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その二十
公園の水道で顔をバシャバシャ洗ったのちにコーンスープを買いに行く。三原さんが眠り込んでいたあのセブンでもローソンでもファミマでもない謎の変なコンビニは公園からも屋敷からも微妙な距離にある。
しかし中西さんのお姿を拝見できるのである。中西さんだって小柄系女子なのである。各ランキングの常連なのである。ぼくは道すがらにあるスーパーを躊躇することなく通りすぎた。
「おーい」
背中からぼくを呼ぶ声がした。モモヨくんだった。
「おかえり、モモヨくん」
「ただいま、チーフ」
「プラッシーみつかったかい?」
「みつかりませんでした」
「そっか……」
「どこに行くんですか?」
「中西さんがはたらいているあのコンビニ。モモヨくんのコーンスープ、一つ勝手に飲んじゃったから買っておこうと思ってね」
「あれはわたしのじゃないですよ」
「だれの?」
「だれのでもないですよ。恩師からもらってるお金で買ったんだもん」
「じゃあ、補充しなくてもいいか」
「うん。わたしポタージュのほうだけど、いま買いましたよ。安くなってたから」
プラッシーがみつからないのに予定より早く帰ってきたのは、新しい猫対策の詳細を恩師よりきいたからみたいだ。
「もうすぐ業者さんがあのチューリップみたいな花をぜんぶ摘んでくれるんだって。チーフ知りませんか?」
「そういえば、去年もやってたかもしれないな。蔵の横っちょにあるコンポスターに入れておいてくれるんだよ」
コンビニに行くのはやめて、まっすぐ屋敷にもどる。そして入浴する。ランニングのあとはまず風呂である。風呂に入っているあいだにモモヨくんは先ほど買った食材で晩飯のおかずになるようなものを何品かチャチャッと作ってくれていた。
わたくしチーフは米焼酎用のお湯を用意しただけである。モモヨくんにもお湯割りをつくってあげる。
「はい」
「ありがとう」
グビリとやったモモヨくんは、
「向こうで、ちょっと気味わるいことがあったの」
と話しだす。モモヨくんは旅先で何度も忍者の格好をした人を目撃したという。
「女忍者? くノ一?」
「全員男の人。一人だけ黄色の忍者服の人もいたけど、その人もおじさんでした」
そんなわけで、わたくしチーフは忍者関連の経緯をざっと説明する。モモヨくんは、お目目をパチパチさせていたが、
「なんだ、そうだったんですね――」
とそれでもいちおう納得してくれた。わたくしチーフは、
「明朝その忍者軍団を雇っている親方みたいな人が屋敷をたずねてくるんだ」
とも伝える。超小柄なかわいい妹弟子は名前をきいてきた。
「竹膳藤吉郎様――わすれないうちに書いておこ」
ぼくはこの人がバイト清掃員から五十万石の大大名に出世したこともおしえる。モモヨくんはさらにお目目をパチパチさせていた。




