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その六十二
屋敷にもどると、玄関には見たことのない草履が二足ほどあった。
「おかえりなさい」
「ただいま。誰か来てるの?」
「うん」
居間には十兵衛さんと小蝶さんがすわっていた。お二人は御老師に用事があって、こちらの国に寄ったようだ。
「御老師様、お元気でしたか?」
「ええ、元気そうでしたよ。三千世さんにも、よろしくとのことでした」
十兵衛さんと小蝶さんは唐辛子帝国にある領地をすべて藤吉郎新皇帝に献上し、現在はほかの国で暮らしている。
当初大写毛様は、わたくしセンセ殿の弟子になることを希望していた。ぼくはふ菓子国に永住することと小蝶さんと離縁することを条件に出す。上様はすぐこれを受け入れた。前皇帝はそれほどニートに憧れていたのである。
上様から皇帝の座を引き継いだ藤吉郎様は、十兵衛さんを〝地位をおびやかす一番の強敵〟と見なして警戒していた。しかし十兵衛さんはそもそも地位とか権威ではなく、愛を取ったわけである。われわれは放っといてあげましょうよ、と説得する。
権力に異常に執着している新皇帝は、
「愛とかいって油断させておいて、なんだかんだ狙ってるんじゃないの。上様が一歩先に引退したから謀反はおこさなかったけれど、〝本能神殿の変〟の計画は立ててたんだから」
と最初は疑っていたが、最終的にはどうにか納得してくれた。くり返しになるが、お二人が領地をすべて竹膳家に差し出したからである。
お二人は恐縮しているエロエロレギンスさんに悪いと思ったのだろう、長居はしなかった。
「お邪魔しました」
「お構いもしませんで」
十兵衛さんと小蝶さんは旅行先で買ったというお土産をいろいろ持参してくれていた。お二人が帰ったあと、さっそくチェックする。
「ほお、レンジで温めればいいんだ。晩飯これでいいじゃん」
「かんたんすぎて、わるいわ」
「ぜんぜんわるくないよ。あしたから留守番頼むんだし」
そんなわけで、ぼくたちはその冷凍の炊き込みご飯みたいなやつを食べることにする。
「ごちそうさま」
あっという間に晩飯を終える。禁酒中だからである。
「あした早いから寝るね」
「おやすみなさい」
寝室で横になっていると、
「あれ?」
いわゆるイチモツのほうが異常なほど元気になってきた。
「うーむ……」
いくらなんでもこんなにも元気になっているのはおかしい。エロエロレギンスさんにいちおう問い合わせてみる。
「わたし、そんな術かけてないですよ」
「ホントに?」
「うん」
晩飯に食べた冷凍の炊き込みご飯はまだ四つほど残っていた。エロエロレギンスさんは冷凍庫からその一つを取り出す。
「あっ、わかった」
この冷凍食品には例のビンビンマツタケが少量入っていたのだ。注意書きのところにも、食べすぎると過剰にビンビンになるケースがございますうんぬんと記されてあるという。
「それで、ビンビンになっちゃってるのよ」
「食べすぎたわけじゃないけど……それしか、かんがえられないよね」
「過剰にビンビンになってしまった場合は、氷で冷やすか、いろいろナニするかして対処してくださいって、書いてあるわ」
「ご親切な注意書きだなぁ。あはははは」
「どうする?」
「あはははは、まったく注意書きも切りがないよな――ん?」
「対処する?」




