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その六十三
翌日、VARITANKで中西家に行く。助手席にすわった中西さんは、この新車の説明書を手に取る。
「わぁ、こんな機能もあるんだ」
中西さんはバリタンクに感心していた。
「もうすぐお昼だね」
「この先にドライブインがあるんです」
「そこでお昼にしようか?」
「ええ」
昔ながらのドライブインに立ち寄る。
「そっちは高いから、こっちにしましょ」
中西さんはぼくの手を引いて定食屋さんのほうに案内してくれた。よく知っているようだ。名付け親氏をたずねるさいには、きっとここで休憩しているのだろう。
販売機で日替わり定食の食券を二枚買い、テーブル席で待つ。すぐ定食は出来上がってきた。
「お待ち遠様。日替わり二つですね」
「はい、すいません」
「あとこれ、サービスです」
眼帯をした顔色の悪いロン毛の紳士は、お皿に盛った生のたらこを中西さんのまえにもったいぶって置いた。
「あそこにある電子レンジでチンしてから食べてください」
「ありがとうございます。でも、いいんですか?」
「ええ。日替わり定食用のカリカリ梅が切れちゃったものだから、その代わりです」
中西さんは、
「わたし、あたためてきますね」
とお皿を取ると、レンジがあるコーナーに歩いていった。
眼帯をした顔色の悪いロン毛の紳士の髪の色は青で、やはりおなじ青色のピチピチのつなぎのタイツを身に着けていた。
「思いだしたぞ!」
これは「隠者キャプチャー」に出てくる悪の組織の大幹部とほぼおなじ身なりであった。
「あぶない!」
ぼくは電子レンジのまえでたらこがあたたまるのを待っている中西さんのところに走っていき、中西さんをかばうようにレンジに背を向けて抱きしめた。たしかシーズン1の第二十六話で、電子レンジ内のたらこを爆発させてアカ隠ジャーを苦しめるシーンがあったのである。
案の定レンジ内のたらこは爆発した。実家にいたころ、何度か妹も電子レンジでたらこを爆発させていたが、それに匹敵するくらいの大爆発であった。危機一髪であった。
「よくぞ見破ったな、アカ隠ジャー」
顔色も実質〝青〟の暗闇大臣は、ぼくにこう見得を切った。
わたくしアカ隠ジャーは、ポーチから〝めんたいこ味のうまい棒〟を取りだし、
「火輪弾!」
とスナップをきかせて暗闇大臣に投げつける。
「暗闇バリア!」
しかし暗闇大臣はこの攻撃をはねつけた。
「なに!」
「また会おう、アカ隠ジャー」
暗闇大臣はマントをひるがえすと、定食屋のバックヤードにさがっていった。
暗闇大臣はいちばん強い大親分みたいな野郎なので、火輪弾一発とかでは、なかなかやっつけられないのである。
「おのれ……暗闇大臣め……」




