言う、滑空魔法によって飛んで行ったみかんにしがみ付いては、一緒に飛んで来たういういがユニクスの実力を見て驚いていた程だ。
正直、今のユニクスと戦ったのなら……勝てるかどうか分からない。
剣聖印を発動させて、どうにか辛勝……と言った所だろうか?
どちらにせよ、ういういの予想を遥かに凌駕した実力を持っていた。
……が、しかし。
「……とんだ化け物だな」
ういういは独りごちる。
勇者としての能力を得、新剣聖であるういういですら舌を巻くまでの能力を誇示すると言うのに……それでも、ユニクスの実力を優に上回るココナッツの姿があったのだ。
内心では思う。
……こんな化け物相手に無償で戦えと言われたら、どうしよう……と。
ココナッツの能力は、間違いなく世界トップ・クラス。
流石は破滅の女神と恐れられているだけはある。
怒りで自我を失った女神の実力と言うのは……まだまだ人間のレベルでは淘汰する事は、難しいらしい。
……と、その時だ。
「おい、ユニクス! お前! 遊んでんじゃないよ!『あの程度』の相手なら、そこまで苦戦しないだろ? 私なら『五分で倒せる』ぞ!」
イライラした顔になって野次を飛ばすリダの姿があった。
……どうやら、人間であったとしても会長級まで行くと、簡単に淘汰する事が可能らしい。
「リダさんには、絶対に喧嘩を売って行けないな」
ういういは、真剣な顔をして、剣聖らしからぬ台詞を口から吐き出していた。




