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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
探索行・中央大陸
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情報交換

 サイカさんたちとしばらく話をして、そして情報交換を行った。

「ほほう、するとこの先に大規模修復の跡があリュと?」

「俺がみつけたのは一箇所だけですが」

「周囲の地質構造まで影響が及んでいた。完全修復されてはいたが、その原因は調べたほうがよさそうだな」

 俺の説明にオルガが補足してくれた。

「フーム……となると、いったん引き上げてから測量チームも集めた方がよさそうだニャあ」

「サイカ、地質学の専門家も呼んだ方がいい。これ以上はわたしの手にも余る」

「オルニャんレベルでも足りないニャ?かりにハチどの、もとい、ハチの手も借りたとしたら?」

「ハチの目利きは非常に優れていると太鼓判を押すが、すべての知識は経験則と直感によるものだ。つまりポイントの特定までが彼のすべき事で、詳細の調査は専門家に託す必要がある。

 わたしは多少地質関係もわかるが、あくまで母上の手伝いをしていたからにすぎない。

 つまり、我々にできるのは」

「ハチが最初の目鼻をつけ、オルニャんが初期解析、および必要な人員について割り出すまでという事ニャ……フーム」

 サイカさんは少し考え込み、そして大きくうなずいた。

「わかったニャ。オルニャん、ハチ、情報の提供に心から感謝するニャ」

「いやいや」

「こんなんでもお役に立てれば」

「充分ニャ!」

 そういうと、サイカさんはクレジットカードサイズの板を俺に渡してきた。

「これは?」

「オルニャんと同じ扱いになるニャが、要は民間研究者のパスニャ。これで身分証明になるニャ。

 ウチの商会が身分証明をするカタチなので、取扱には注意してもらえるとありがたいニャ」

「なるほど、助かります」

「それはこっちのセリフニャ」

 ニヒヒと楽しげにサイカさんは笑った。

 

 確かオルガに聞いた話だと、この世界の研究者にはふたつのパターンがあるらしい。

 

 ひとつは各国の学府から進み、中央大陸北部にあるケラナマーって国の大学に進む事。

 ケラナマーは巨大な遺跡とともにある国で、もともと昔から学者の巣窟だったという。今でも国際的な研究施設やら大学やら、そういうもんが集まっているらしい。

 つまり学問の国。

 この世界にあるオーバーテクノロジー的なものはケラナマーにしか管理できる者がおらず、彼らが外資獲得の目的をかねて、研究がてら貸し出している場合がしばしばあるという。

 ぶっちゃけた話。

 あの迷惑な飛空艇もケラナマーしか管理できないものの一例なんだそうだ。

「ちなみに、戦争に使うのは飛空艇貸し出し契約違反になるんだ」

「え、そうなのオルガ?」

「今回の件がケラナマーに伝わったら、飛空艇関係の研究チームが激怒するだろう。

 もともと人間族国家はギリギリの使い方をする客が多いそうだが、異世界人を追い回すために使ったと知れたら、間違いなく飛空艇の引き上げ司令がかかるだろうな」

「へぇぇ」

 

 で、もうひとつが、オルガのような民間研究者。

 基本はフリーなんだけど、何しろ基礎研究中の研究者は自分でお金を稼げない。また研究内容によってはそもそも、お金にまったくつながらないジャンルもあり、これらについては資金調達に大きな問題を抱えている。

 そうした研究者は何か稼げる仕事と兼業している事が多いのだけど、有力者や財閥と契約している研究者もしばしばいるらしい。つまり、何か売れるもの……たとえば特定の知識や情報を契約相手に提供することで、活動資金を援助してもらっているわけだ。

 そしてオルガの場合は。

「ひとことで言えば内職だねえ」

「内職ねえ。具体的には?」

「もともと本業の関係で魔道具の知識があるからねえ。本来ならアーティファクトに属するような魔道具の開発を手伝ったり、場合によっては試作した道具を売ったりもしているねえ」

 ほう?

