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その七十一
眠気薬だか秘術だかのせいだろう、ぼくの意識は朦朧としていた。必殺のレッドビュートをくりだすこともできない。
「どうだぁ!」
「うぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああ」
さらに暗闇大臣より、強度最大の電気アンマをもお見舞いされる。ピンチである。マンモス大ピンチである。
「三千世さーん」
このとき天堂愛ちゃんがいきなり襖を開けて入ってきた。シーズン2でも愛さんはモモ隠ジャーを演じている。
「まずい」
暗闇大臣は飲みかけの酒をグイッとやると、すみやかにどこかへ去っていった。
「ありがとうございます」
「罰ゲーム?」
「まあ、そんなところですかね」
「いまでも電気アンマとか、やってるのね」
朦朧としていた意識は正常にもどっていた。電気アンマが逆にいい効果をもたらしたのかもしれない。
「愛さん、誰かと飲みに来たんですか?」
「一人よ」
とりあえずぼくは天堂愛ちゃんを誘った。愛さんは向かいにすわる。
「愛さん、やっぱり芋焼酎ですか?」
「うん」
ぼくはちょうど顔を出しに来た女将に芋焼酎をボトルで注文する。どうせツケである。肴も刺し身の五点盛りとかいうやつを追加した。
「今夜はいわゆるオフってやつですか?」
「わたし?」
「うん」
「オフ……オフっていうか、帰宅?」
「帰宅?」
先にも触れているが、天堂愛ちゃんは現在バニラシェイク共和国にて特撮番組「隠者キャプチャー」のシーズン2の撮影に連日明け暮れている。
だからぼくは天堂愛ちゃんは、あちらに部屋を借りて定住しているものと思い込んでいた。しかし和食好きの愛さんは、
「バニラシェイクって、白米も味噌も芋焼酎もぜんぜんないの」
という理由により、最近はこちらから現場に通っているようなのである。
「ここに住んでるんですか?」
「ええ。わたしが間借りしてるお部屋は狭いけど」
「不便じゃないですか?」
「逆に便利なのよ。ここは時空管理ステーション直通で、どこの撮影現場にもすぐ行けるから」
これはまえにも述べたが、「隠者キャプチャー」は、大人の視聴者層にも支持されるよう、お色気方面のシーンを多く取り入れている。シーズン2でもその方針は継続されていて、いよいよアカ隠ジャーはモモ隠ジャーと同棲するのだが、愛さんは最近、そのさいの衣装や演技の方法にどうやらかなり悩んでいるらしい。
「同棲してるときの部屋着って、あんまり派手だとおかしいでしょ」
「うーん……」
「でも、地味すぎると、色気が出ないし」
「いや、そんなことはないと思うよ」
「そう?」
「うん」
「ちょっと、見てほしい服があるの」
そんなわけでぼくは、お色気方面の総責任者(?)として、愛さんが用意している衣装を検討することとなった。




