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その十三
エロエロレギンスさんは、きつねうどんのおあげはいつも最後に食べるようである。
「いただきます」
と再度いったのちに、いよいよ大トリのそのおあげにかぶりつく。すると、おあげのなかにはどういうわけか、うどんがぎっしり詰まっていた。
「ほらね」
「うん、たしかに」
なんでもそれは国元で不吉なことが起こる前兆なのだという。
「すみません。わたし、すぐ国に帰らなくちゃ……」
「わかりました――たいへんだね」
「親方様にキャプチャのこと、申し送りしてもいいですよね」
「どうぞどうぞ」
くノ一のお嬢さんは店を出ると、あっという間に走り去ってしまった。忍者という稼業も忙しそうである。隠者とは大違いである。
屋敷にもどると、モモヨくんはパソコンの画面を凝視しつつキャプチャの作業を粛々とすすめてくれていた。ぼくは先のどくだみの情報をともかく告げる。
「でも、樹樹どくだみより、お米のとぎ汁のほうが、もっと効果があるみたいなの」
「そうなんだ。まあ問題はプラッシーのビンだよね」
「ビンもみつけられるかもしれないんです」
「え!」
「チーフ、これ観てください」
モモヨくんはいま観ている動画を検討するよう促してきた。動画は恩師のVHSをすでにキャプチャし終えてデジタル化されたものであった。レポーターがいきなり民家に突撃して昼飯だか晩飯だかを見せてもらう昔の番組である。
ある農家ふうの家にダミ声のレポーターがいきなり踏み込んでいくと、そこのお母さんは、お盆に用意した晩御飯をちょうど息子に持って行くところだった。
「ここから、注意して観てね、チーフ」
しかし息子さんはお母さんによると、失恋のショックで、ひと月ばかり裏の納屋にひきこもってしまっているのである。
ダミ声のレポーターはそれでもお母さんに引っ付いて行く。そして納屋のなかにも騒々しく入っていった。
息子は納屋のなかに用意されてあった簡易ベッドにもぐりこんだまま、ひたすら沈黙していた。
「ほら、これ」
「あ!」
モモヨくんが一時停止した画面の簡易ベッドの足場には、たしかにプラッシーと思われるビンのケースがもちいられていた。息子は土台代わりのケースの上に板を敷き、さらに板の上にマットレスと布団をセットしていたのである。
番組の途中に入っていた相本久美子のエメロンスキンクリームのコマーシャルから推測するに、この放送が昭和五十九年よりまえだということは確実だった。
「しかし、ここはどこだろ? 東北のほうかな……」
モモヨくんはそれもしっかり見当をつけていた。この農家ふうの家のまえに突撃した家は、一階が酒屋で二階がスプーン曲げ教室だったのである。
酒屋の看板もスプーン曲げ教室の看板も一瞬ではあるが画面に映し出されていた。こちらの店も現在例の後輩さんが調べてくれているとのことだ。
失恋しているこの息子も、いまはけっこうな年齢だろうし、あんな間に合わせのベッドだってとっくに片付けているはずだが、モモヨくんは両手をグーにして完全にこの線を調査する気でいるのだった。
「あっ! お昼食べるのわすれてた。そうめんでも茹でようかな。チーフ、お昼食べました?」
「うん、食べた」
「なに食べたの?」
「ん! ええとね、あ、あれだよ、コココ、コンビニのパン」