 首をかしげていると、サイカさんが口をはさんできた。

「ウチの商会は非常に助かってるニャ。何しろ伝声石を独占的に使わせてもらってるからニャア」

「独占的?」

 それってもしかして。

「ああ、伝声石はわたしの開発だからねえ……とはいえ、こんなもの原理がわかれば誰だって作れると思うが」

「真の天才が自分を天才と知らないというけど、ほんとだニャあ」

 あはははは。

「察するに、サイカさんたちの方でオルガの権利関係を管理しているんです?」

「オルニャんは自分の技術を安く売りすぎだニャ。けど学者バカのオルニャんに突然、商才が必要なことをさせるのが難物なのはウチにもわかるニャよ。

 ニャんで、委託というカタチで権利の運用を引き受ける事にしたニャ。伝声石の独占利用はその代償ニャ」

 なるほど。

「わたしとしてはメリットだらけなんだがな。

 路銀には困らない、資金は引き出し放題。おまけに新作アイテムの試用に商品化・販売までしてくれるんだ。

 楽すぎて堕落しそうだねえ」

「そんなに助かってるのか」

 しかし路銀?資金は引き出し放題?

「ウチらは腐っても商会ニャ。スイートでもかまわニャいと言ってるのに安宿を使う女ひとりの路銀が問題になるわけがないニャ。

 活動資金といってもオルニャんの場合、現地での食費と滞在費にすぎないニャ。

 はっきりいって、メリットの方が大きすぎて困ってしまうニャ」

「ま、まぁ、儲かってるのなら問題ないんじゃ……」

「そうはいかないニャ」

 俺のツッコミに、サイカさんは首をふった。

「商売には良い商売と悪い商売があるニャ。

 自分が儲かれば相手が損しても良いという商売は、悪い商売ニャ。目の前の(あきな)いの事しか考えてない、能無しのバカのやる事ニャ」

 ……ほう?

「もしかして、三方良しってことかな?」

「む、それはどういう意味ニャ?」

 尋ねられたので簡単に説明した。

「確か、日本の近江ってとこの商人の言葉なんですけど、商売の基本と言われているものですよ。

 三方良し。

 つまり売り手、買い手、そして世間の3つに良しとなるのがいい商売って考えですね」

「……なるほど、いい言葉ニャ」

 サイカさんは目を細めた。

 

 俺も確かに、あれはいい考えだと思う。

 そして21世紀の日本の商人も、忘れないようにすべき考えだとも思う。

 

 たとえば漫画やイラスト関係で、出版業界が青色吐息なのを理由にタダ同然で働かせようって話を最近時々聞くし、ギャラとして公然と無料を求められたという信じられないような話も。

 もちろん、それに踏み切らざるをえなかった理由はあるのだろう。

 だけど。

 今、世の中にいる作家や絵師の予備軍である若者や子どもたちが、普通にタダ働きさせられている先達の悲惨な話を聞いて、それでも書き手になりたいと思うだろうか?

 このままいけば、おそらく。

 将来には、買い叩こうにも叩ける人材がいなくなり、過去のコンテンツでやりくりして食うしかない時代がやってきてしまうだろう。

 彼らがやっているのは、暖をとるのに薪がなくなったから、自宅を解体したり衣服を脱いで燃やしているようなものなんだから。

 まぁ。

 だからといって代案など思いつかない身の上だけど……悲しいことだと心底思う。

 

「そういえば話が飛ぶんだけどニャ」

「あ、はい」

「ハチの魔法ニャけど、ものづくりに特化していると聞いたニャ」

「あー……似たようなもんかな」

 作る要素もあるとは思うけど、基本、どこかから呼び出してる感じなんだけどな。

 少し説明すると、サイカさんは「むむ?」と首をかしげた。

「オルニャん、ひとついいかニャ?」

「何かねえ?」

「もしハチの能力を願望型と仮定するニャら……内側に向かう力も使えるんじゃニャいかニャ?」

 内側に向かう力?

 俺も首をかしげていると、オルガが引き取ってくれた。

「つまり身体強化や加速など、自分自身に向かう魔法なら使えるんじゃないかと言いたいのかねえ?」

「そうニャ……あと『英雄化』もニャ?」

「!」

 

 英雄化?

 

 だけどオルガは、そのサイカさんの言葉に、「それは」と言ったきり考え込んでしまったのだった。


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