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その六十四
日替わり定食を食べたのちに再びクルマに乗る。午後は、
「わたしに運転させてください」
と中西さんが直訴してきたので、ぼくは助手席のほうにすわった。
最初のトンネルを通り抜けると、道端には親指を立てて同乗を懇願しているヒッチハイカーが口もとをわなわなさせつつたたずんでいた。
ヒッチハイカーの髪はロン毛で色は青であった。眼帯もピチピチのタイツもやはり身につけている。
「どうしますか?」
「いちおう、停まってあげようか」
中西さんはバリタンクを道端に停車した。
「どうしたんですか?」
「ヒッチハイクをしてるんです」
「どこに行くんですか?」
「行き先はないのです。お宅さんの行くところでいいので、乗せてください」
「名付け親さんのところについてきて、ぼくたちの結婚の邪魔をする気だな。そうはいかないぞ! 暗闇大臣」
ぼくはまたぞろめんたいこ味のうまい棒を、
「火輪弾!」
と見得を切って投げつける。
「暗闇バリア!」
暗闇大臣は先ほどとおなじようにこれを防御し、今度はなにもいわずに原付で去っていった。
「よし、義理は済んだな。中西さん、行きましょう」
「はい」
中西さんは原付で走り去っていく暗闇大臣をしばらく見ていたが、首をかわいくかしげると、運転席に乗り込んだ。しばらくは渋滞もなく快調に進む。
「キャオ(中西さん)」
しかし今度は黒十字忍団だかカットマンだかがダンボール製品バレバレの太い丸太を何本も道路に置いてわれわれを待ち構えていた。
「あの方たち、どうしてこんなに邪魔するんでしょうね」
「まあ、脚本っていうか、バグのあれだから、あんまり意味はないと思うよ」
「テンフィンガー使っていいですか?」
「なんですか? テンフィンガーって?」
「いま見せますね」
中西さんは、
「テンフィンガー! スイッチオン!」
とかわいい声で叫ぶと、運転席周辺のボタンやらレバーやらをカチャカチャいじった。
「あ」
するとロボットの腕みたいなやつが前方にグイグイ伸びていって、
「オートコント、ローラー!」
丸太をすべて撤去してくれたのだった。
「三千世さん、便利ですね、この機能」
「すごい……」
横っちょでこの光景を見ていた暗闇大臣は、
「バリタンクめ!」
と地団駄を踏んでくやしがると、また原付でどこかへ去っていった。




