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その八十一
あくる朝、朝食後にモモヨくんをやさしく指導する。十時すぎ、出前の器を引き取りに来た〈お食事処松葉〉の夕子ちゃんが屋敷のチャイムを押してきた。ぼくは、
「ヘルメット返すためかな」
と思いながら玄関に出る。しかし夕子ちゃんは、返却するためにチャイムを押したわけではなかった。逆にヘルメットを譲ってほしいと懇願してきたのである。
「お金も払います」
「でも、それ、貰い物なんですよね……」
「そこをなんとか! お願い」
「うーん……じゃあ、ちょっと待ってね」
ぼくはメールで天堂愛ちゃんに問い合わせてみる。しかし愛さんはいま撮影中なのだろうか、しばらく待っても既読にすらならなかった。
ぼくは器の回収にもう行かなければならない夕子ちゃんにその旨を伝え、譲渡する許可が取れたら、こちらから連絡を入れるということにした。
「じゃあ店のほうじゃなくて、わたし個人のケータイ番号おしえますね」
「うん」
「それまでヘルメット、使っててもいいですか?」
「いいよ」
「すいません――じゃあ、いってきまーす」
ぼくはこのように、思いがけないかたちで夕子ちゃんの連絡先を頂戴する。幸運であった。マンモスラッチーであった。
「これもきっと具現化の例のあれの効果なのだろうな――ありがたいバグだな」
朝飯はモモヨくんがつくってくれたので、お昼はぼくが用意する。
冷蔵庫をざっとチェックしたのちに得意のサンドイッチをつくる。パン断ちをしていたころのモモヨくんはサンドイッチもあんパンも食べなかったが、こんにちでは、なんでも食べてくれるので、パン好きのぼくとしては、たいへん助かっているのである。
「パンティーもちゃんとはいてくれてるしな――今朝はいったん脱がしたけど」
モモヨくんがキャプチャ室にさがっていくのを見届けてから自室にサンドイッチを持っていく。エロエロレギンスさんにあげるためである。
部屋に入ると、エロエロレギンスさんはテレビに取り付けたイヤホンを片耳だけつけてファミコンをやっていた。
「サンドイッチ食べるかい?」
「うん。ありがと」
「今朝はちょっと講義とかでいそがしくてさ、朝飯どうした?」
「食べましたよ」
「どこかにお菓子でもストックしてあるのかい?」
「冷凍庫にあったお肉を解凍して焼いたの。御飯は炊きたてのをもらったからね」
「そうなんだ――やっぱりくノ一はやることが素早いんだな」
天堂愛ちゃんからメールが返信されてきた。ヘルメットはシーズン1で使用していたものもまだあるから、今度帰るときに持っていくとのことだった。夕子ちゃんがつかっているヘルメットのほうは、あげても売ってもべつにかまわないらしい。
「一件落着」
ぼくはさっそく夕子ちゃんにこのことを伝える。夕子ちゃんはすぐお礼の返信をよこしてきた。




