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その十四
台所からもどってきたモモヨくんは、
「そういえば、天堂愛ちゃんのサイン会、やってましたか?」
ときいてきた。とりあえずぼくはエロエロレギンスさんのことはいわずに、ただ、
「やってなかったんだ」
とだけこたえておく。
「残念でしたね。せっかく遠出したのに」
「うん……」
生の天堂愛ちゃんを拝めなかったのは、ほんとうに残念である。マンモス無念である。ぼくは愛ちゃんが出ているドラマを自分のパソコンで再視聴する。
今回観た第五話での愛ちゃんは、ドラマの中盤レオタード姿でエアロビックダンスを踊っている。するとそのダンススタジオに愛ちゃんの恋人があらわれる。危篤状態にある愛ちゃんの祖父のところへバイクで送ってあげるためだ。
バイクを走らせている恋人にしっかりつかまってCMあけに病院に到着した愛ちゃんは、ヘルメットも取らずに病室にすぐ駆け込んでいく。そして、
「おじいちゃん」
とシールドをあげる。そのときの愛ちゃんは、
「うーん、いい勝負だけど、やっぱり愛ちゃんのほうが上だな」
さっき見た夕子ちゃんよりもさらにヘルメット姿がかわいかったのだった。ヘルメットランキングの一位であった。レオタードにヘルメットの組み合わせは奇跡であった。女神であった。そしてマンモスプリピーであった。
夕方いつものように公園で五キロほど走る。国元に帰ったであろうエロエロレギンスさんにも年配の旦那にも会わなかった。幼稚園の先生みたいなエプロンをつけたややぽちゃのロリ熟女さんも見かけなかった。
屋敷にもどって入浴する。湯に浸かりながら、ややぽちゃロリ熟女さんは何故ゆえにあれほど魅惑的なのだろうと長考していると、モモヨくんが、
「酒屋さんの場所わかりました!」
と浴室の引き戸越しにいってきた。
「おお、すごーい。例の後輩の子がみつけたの?」
「はい。わたしさっそくあした行ってきます」
恩師の書斎にはチューリップのオブジェがいくつもある。モモヨくんはそんなところからユリノキの花が荒らされるのを過剰に警戒しているのかもしれない。真面目なのである。勤勉なのである。
風呂からあがって晩酌をやっていると、三原さんから、
「お金を返しに行きたいのですが、あしたの午後以降のご都合はいかがですか」
うんぬんというメールが届いた。あすモモヨくんは調査に行くので、お昼ごろはぼく一人だが、予定といってもキャプチャをするくらいなので、
「お待ちしてます」
と返信する。
「三原さんて、島の人なんでしょ」
「うん。たしか八丈島だったかな……わすれたけど」
「片道だけでも五万ちかくかかるんだもんね」
「またコスプレバーに通うのかな」
「たぶん、そうよ」
酒屋兼スプーン曲げ教室は遠くてアクセスもわるいらしく、
「二泊くらいしないと、あの農家ふうのおウチ、みつけられないかも……がんばらなくちゃ」
とモモヨくんはまたぞろお手手をグーにしていた。




