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その四十一
ベビースターをきれいに食べた沼口隊長は、テントを出て、木の下のベンチに移動した。ぼくもそこにすわる。
「で、そのあと、どうなったんですか?」
隊長は得意になって探検の話をしてくれた。
「えっ! いきなりですか?」
「そうなんだ」
大写毛皇帝が欲しがっている〝ギンギンアンデス〟のこともこの勢いに便乗してきいてみる。
「うん、あれはたしかに元内縁の妻が証言しているとおり、効能は確認されなかったんです。だけど、あのメロンよりもっとすごい〝ビンビンマツタケ〟はホントにあるんですよ」
しかし隊長がいうには、そのマツタケの回はオープニングから、あまりにもあまりにも、とくに隊長がビンビンになりすぎたがために、逆に倫理上ちょっと問題なのでは、という意見が出て、お蔵入りになったみたいである。
「そんなに効くんですか」
「ええ。わたしが食べたビンビンマツタケは視聴者が送ってくれたサンプル品ですけど、凄かったですよ」
とはいえ、ここでわたくしチーフは、ある疑問がうかんだ。「沼口探検隊がゆく」という番組が、倫理を重んじるとは到底思えなかったからである。
ぼくは番組の大ファンだと恩を着せたのちに、そのあたりを率直に述べてみる。
「10チャンネルの川口探検隊のほうと、まちがえてませんか?」
「まちがえてません。マーシシマイのやつも観てます」
「おお!」
「宇宙人ビービーマンの回も観てます。妹弟子なんかは三、四回観てます」
「たしかに観てくれているようだ――お兄さんは、ほかの国の方なんですか?」
「ここの生まれです」
「そうですか――でも、この界隈に来てから、はじめて会いましたよ。番組を知っている方に」
沼口隊長はたしょう迷ってはいたが、それでもビンビンマツタケの探検がボツになった本当の理由をおしえてくれた。
「ひらたくいっちゃうと、生えているところが、あまりにも危険地帯だったからなんです。みんな怖気づいてしまったんですよ」
「でも、それまでだって、かなり危険な探検をしてたじゃないですか?」
「いやいや、あいつらの凶暴さはね、お兄さん、それまでの奴らとは、まったく比べ物にならないんです」
「マーシシマイより?」
「ぜんぜん」
「ビービーマンより?」
「ぜんぜん。だってビービーマンは創作物だもん」
「え……」
「でもあいつらはちがうの。なにもかも本当。真実」
「ビービーマンはホントにいるんだと思ってた……」
「あのね、お兄さん、とにかくあいつらはね、怖すぎるんですよ。ヤバすぎるんです。洒落にならんのです――あいつらは、あいつらは……」
「隊長、その、あいつらって?」
「ん? ああ、〝イカバルタン〟のことです」




