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YetAnother異世界ドライブ旅行記  作者: hachikun
新・家族旅行?
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痕跡[3]

 砂漠といっても砂ばかりでなく、色々な土地がある話は前にしたと思う。

 そしてオアシスに代表されるように、たまにピンポイントで水が湧き、何とか普通の生活ができている孤島のような場所が存在したりもするわけだけど。

「コレは、また」

 アイリスが地図上に発見したもの、その現物を見た俺はさすがにちょっと驚いた。

「なんだこれは、人工の水路のようだが?」

「まさか……U字溝(ゆーじこう)じゃねえか」

 日本の田舎でよく見る、灌漑(かんがい)なんかで使われるアレがあった。そんな多くないけど水もしっかりと流れている。

 こんなもん誰が敷設したんだろう?

「水脈をほりあてて水を引いたのか、あるいはオアシスをみつけてそこからの流れを整理したのか。どちらにしろ、家族程度で住むには問題ない水量だな」

「……めちゃめちゃイヤな予感がするなオイ」

 だんだんと風景が、日本でみたようなものに変わっていくんだが?

 水路の横に作業道が作られているんだが、これまたご丁寧に日本の軽四でギリギリ程度。当然、うちのキャリバン号でも問題ない。

 うわ、マジかよ。

 この高度成長期の田舎の路地裏みたいなサイズ感、見覚えありまくりなんですが。

 さらに通路の向こうには何本かの大きな木が見えて。

 そしてさらに。

「ちょ、なんか民家あるし!」

 なんか、藁葺き屋根の似合いそうな感じの田舎の古農家が!?

「ほお、異世界式の住居じゃないか?映像でなく実物を見るのははじめてだな……いやちょっと待て」

 興味深げに風景を見ていたオルガだったけど、

「ハチ、クルマを止めろ!」

「え?」

「はやく!」

「お、おう」

 キャリバン号を止めた。

「どうした?何があった?」

「あの木のあたり、何かいるぞ」

 え?

 あのでっかい木か。

「何がいるかってわかる?アイリスは?」

「アイリスはわかんない」

 ふるふるとアイリスが首をふった。

「真竜族が苦手な系列……待ち伏せ型の魔物、それも爬虫類か虫の魔物かもしれんな」

 え?

「トカゲとか虫は苦手なのか?」

「苦手というより、生命体としての動きが緩慢なんだ。真竜にとっちゃ危険もない存在だしな」

「なるほど」

 自分にとって危険でなければ、注意力も働かない。当然といえば当然か。

「まぁドラゴンにとっちゃ危険がなくても、こっちはなぁ」

「そういうことだ。

 アイリス嬢、いい機会だ。君もよく観察して覚えておくといい」

「はい先生っ!」

 お、アイリスがなんか生徒モードみたいになってる。

「ハチ」

「あ、はい、なんでしょう」

「なに口調を改めてる?まあいい。

 生き物である以上、魔力がある。たとえ流動してなくともな。

 ハチ、おまえなら察知できるはず。漁港での続きだ」

「……そういうことか」

 感知してみせろと?ふむ。

 俺はダッシュボードからマテバをとり、ドアをあけてキャリバン号を降りた。

 意識をしずめつつ、マテバを持ち……意識を集中する。

「……!」

 それを感知した瞬間、タンターンと、二発ほど発射していた。

「オーケーそれでいい。他に感じられるか?」

「いや……とりあえず危険そうなのはいない」

「よし、では確認してみるぞ」

「おう」

 キャリバン号に戻り、オルガの指示で走らせた。

「徐行して木に近づけ……見えるか?奥の木の前と、それから手前の木の方は死角になっているが」

「あ、ああ。見える」

 それは、思ったよりでかかった。

 降りてみようとしたんだけど、

「まってパパ、アイリスが確認してくる」

「しかし」

「ダメ、危ないから。確認させて」

「……わかった」

 アイリスの態度が妙に必死に思えて、許可を出した。

 うなずいたアイリスはキャリバン号を飛び出した。ラウラもそれを追いかけていく。

 しばらくして。

「大丈夫、死んでる。降りていいよー」

「おう」

 俺もキャリバン号を降りて、そしてオルガも降りてきた。

 

 

「こりゃあ、コカマキリだねえ」

「コカマキリ!?」

 これで『小』!?人間よりでかいのにか!?

「うん。だって小さいってグランドマスターが」

「いやいやいやいや、これもう虫のサイズじゃねえから!」

 俺はさすがに声をあげた。

 だって考えてくれ。

 体長だけで俺より大きくて、手足を含めたら俺よりでっかいカマキリなんだぞ?

