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その十五
天堂愛ちゃんがレオタードにヘルメットというお姿で屋敷に来てくれる夢をみた。
とりあえずぼくは、その姿の愛ちゃんを動画よりプリントアウトする。もちろんモモヨくんが出立するのを見届けてからである。
「おお、紙がいいと、やっぱりきれいだな」
味をしめたぼくは、そのほかにも三十五、六のころの松尾嘉代やショートカットのときの芦川いづみや「ロボット刑事」に出ているベテラン鬼刑事の娘の奈美なども印刷する。
「ごめんくださーい。ごめんなさい」
午後の一時すぎに三原さんがたずねてくる。三原さんはこのあいだのようなふらふらよれよれの姿ではなく、小綺麗でキリッとした面持ちになっていた。居間にあがってもらうと、手をついて、
「その節はほんとうにありがとうございました」
とお土産とお貸しした十万円をさしだしてくる。手をついているときから畳にひろげてある先の印刷物をちらちら見ていた三原氏は、
「これ花忍キャプター3かな。ちがうか……ゴーグルピンクか」
などともぶつぶついっていた。三原さんは愛ちゃんのあの神々しいお姿を特撮ヒロインのなにかと勘違いしていたのだ。
「バトルフィーバーJの女戦士はバトルピンクって、いうんでしたっけ?」
「ちがいます。ミス・アメリカですよ、三原さん」
「じゃあ赤の一号は、バトルレッドじゃなくて……」
「バトルジャパンです」
「デンジマンの赤は?」
「デンジレッド」
「サンバルカンのピンクは?」
「サンバルカンにピンクはいないんですよ」
三原さんが故郷に帰ったのちにすぐこちらにもどってきたのは、やはり例のコスプレバーにふたたび通うためだった。三原氏は今回はもよりのシェアハウスとも契約して、いよいよ本腰を入れてコスプレバーに臨むらしい。
しかし先の会話でも分かる通り、三原氏は特撮ヒーローの知識がぜんぜん足りない。ぼくにいわせれば、まだまだひよっこなのである。
「まあわたしもねぇ、一時期はダイアン・マーチンが最強だと思っていたんですけどね、でもこうやって年齢もかさねてきますとね、なんだかんだいっても東映版スパイダーマンの賀川雪絵がいちばんグッと来るんですよね。ほら、どうです?」
とぼくはプリントアウトした一枚を手渡す。三原さんは、
「うん、たしかにグッと来ますね――」
と感銘を受けていた。
三原さんはまだまだひよっこだということを自覚したのか、わたくし環三千世にお色気方面のアドバイザーになってほしいと、再度手をついてくる。
「わたしはアクション、とくに怪獣系のアクションにかんしては、かなりのものなのです。しかしお色気のほうはぜんぜん詳しくなくて……環先生は相当精通しているようですし」
「まあまあ、ある程度はね」
三原さんはぼくを先生先生と呼ぶので、ぼくは、それだけはやめてくださいとお願いした。しかし普通に名字で呼ぶのも申し訳ないとかなんとかで、しまいにはエロ大将軍的な呼び方までしてくる。こちらのほうがもっと嫌である。リアルである。
ぼくは妥協案としてモモヨくんがつかっている例の「チーフ」で今後は呼んでもらうよう要請した。三原さんは、
「わかりました、チーフさん」
とそれでもさん付けでわたくしチーフを呼んでいたが、まあエロドクターとかどスケベ大統領とかよりはよっぽどいいので、とりあえず黙認しておく。
「モテる男のモテモテノート術」という動画の影響でつけるようになった例のノートには〝グッと来るランキング〟というものも記してある。
きょうのぼくは、このランキングを指標にしつつ静止画の印刷作業を黙々とおこなっていたのである。
三原さんはこちらのノートもおもむろに読みだしていた。勉強熱心である。
「あれ、チーフさん、この女性にたいして、三十五、六の松尾嘉代よりもグッと来てるのですか?」
勉強熱心な三原氏はさっそくアドバイザーに質問してくる。
三原さんが着目していた女性は、公園でたまにみかける幼稚園の先生みたいなエプロンをつけたややぽちゃのロリ系熟女さんのことである。
じつをいうとわたくし環三千世は、三十五、六の松尾嘉代よりも和服姿の若尾文子よりも、こちらの熟女さんのほうにグッと来ているのである。
幼稚園の先生みたいなエプロンをつけたややぽちゃロリ熟女さんは、それほどの逸材なのである。とてつもないのである。マンモスプリピーなのである。
「幼稚園の先生みたいなエプロンをつけた女性って、三つ編みじゃない、こんな感じのおさげの髪型ですか?」
「ええ、そうです」
「でしたらわたし、きのう会いましたよ」
「ええええええええええええええええええええええ! どどど、どこどこ、どこでですか? どこでですか?」
「わたしの家です。その人は、あん摩師なんですけどね」




