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3


      その三


 先の動画に触発されて書き込んだノートには「好きな異性」のほかにもいろいろとランキング形式にしたものがある。つまり「ナニしたい」のほうも「好きな異性」ともたしょう重複するけれど別枠で設けられているのである。


 キャプチャするVHSをまたすげ替えていたときに、それをモモヨくんに見られてしまう。そしてわたくしチーフは、妹弟子の熱い探究心に最後は根負けして、ナニのほうの上位にランクインしていたコンビニの店員さんのところへ翌日モモヨくんを案内することになっていた。


 そんなわけで、お昼時にそのコンビニにおもむく。そしてイートインの席で、


「ね、小柄でしょ」


「うん。わたしよりは大きいけど、ミクロ系ですよね」


 と小声でモモヨくんとしゃべりつつ、コンビニで買ったお弁当を食べる。愛しの中西さんはわれわれのコソコソ話がきこえたのか、イートインの席を覗き込んできた。ドキッとしたぼくは姿勢を正してお目目をパチパチさせつつ鮭をほおばる。


 中西さんはいちばん奥の席でテーブルに突っ伏しているお客を確認したのちに、かわいく小首をかしげて、


「困ったな……」


 とつぶやいていた。コソコソ話がきこえたわけではなかったのだ。


 背の違いを確認したかったのか、席から立ち上がったモモヨくんは、その困っている中西さんに、


「どうしたんですか?」


 とちょっと見上げる趣できく。中西さんがいうには、奥の席でテーブルに突っ伏して寝ている男性はもう二日間もそんな感じで居座っているとのことであった。


 妹弟子に、


「チーフ、ナニするチャンスですよ」


 と耳打ちされる。


 わたくし環三千世は、しばしそのチャンスが成就する状況を想起したのちに、おそるおそるではあるけれども、ともかくその男性に声をかけてみる。


「すすす、すみません、だだだ旦那さん」


 ぼくにこう肩をゆすられた男性は、ぼんやりとした表情でこちらを見ると、


「あっ、すいません。寝ちゃってましたか――やっぱりここはステーションじゃなかったんだな……」


 といって、すぐ立ち上がった。足もとがふらついていた。男性に、


「だいじょうぶですか?」


 とまたぞろ声をかける。


「はい。ご親切にありがとうございます。ご迷惑をおかけしました。失礼します」


 男性はおぼつかない足取りではあったが、すんなり店を出て行った。


「ありがとうございました。助かりました」


 とお礼をいってくれた中西さんは、それでもふらふらだった男性に申し訳ないことをしたと思ってもいるようだった。そんな中西さんを察して、


「チーフ、さらにナニをナニするチャンスですよ」


 とまたモモヨくんは耳打ちしてくる。そして、


「あんなにふらふらだとちょっと心配なので、わたしたちで追跡してみますね」


 とぼくの腕につかまりながら中西さんに宣言してしまう。


 ナニできる可能性のさらなる高まりで判断力を失っていたぼくも、中西さんに、


「心配しないでください」


 というようなことを思わず述べてしまった。高まりはそれほど凄かったのである。マンモスがつくほど高まっていたのである。


 セブンでもローソンでもファミマでもない謎の変なコンビニを出たのちにあたりを見回すと、ふらふらの男性はもよりの横断歩道をちょうど渡っていた。


 男性は渡った先にあるコインランドリーで今度は仮眠を取るつもりらしく、われわれがしばし時間を置いてからコインランドリーに入ると、案の定男性は長椅子に横になっていた。


 ぼくと目が合うと、男性は起き上がったのちに後頭部あたりを恥ずかしそうに撫で撫でしている。


 ぼくはご存知のようにナニをナニしたいがために、かれを追いかけたのであって、べつに風紀を正すためだとか、そういう気持ちはさらさらない。


 かれに気の毒なことをしてしまったと思う。必要以上に反省してしまう。で、男性のとなりに腰掛けて、


「なにか困ったことでもあるんですか?」


 とつい、いってしまう。


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