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その七十七
バリタンクの説明書にはなにげに他の時空へのアクセスの方法が記されていた。ぼくはそれを試してみる。
「ヘリキャプター!」
備え付けの無線でこのように呼ぶと、ヘリキャプターはすぐ飛んできた。ちなみにこれは中西さんが一度やってくれているので、ドッキングするときもぼくは落ち着いていられたのである。
「えーと、つぎは、あっ、また無線か……」
無線にて目的地を述べる。そしてオートコントローラーのボタンだかレバーだかを、てきとうにカチャカチャやる。
「おお」
すると車内はとつぜん真っ暗になり、スピーカーからは五月みどりの「一週間に十日来い」が流れてきた。
「一週間に十日来い」が終わると、車内はまた明るくなる。いつのまにか、ヘリキャプターは着陸していた。
ドアを開けると三河様の側近の三國さんが、家臣の人たちをかきわけて出迎えてくれた。無線で伝えた目的地にちゃんと着いたようである。
「殿に呼ばれたんですけど、話は行ってますよね」
「ええ。お待ちしておりました。どうぞ城へ」
三國さんに案内された部屋に入っていくと、三河様は腹ばいの体勢で若い娘に背中を揉んでもらっていた。
「殿、三千世様が来てくださいましたよ」
「おお! 早かったな」
「殿、お久しゅうございます」
「三千世殿、遠いところ、申し訳ない」
「いえいえ。いつも妹がお世話になっております。あいつ、ちゃんとやってますか?」
「立派に務めてくれてますよ」
部屋に食事が運ばれてくる。若い娘はどこかに下がり、代わりにアチャ子さんという古株の側室が入ってきた。さっきの若い娘は初見だが、このアチャ子さんとはぼくも面識がある。
「アチャ子さん、しばらくです」
「あら三千世様、このお婆ちゃんを覚えていてくれたのね」
「お婆ちゃんだなんて、そんな。こんなにお若いのに」
「三千世様って、お上手ね」
「まっ、一杯やろう」
三河様は徳利を持ったので、とりあえずぼくは猪口を取って恐縮しながら酒を注いでもらう。
「殿も、どうぞ」
「ん、すまん」
お給仕の子たちが全員下がり、アチャ子さんだけになると、三河様は声を小さくして話しはじめた。
「皇帝に三河の地を奪われ、代わりにひどい土地をあてがわれた」
「――京子にすこしききました」
「そして今後は、ワオキツネガラモンの領地から税も取り立てなければならない」
「そうなんですか?」
「誰も連中の言葉がわからんのじゃ。三千世殿、なんとかしていただけないだろうか」
「妹もわからないんですか?」
「京子ちゃんも、ワオキツネガラモンたちがなにをいっているのか、さっぱりわからないそうじゃ」
「そうですか――じゃあわたし、そのあたりはやりますよ」
「ありがたい。お願いいたします」
「わかりました――殿、でも話って、これだけですか?」
「いや、じつはまだあるんだが、これは続編があったらのことなので、読んでくださっている方のためにも、ここでは詳しくいわんほうがいいと思うんだよ……」
「藤吉郎様のことですよね?」
「うん……まあ、そうだな」