 これが「コカマキリ」て。どうなってんだよ。

「これでもれっきとした魔物だからねぇ」

 俺が呆れていたら、オルガが笑った。

「あー、魔物」

「ついでにいうと、真竜どののサイズでいえば小さいのは間違いないさ。おやつにもならんだろうし」

「食うの!?」

「なんだ知らないのか?竜族やラシュトルたちは虫型魔獣が大好きだぞ」

 へえ。

 で、もちろんだけど左手でチェックしてみた。

 

『コカマキリ』

 人間や中型動物を待ち伏せで襲うカマキリ系の魔獣。比較的小型だが、それでも二メーターには達する。

 

 なんですかそれ。

「カマキリの仲間は魔獣化すると大きくなるのが多いぞ。まぁそれでも、蜘蛛やらアリジゴクやら何やら、あっちには負けるけどな」

「あ」

 俺は虫も多少は知ってるから、オルガの例示した虫にも覚えがあった。

 そして、それらの虫の共通点も。

「待ち伏せ野郎どもは、でかくなるってか!」

 そう。

 カマキリ、クモ、アリジゴク。

 まぁハエトリグモみたいに徘徊して狩りをするクモもいるから断言はしないけど、基本的にこいつらは営巣し、待ち伏せして獲物をとらえるやつが多い。

 で。

 こいつらは爬虫類や両生類同様、変温動物なので消費エネルギーが少ない。つまり、長期の待ち伏せに向いてる連中なわけで。

 そして。

「うむ、おそらく正解だ」

 クスクスとオルガは笑った。

「ハチはやはり動物学向きだな。クレーヌ教授やリリスにきかせてやりたいね」

「ほう?」

 なんか知らない名前が出てきたぞ。

「その人達は何者?」

「クレーヌ教授はケラナマーの学者で生物学が専門でな、直接の恩師ではないがお世話になった事があるんだ。東大陸によく出張ってくるから、もしかしたら会う事もあるかもしれないな。

 リリスというのは、本名リリス・ガ・テニオペといって、わたしの妹分のようなものだ。身体が弱いうえに特異体質なんだが、それでもがんばって学者になった変わり種だよ」

「ほうほう」

 ご両親はもういないと聞いたけど、ちゃんと個人的な人間関係は構築しているんだな。

 よかったよかった。

「む?どうしてそう、微笑ましげな顔をしているのかねえ?」

「あーいやほら、学者先生って時として、研究最優先で友達いなかったりするだろう?」

「……それは否定しないけど、ハチに言われるとちょっと文句を言いたいねえ」

「え、なんで?」

「ハチ、君は休日のたびにこの乗り物であちこち徘徊し、好きなものを見るのを楽しみにしていたんだろう?

 で、それほども活動範囲が広いというのに、友人もほとんどいないのだろ?」

「あ」

 それは。

「ハチ。ひとはそういう者を、対人スキルが低いというわけて──」

「うわぁぁぁ、ごめん、ごめん俺が悪かった!だからもうやめて!」

 クスクスと笑い出すオルガに、俺はあわてて謝った。

 

「ねえパパ、仲良く盛り上がってるとこ悪いんだけど」

 もりあがっていたところにアイリスが口をはさんできた。

「ラウラたちがこの子、食べたがってるよ?」

「おっと……ちなみに食べて大丈夫なのか?オルガ先生?」

「問題ない、虫系の魔物はおやつのようなものだからな。だがちょっと待て」

「え?」

 なぜかオルガは、ササヒメに顔を向けた。

「ササヒメ、元のサイズで食べなさい!」

「オンッ!」

 そういうと、ササヒメは次の瞬間、明らかに俺たちより大きな姿になった。

 うわ、でけえ!かっこええ!

「きゃん!きゃん!」

 で、なぜかそんなササヒメを見たラウラが大喜び。

「ラウラ、おまえもいいぞ!」

「きゃん!」

 そういうと、ラウラも大きくなった……つってもラウラはまだ、柴犬サイズにも届いてないけどな。マメシバよりは大きくなったが。

「よしいけ、腹壊すなよ?」

「わんっ!」

 二匹のケルベロスは仲良く、巨大なカマキリをもりもり食べ始めた。

「おー、仲良くなってるな」

「今のところ、ササヒメが一方的に面倒を見ているようだな……まぁこの年齢差では仕方あるまいが」

「そうなのか?」

「人間にたとえると、いい歳した男が小さな女の子をかわいがっているようなものだな」

「まさかとは思うけど……それで年頃になったらカップリングすると?」

「そういう意味でも気に入ってるようだねえ。いいことだが」

「……光源氏かよ」

「光るゲンジ?」

「なんでもない。

 それより、あいつらが落ち着いたら家を調べよう」

 俺は思わず、ためいきをついた。

 

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