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その二十九
わたくし環三千世は普通にワオキツネガラモンの言葉がわかった。会話はできそうであった。そんなわけで、かれらに声をかけてみることにする。
しかしいきなり男がちかづいていくと、警戒して槍で突いてくる可能性もある。噛みついてくる可能性もある。とりあえずぼくは、エロエロレギンスさんに手伝ってもらいながら女装することにした。ワオキツネガラモンは女性にはやさしいからである。
「これだったら、サイズ大丈夫じゃないかしら。丈関係ないし、三千世様スリムだし」
「キツキツだけど、なんとか入るね」
「お化粧もしたほうがいいわね」
「よろしくお願いします」
「うん、いい感じ」
「この衣裳、松坂慶子が『愛の水中花』歌ってたとき、着てたやつみたいだな」
「その人、バニーガールの格好でうたってたの?」
「そうだよ」
ぼくはお盆にティーセットを用意したのちにおニャン子の話をしていた先の二人組のところへ、まずはお茶をもって行く。
「お待ち~」
「おお」
「おひとつ、どうぞ」
「すみません」
「ねえ、旦那さんたち、わたし知りたいことがあってよ」
「なんですか?」
「旦那さんたちは、どうしてお城を取り囲んでいらっしゃるの」
「それは、幕府の奴らが勝手なことをやってるからだよ」
「勝手なことって?」
「おれたちの資産を勝手に輸出して儲けていやがるんだ」
「それは怒るのも無理ないわね~」
「だろ」
「どんな資産なの?」
「まあ一種のたまごみたいなものかな」
「たまご?」
「ガラダマ。本家さんのほうは隕石だけどね。お姉ちゃん、『ウルトラQ』っていう特撮番組観たことないかい?」
「あってよ」
「じゃあ、わかるだろ。十三話なんだけどさ、ガラモンがガラダマっていう隕石から生まれてるんだ」
「うんうん――なんかそれ、『特撮紀』のころに観た記憶があってよ」
「おれたちはワオキツネガラモン族だから、本家のガラモンとはちょっとちがって、ガラダマを産んで砂の中に埋めておくんだ」
「ガチガラモンもガラダマから生まれるのかしら?」
「うん、そう。やっぱりガラダマを産んで、ガラダマから生まれる」
「ガラダマを幕府が勝手に輸出してるとしたら、旦那さん方が攻めてきたとき、さすがに気づくはずよね……」
「いくら陳情しても、ちんぷんかんぷんって表情で、しらばっくれていやがるんだよ」
「ねえ、お二人さん、わたし、事務方のほうにきいてみるわ。よくって?」
「おお、やってくれれば助かるよ」
「いったん、帰るわね」
城内にもどると、ぼくはエロエロレギンスさんに〝ガラダマ〟のことを伝え、藤吉郎様に確認してもらうことにする。しばらくすると、エロエロレギンスさんはもどってきた。
「ガラダマなんて輸出してないそうよ」
「やっぱり」
「輸出してるのは〝辛玉〟のほうだって、親方様いってたわ」
「カラタマって、あのラーメンに入れるやつのあれだね」
「そうそう」
ふたたびぼくは「愛の水中花」の格好で、二人組のところへ出向き、辛玉のことを伝える。すると二人組のワオキツネガラモンたちも、
「そういえば、決起する直前に辛玉のことをぼそっといってた奴、寮に一人いたな……」
「ガラダマ、カラタマ――こっちの早とちりだったのかもしれない……」
と認めて、自分たちの上役に報告しに行った。




