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その二十二
藤吉郎様が、
「蜂須賀という者が責任者ですから」
と慌ただしく帰っていくと、入れ替わるようにその蜂須賀さんたちがVHSの引き取りにやってきた。リヤカーに手際よくダンボールを積み込むと、やはりこちらも慌ただしく去っていく。
蜂須賀さんは作業員に荒っぽく指示を出していた。リヤカー係は大勢いたが、エロエロレギンスさんの姿はなかった。
「さて、キャプチャでもやるか」
「蜂須賀さんて、怖そうでしたね、チーフ」
「うん。武闘派って感じだったね」
最初のキャプチャ作業を終えてVHSをすげ替えたさい、ビデオテープを切ってしまいそうになった。
常時稼働している十台のビデオデッキのうち二台が、いよいよいけなくなっているのである。そんなわけで、この二台はいったんパソコンから切り離して修理に出すことにする。キャプチャ作業を本業としているわたくし環三千世は、腕の良い修理屋さんを知っているのである。
実家に行ってクルマを借りてこようかともすこし思ったが、つぐみさんにはお金を借りたばかりだし、一人暮らしの妹もきっときょうは仕事なので、けっきょく毛布でデッキを包んでまたぞろ自転車でもって行くことにした。
わたくしチーフは、何度かこの方法で運搬しているのである。ビデオデッキはいまでは貴重品なので、慎重に一台ずつ運ぶことにする。
「チーフ、わたしも手伝います」
「大丈夫だよ。べつに急ぎじゃないし、修理屋も遠くないから」
最初の一台を、
「スーマリさん、またお世話になります」
と修理屋に手渡すと、すぐまた屋敷に引き返してデッキを毛布で包んだ。ちなみに〝スーマリさん〟とはこの技師の愛称である。おそらくゲーム関係のものも修理しているので、そう呼ばれているのだろう。
二台目のデッキをもって行くと、受付のところで客がスーマリさんになにか文句をいっていた。客はさっき作業員に荒っぽく指示を出していたこわもての蜂須賀さんだった。
「どうしたんですか?」
ぼくは蜂須賀さんに声をかけた。
「ああ旦那、先ほどは、どうも」
「こちらこそ。なにか修理ですか?」
「うん。さっき、通りすがりのヤクルトレディにこの店のことおしえてもらったんだけどよぉ、コイツ、ウチじゃ取り扱ってないって、ぬかしやがったんだ」
「その、もってるやつですか?」
「そう」
「おもちゃですか?」
「まさか。本物だよ。本物の火縄銃」
スーマリさんも困り果てていたので、ビデオデッキをスーマリ氏にあずけたのちに、とりあえず蜂須賀さんを昼飯に誘った。蜂須賀さんは、
「おまえ、おぼえてろよ」
とスーマリ氏にいっていたけれども、すんなり店を出てくれた。
「旦那、わるかったなぁ。オレ、腹減ってたもんだから、ついカッとなっちまって」
「わたし、あの技師とは知り合いなんです。だから、うまくいっておきますよ」
「じつは親方に『こっちにいるときは行儀よくしてろ』って、釘刺されてるんだ……」
蜂須賀さんが、
「ここがいい!」
というのでラーメン屋に入る。ラーメンはあまり好きではないのだが、仕方ない。蜂須賀さんは激辛ラーメンの大盛りとライスの特盛りと餃子三人前を頼み、ぼくはチャーハンを注文した。
「しかし、火縄銃なんか、どうしてもち歩いてるんですか?」
ぼくは蜂須賀さんが激辛ラーメンをある程度食べて特盛りのライスと餃子に取りかかったときにこうきいた。
「もちろん討ち取るためだよ。敵方の親玉をさ」
「敵方?」
「うん。いまおれたちの国の城が包囲されてるのは旦那も知ってるだろ」
「ええ、籠城してるんでしょ」
「うん――で、まあ、その包囲してる奴らの親玉が、このあたりに潜伏してるかもしれないんだ」
「名前は?」
「そういうのは、なにもわからないんだ。顔もわからん。だけどあいつらの親玉なんだから、やっぱりあんな感じでバカ面してんじゃねえかな。おれはあいつら、みんなおなじ顔にみえるぜ」
「敵方の兵の写真とかはあるんですか?」
「おお、それなら腐るほどあるよ」
ぼくはその一枚を受け取る。敵方の兵たちはどうみても、このあいだややぽちゃロリ熟女さんがスマホでみせてくれた三原監督作品の「ワオキツネガラモン」だった。




