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その四十七
ややぽちゃロリ熟女さんは、朝の戦いが一段落すると、お弁当をつくりはじめた。ひきこもりの息子さんにもって行くようである。
「三千世くん、いっしょに行きましょう」
「でも、ぼくは……」
「お義父さんになるかもしれないんですよ。ぜひ会ってください」
「息子さん、おいくつなんですか?」
「二十六です。娘は三十」
こちらのお宅は、ややぽちゃロリ熟女さんの実家である。亡くなったお父様は自営業をされていて母屋の裏にあるはなれで仕事をしていた。このはなれに、ひきこもりの息子さんは住んでいるとのことであった。
「うってつけの部屋になってしまったんですね」
「結果的にはね。さあ、行きましょう」
「でも、やっぱり……」
「あれだけのことを、したりさせたりしたんですよ」
「はい」
「わかってるの?」
「わかってます」
「どうするの?」
「度胸決めて行きます」
そんなわけでぼくたちは、はなれに行く。息子さんがはなれにひきこもっているのは呪術のためである。修行をしているらしいのだ。ぼくや恩師のようにやってる感を出すためかもしれないけれど、とにかくそういうことなのである。
はなれにあがっていくと、息子さんはすぐぼくにいろいろきいてきた。こたえにくいものはない。好きな食べ物だとか好きな本だとか、そんな感じの質問である。息子さんは古いワープロ専用機でぼくがこたえたものを打ち込んでいた。
「それ、オアシスですか?」
「はい。オアシスLX3000プラスです」
「ぼくもまったくおなじ機種使ってましたよ。もうずいぶんまえだけど」
「そうなんですか! いちおう予備機二台あるんですけど、コイツはプリンターのところがそろそろあぶないんです」
「ぼくがもってたのも最初にプリンターの部分が壊れちゃったな」
「やっぱりそうですか」
息子さんはワープロの〝うしろ〟に普通紙をはさむと、そのそろそろあぶないプリンター機能をつかって打ち込んだものを印刷した。そして印刷されたものを三つ折りにして茶封筒に収めると、なにか呪文のようなものを唱えて、ぼくに手渡してくる。
「母屋のほうの郵便受けに入れてください」
「はあ」
「お弁当ここに置いとくわね」
「あっ、お母さん、お弁当はそこに置かないでクーラーボックスに入れておいてよ」
「うん、わかった。三千世くん、行きましょ」
ぼくはややぽちゃロリ熟女さんにうながされて、はなれを出た。ひきこもりの息子さんはすこしせかせかしている感じはあったけれど普通の青年だった。
息子さんにいわれたとおり母屋の郵便受けに茶封筒を入れる。三分待つ。ややぽちゃロリ熟女さんに、
「そろそろ大丈夫ね」
と許可をもらって母屋に入ると、そこはロリロリさんいわく〝白雲コネクション〟であった。ロボットキツネの散歩をややぽちゃロリ熟女さんに頼んでいたあの博士の研究室である。
「これもやっぱり時空のあれですか?」
「うん」
「あの茶封筒が関係してるんですかね?」
「そうなの。時空管理局も、そもそもは息子が最初に発見したのよ」
恩師よりも長いヒゲをたくわえた御老師様は、ぼくをあたたかく出迎えてくれた。
「おお、あなたが高桐くんのお弟子さんですか」
「はい」
「あいつ、元気ですか?」
「元気です。おかげさまで」
コネクションは、八〇年代の秋葉原の電気店を想起させる趣があった。おそらくこれらの電化製品はやってる感を出すために置いてあるのだろう。さすが恩師の師匠である。
「とりあえず、お茶にしましょう」
ややぽちゃロリ熟女さんは、小津安二郎の映画に出てくるような赤いやかんで湯を沸かした。




