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破滅の女神とは【7】

「ああ、説得するのが面倒……もとい、話をする時間も惜しかったので、直接シリアさんの学校まで空間転移テレポートさせました」


 そして、やっぱりパインがやったと言う事を、本人の口から耳にする。


「……ああ、そう言う事な?」


 ミナトは地味に納得した。

 

 普段からツッコミ所満載な行動ばかり取る、アンポンタンの代名詞染みた行動を主とするパインだけに、ミナトも少し怪訝な表情を作っていたのだが、今回に関して言うのであればパインのやった事に間違いはなかった。


 事実、シリアは単純に純粋に、サボりたいだけ……と、ミナトの目には映っていた。


 実を言うと、ただサボりたいだけ……と言う表現は半分正解で半分は不正解だったのだが。


 露骨に分かり易いヤキモチを妬いていたパインを見て、シリアなりに脅威を抱いていた……と言う要素が存在していた為、半分は不正解なのである。

 まぁ、もう半分は『折角ミナトに朝から会っているんだから、今日はガッコーなんて行かなくても良いや♪』って気持ちだったので、完全なる不正解なのかと言えば、その限りでもなかったのだが。


 そして、シリアが空間転移魔法テレポートによって、結果的にミナトの前から消えてしまった側面には、パインの精神に復活した『恋愛感情』が原因と言える。


 正直……いきなり戻って来た感情に、パイン本人も動揺と困惑が隠せない。


 もうぅぅぅぅ……強烈な激情だ。


 同時に、かつてあったアダムとの記憶まで、セットで戻って来てしまったから……パインからすれば溜まった物ではない。


 素直に自分の気持ちを率直に述べるのであれば……ミナトの顔を見る事すら出来ない!


 ミナトの顔を見るだけで、顔から湯気が出て来てしまいそうだ!

 ミナトに自分の顔を見つめられるだけで……頭がおかしくなってしまいそうだ!


 そんな自分と言う存在が……感覚が、余りにも常軌を逸している為『落ち着け……落ち着くのです、パイン! 相手は誰? あのミナトさんですよ? 能無し陰キャのミナトさんですよ? 何をそんな、不自然に意識しているんです、私わぁぁぁっっ⁉︎』って感じの気持ちで一杯!


 これまでのミナトを知っているパインだけに、色々と否定したい気持ちで特盛なのだが……でも、だけど……それでもあらがう事が出来ない自分もいる。


「……ぐぅ……やっぱりミナトさんは卑怯です。私に幻覚魔法を発動させてます……そうじゃなかったのなら、ミナトさんがここまで格好良い人になんか見える筈がありません」


「それは幻覚ではないだろう? ちゃんと見ろ? お前の前に立っているのは……とっても眩しいミナトと言う美男子イケメンじゃないのか?」


「うぅ……やっぱり私は狂ってしまいました……これは、お医者さんに行くべきでしょうか?……ああ、自分が怖いです……なんで、こんな……こんな……美男子イケメンと勘違い出来る残念さを標準装備したミナトさんを見て、ドキドキするのでしょう……」


 パインは全力で悲嘆し、


「……しくしく」


 すんごぉ〜くわざとらしく泣き真似をしていた。


 瞳から涙は出てなかったし、大根役者張りの演技で『私は悲しい!』って態度を取った挙げ句、


「しくしく……36」


 最後は掛け算になっていたので、ただボケているだけと言う事で、ミナトは納得していた。


「まぁ、俺がどんな風に見えているかは知らないし、そこはそれで地味に興味があるが……それより、何より……お前は俺に何か言う事があるんじゃないのか?」


 地味に呆れた顔になっていたミナトだったが、言葉の後半辺りに表情を真剣な物に変えながら口を動かして行った。


「……え? 私がミナトさんに? あはは! そんなのある訳ないじゃないですか〜!」


「あるだろ? まずは普通に『勝手に出て行ってすいませんでした』だろ?……ったく、本気で何をやっているんだよ? お前は?」


「え? 私がミナトさんに言う事なんて、ありませんってば〜!」


「普通に惚けんじゃねーよ! 漫画ならコピーして、そのまま貼り付けてるんじゃないのか? ってぐらいに全く同じ顔と態度で、似た様な台詞をテイク・2するんじゃねーよっ!」


「え? 私がミナトさんに言う……むぎゅっ!」


 猛然とがなり立てるミナトの言葉に……しかし、パインはしれっとテイク・3をかまそうとしていたので、右手でパインの顎を鷲掴みにし、その口を塞いでいた。


 その上で、ミナトは額に怒りマークを付けた状態のままパインに言う。


「ご・め・ん・な・さ・い・! だろ! お前は! まともに謝る事も出来ないのか!」


「むがもごっ! もごごぉぉぉっ!」


 口を封じられたパインは、思い切り眉を釣り上げてミナトへと叫んでみせる。


 しかし、上手に口を動かす事が出来なかったので、何を言っているのかは分からなかった。


 多分、ロクな事は言ってないと思う。


 少なくとも、そんな顔をしていた。

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