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その十八
たまたまコースをその後もお願いしていたぼくは、
「あはははは。それもすごい話ですね」
と楽しみながら、つい早めのペースで酒を飲んでいた。いつもお客にあん摩マッサージばかりしているややぽちゃロリ熟女さんは、
「他人をほぐしてても、自分はカチコチにこっちゃってるの」
とのことらしく、だから一杯機嫌のぼくは奥の間の布団で、ややぽちゃロリ熟女さんにマッサージをしてあげた。
「んー気持ちいい」
「痛くないですか?」
「大丈夫。いた気持ちいい。三千世くん上手ね」
冷飯生活の長いぼくは、要所要所で祖父や祖母にマッサージをしていたので、コツを知っているのである。生きる知恵である。マンモスジェントルマンを装っているのも一種の知恵である。
「マンモスムッシュもね」
ところで、ややぽちゃロリ熟女さんの顧客でいちばんひんぱんにあん摩をたのんでいるのは某博士だという。
フェイスメタン社という大企業から莫大な資金を提供されている博士はお金のほうもかなりもっている。だからややぽちゃロリ熟女さんは博士の犬の散歩もやっているのだ。
「あのロボット犬ですか?」
「そうそう。あれ、三千世くん、知ってるの?」
「ええ。じつは公園でロリロリさんのことを何度かお見かけしているんです」
ぼくは持参しているノートをややぽちゃロリ熟女さんにみせた。
「ふーん――〝ナニしたいランキング〟もあるのね。あっ、こっちにもわたし、ランクインしてるじゃない」
「そうなんですよ」
ぼくはこんなふうにある程度手の内をみせていたのだが、ややぽちゃロリ熟女さんはそれでも某博士の名前も居所もおしえてはくれなかった。博士から外部にもらさないよう、きつくいわれているらしい。
「たまたまコースでもこれはだめなの」
「そうですか」
某博士の居場所を知りたかったのは、エロエロレギンスさんが公園の奥の森みたいなところで博士を探しているからである。たしか上役みたいな人に命じられていたはずだ。
しかし大企業から莫大な資金を提供されて研究されているのであれば、よもやあんなところで仕事をしてはいないだろう。
「でもさぁ、三千世くん、わたしのことも天堂愛ちゃんのことも相当好きみたいだけど、けっきょくこの『3A』って子が、好きなんじゃないの」
「うーむ……」
「それともあれかな――3Aって、顔もAランク、性格もAランク、ハマグリもAランクとか、そういうことなの?」
「あはははは」
ややぽちゃロリ熟女さんはもう寿司隠語を使いこなしていた。ぼくは酒を飲みながらこちらの隠語をおしえていたのである。酒の肴にしていたのが刺し身だったので、ハマグリの意味も、それからついでにマフィンの意味も、ややぽちゃロリ熟女さんに説明したのだ。一杯機嫌だったからである。ロリロリさんは感心してきいていた。
料理屋〈むら野〉のどこかの部屋は、ほかの時空からこちらに来るさいの一種の駅(名称は奈々美ステーション)になっているらしく、
「じゃあ十七分の直行便があるから」
と午前一時をすぎたころ、ややぽちゃロリ熟女さんは鶴の間を出ていった。
コミュニティーバスはもうないので、ぼくは奥の布団で軽く寝たのちに翌朝帰ることにする。




