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その七十九
妹さんの証言によると、大写毛様はスリラーダンスはやらなくなったけれど、養成所から課題として出されている「ペッパー警部ダンス」のほうは、衣装もちゃんと着て毎日猛特訓している。
そんなわけでぼくは、三河様よりあずかった書状をキティさんに手渡したのちに、すぐ帰ることにする。
「ミーちゃんかケイちゃんの役をおっつけられたら、また長丁場になるかもしれないからな……」
バリタンクに乗り込み、無線でヘリキャプターに目的地を伝える。
「オートコント、ローラー!」
お昼まえに隠者屋敷に到着する。エロエロレギンスさんはキャプチャ室で作業をしてくれていた。ぼくはお礼代わりにエロエロレギンスさんを外食に誘ってみる。
「でも、屋敷が留守になっちゃうよ」
「じゃあ出前取ろうか」
「だったらまた、あそこのおそば屋さんがいいなぁ」
「お食事処〈松葉〉のことかな?」
「そうそう」
エロエロレギンスさんは前回とおなじくきつねうどんを食べるとのことだったので、ぼくも今回はきつねにした。ちなみにわたくし環三千世は、きつね顔の女子もたぬき顔の女子も、どちらもおなじくらい好きなのである。
しばらくすると、
「お待ち遠さまぁ」
夕子ちゃんが出前を届けてくれた。玄関先で代金を支払ったのちにすこし世間話をする。
「京子さん、あの病院、辞めちゃってたんですね」
「うん。結婚したからね」
「ヨーロッパに住んでるんでしょ? カカーニエンでしたっけ?」
「まあ、だいたい、そのあたりだね」
夕子ちゃんは、
「ありがとうございました」
と玄関の引き戸を閉めた。しかしすぐ引き返してくる。
「すいませーん」
「はーい」
「ヘルメット盗まれちゃったみたいです」
「えっ!」
門の向こうにバイクを停めていた時間は五、六分くらいだったはずだけれど、プロの盗人だか通りすがりの奴だかがその間にささっと取って行ってしまったのだろうか――夕子ちゃんは肩を落としてがっかりしていた。
「ヘルメットがないとバイク運転できない……」
「困りましたね」
「どうしよう……」
「そうだ!」
ぼくは天堂愛ちゃんよりいただいたモモ隠ジャーのヘルメットを自室からもってくる。
「これ、間に合わせにならないかな」
「うん、安全マークも付いてるから、だいじょうぶだと思います」
夕子ちゃんはモモ隠ジャーの変身ヘルメットを装着すると、シールドをあげた。愛さんとおなじくらい似合っていた。神がかっていた。
夕子ちゃんはさらに、
「これ、忍者キャプターのやつですか――懐かしいな……」
といったんヘルメットを取って確認すると、すぐまたかぶって、
「花忍キャプター3」
とポーズも決めてくれた。ぼくは脳天からチューリップも咲いてきそうなほど感動した。奇跡的に美しかった。
「これ、貸していただけますか?」
「どどど、どうぞどうぞ」
「超ガン見してますね。写真撮ってもいいですよ」
夕子ちゃんはふたたび花忍のポーズを決めた。




