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破滅の女神とは【6】

「いや、普通に笑顔で学校をサボる宣言をするんじゃないよ……優等生なんだろ?」


「別に、私は優等生って程、真面目な生徒じゃないから、大丈夫だよミナト? そもそも、胸を突かれて血をドバァァァッ! っと流してるミナトを放って学校になんか行けないよ? 見た感じだと普通に意識もある様子だけど……普通に考えたらその場で入院コースだよ? 学校なんて行ってる場合じゃないよ」


「……ああ、それなんだけどさ? これ……血じゃないと思うぞ?」


「……え?」


 ミナトの言葉に、シリアはポカンとなる。


 間もなく、パインが納得混じりの声を、ミナトとシリアの二人に出して来た。


「ああ、やっぱり血ではなかったんですね? まぁ、そうじゃないかと思ってましたが? すると、ミナトさんの胸から出てる赤い液体は何でしょうね?……トマトジュース?」


 そして、少し考える仕草を見せてから言う。

 一見すると、単なるボケで言っている様にも見えるのだが、きっと本気で言っているのだろう。


「うーん……どうだろ? 取り敢えず、赤くなる様な物を混ぜているだけの……水みたいな物、かな?」


「ああ、分かった! 絵の具か!」


 軽く胸元を触りながら言うミナトの言葉に、パインは『分かった!』って顔になって、再び答えた。


 それで当たっているのかどうか不明ではあったが、取り敢えずはミナトの鮮血などではない事だけは確かだった模様だ。

 

「そ、そうなのね?……よ、良かった」


 それら一連の話を耳にしたシリアは、地味に口元を痙攣ひきつらせながらも声を返した。


 密かに、ミナトの胸元にある赤い物が、ミナトの鮮血ではなく……出血の類いは一切していないとなるとミナトは完全無欠の健常者と言う事になる。

 言うなれば、赤いペンキを胸にくっ付けているだけと同じ……と言う事になる為、この様な状態で病院になんぞ行ったとしても『こっちだって暇じゃないんだからね!』と、逆に怒られてしまうだけで終わってしまうだろう。


 つまり、それは……


「……と、言う事で。シリアさんは安心して登校して下さい。ミナトさんは心身共に健康です! 綺麗なおねーさんを探してしまうまでに健常です! 後ろ姿が綺麗なおねーさんを見掛けてはさりげなぁ〜く追い越して、チラッ! っと顔を拝んでみたら、おねーさん『ではなかった』と言う悲劇を繰り返してしまうまでに健全な男子です! だから、早く学校に向かうべきでしょう。急がないと遅刻しちゃいますよ?」


 ……と言う、パインの言葉が適用されてしまう。


「ち、違うし……お、俺、そんな事しないし? 後ろ姿が綺麗だから、ちょっと好奇心とか持ったりする時は……まぁ、ほら? 男なら少しはあるけど、さりげなく追い越して顔を見るとかしないし! そして、実はおねーさんではなかった事でショックとか……うぅ……受けないし!」


 そして、パインの言っている事が全て当たっていると言う、悲しい事実まで判明していた。


「うん、分かったよ。ミナトが元気だって事はね? 綺麗なおねーさんを大通りで見付けたら、その場で品定めする程度には元気だって事もすごーく分かったよ? だけどね? やっぱり私は学校には行けないと思うんだ? だってさ? 考えても見なよ? もう、遅刻寸前なんだ? こんな状態で走って学校に行くなんて不毛じゃない? 急いで学校に行く理由って何? そんな物は最初からないと思うと私は考える……あれ?」


 屁理屈としか、他に形容する事の出来ない台詞を不真面目に並べたてていたシリアは、ここで言葉が止まる。


 理由は簡素な物だった。


 さっきまで大通りにいた筈のシリアは……何故か学校の校門前にやって来ていたからだ。


 そして、いつの間にか周囲にミナトとパインの二人がいない事に気付いた。


 どうしてこんな事になっているのか?


 パインが空間転移魔法テレポートを発動させて、シリアだけを学校の目前まで送ってしまったからだ。


 答えを知らないと謎めいた現象にも感じるのだが、蓋を開けると大した理由でもでもなかった。

 

「……えぇと?」


 シリアはポカンとなってしまう。


 そんな中、同級生と思われるお嬢様から『おはよー』と、元気に朝の挨拶を受けたので、シリアも笑顔で挨拶を返していた。


 ……結果、校門を前にUターンする程の気概を見せる事が出来なかったシリアは、内心でかなり不本意な気持ちを抱えながらも、学校の授業を受ける事になって行くのだった。


 他方、その頃。


「……なんか、シリアが消えたんだが?」


 大通りに残される形となったミナトが、ビミョーな顔になってパインへと尋ねる。


 どんな珍現象が起こっているのかは知らないが、パインがやったと言う事だけは、本人から聞くまでもなく分かり切っていたからだ。

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