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200.合流

 ケンタウルス座アルファ星に東域宇宙和平維持連盟所属のおうし座アイン星人が作った人工惑星C2。

 そこは地球人の移民星になっていて今は北方星域星人が東域宇宙を支配する目的で利用されたシュー・ウォッシュナビが使える妖精さん達も一緒に住んでいる。

 スターキッドをここまでテレポートさせたアイリーンは力を使い果たして昏睡状態に陥っていたのだけど仲間がそれぞれ回復の言葉を掛けたりしていたので思っていた以上に早く目覚めることができた。

 まあ昴くんがアイリーンの鼻先まで持ってきた夕食の薬膳料理が如何程の効果をもたらしたのかは不明なのだけど。

「愛鈴もう大丈夫かい」

 料理を盛ったお皿を横に置いてアイリーンに手を貸してカプセルベッドから引き起こす。

「良く寝たと思うのだけど頭がボーッとしてるのよねどれくらい寝ていたのかしら」

「う~ん、そうだね6時間くらいかな」

「それは寝不足だわもう少し寝たいのだけどお腹が空き過ぎてこれ以上は我慢できないわ、うちの分のご馳走は残してくれてるのよね」

(そうだよ『ご馳走』って寝起きの挨拶みたいに言うとは思っていたけどさ一体どんな夢を見てたんだろう、ちょっと知りたいかも)

「ここに持って来ているんだけどさ休憩室で皆と一緒に食べようよ僕もまだなんだよね」

「わかったわ、それにしても倉庫のカプセルベッドってまだ置いてあったのね懐かしい限りじゃないかしら」

「そうだよね僕もこれからピエロに聞こうと思っているんだ、さあ晩ごはんが冷めないうちに休憩室へ行くよ」

「えっ? 今なんて言ったのさ『晩ごはん』って、うちは今起きたのよ朝ごはんの間違いじゃないかしら」

「愛鈴はどんな夢を見ていたんだい」

「夢の話かしら、まあいいわうちは固いベッドで寝てたわ夢も見ないほど真剣にね、そこへあなたが来て悲しそうにうちの名前を呼んでいるの、まるで死んでしまったみたいにね、それでお供えまでされたのよ、それが豪華な御馳走でねこのまま寝ていたら食べ損なうわって思って目を開けたらあなたが居たってことなのよ」

「僕たちがお祈りをしていたから悲しい夢を見たのかなあ悪かったのかも知れないね、でも光の精霊さんが回復させていたのは確かだから目が覚めるのも早くなったんだと思うよ」

「眠れるお姫様を目覚めさせるのは王子様の役目だったかしら……一体何をしたんだったかしらね」

「・・・」

「冗談に決まってるかしらね、あっ、そんなことより振り切れたのよね、ジャンプは上手くできたかしらBちゃんの側まで跳べたんじゃなくて」

「うん、B99からは4光年離れちゃったけどね、今はC2に新しく作られた妖精ドームに着いているんだよ、さっきまでシュタインさんの所でこれからの打合せをしていたんだ君は力を使い果たして眠っていたから置いていくしかなかったんだよ」

 昴くんは自分でも何故だかわからないまま涙が溢れ出している。

「あなたいきなり何を泣きだしているのよ、うちは大丈夫っていつも言ってるでしょうほら前にもバーナード星まで7光年」

「その話はもう何回も聞いたよでもあの時は愛鈴一人だけだったじゃない今回はスターキッド毎なんだよ力の使い過ぎで死んじゃうかも知れないと思ったんだからね」

「そんなことはないわでも死んだように眠っていたのは本当かも知れないわね夢の中で皆が呼びに来なければずうーっと眠ってたと思うわ、そんなことよりさあ朝御飯でも晩御飯でもいいから食べに行くわよ」

 アイリーンがそう言うとつかつかと昴くんの傍へ来て手を掴み倉庫から出ていく。

 二人が休憩室に入るとそこでもまたひと騒動が始まった。

 その頃のB99では石橋艦長がアイリーンの事で頭を抱え込んでいる。

「約束の48時間はとっくに過ぎているのに連絡ひとつ入ってこない」

「スターキッド反応ありません」

 通信士からの報告が録音機によるリプレイみたいに感じた。

(もしかしたら超光速飛行で過去へ跳んだんじゃないだろうな、いやいやそんなことに気付けば光速飛行で今の時間軸に戻って来るはず、小隕石に衝突して消滅したなんて最悪の事態は考えないとしてもどうしたものか)

「あっそうか、全方位通信信号発信及び傍受に変更」

「了解しました。現在実行中」

(仕事が早い奴は好きだな)

「ケンタウルス座アルファ星方向よりスターキッドのものと思われる微弱電波受信、指向性に切り替え増幅させますか」

「許可する」

「こちらスターキッド緊急連絡、応答願う」

(これは明らかに録音による自動リプレイ通信だな、こっちに帰らずアルファ星に向かったのかな)

「私が応じるから通信接続する」

「了解、だけど自動音声ですよ返事しますかね」

「どうせスターキッドAIがサボってやっていることだろうから大丈夫だろう」

「こちらB99からスターキッドへ現状報告願う」

 しばらく待つとスターキッドAIからの報告が艦橋内で流されていく。

(なんということだ全員無事とあるが今度からアイリーンには責任者教育も必要だなもしレヴィ姫に何かあったらと思うと恐ろしいぞ)

 石橋艦長は海王族の男性全てが龍に変身できると思っていた。

「進路をケンタウルス座アルファ星よりエリダヌス座アケルナルへ変更する」

「「了解」」

 石橋艦長が発すると艦橋内全員が応じる。

「前方60光秒進路上障害物無し」

「全速前進」

「「了解」」

「ランデブー予測時間を出しますか」

 航海士ヘンリーが聞いてきた。

「無駄だからしなくていい」

「コスモホールの発生状況により大きく変わりますからでしょう」

 艦長補佐のフィリッツが艦長の言葉を補足する。

「ああその通り、今までの最短記録はスターキッドが持っている1年間になっている、いくらなんでもそれを切ることはないだろう」

「スターキッドがトンネルを利用しないで全速力で飛行したとしたら5年掛かります。だから予測するなら1年から5年いえ、光速時差を考慮すればそれ以上でしょう」

 ヘンリーが先程拒否された内容を話す。

「そんなの予測とは言えないのではないかな、まあそうだな時間を気にせず追い付かれるのを気長に待とうかアケルナル方面へ伸びているトンネルがあるにしてもそこに到達するまでには追い付いてくるだろうからな」

 石橋艦長が脱力した表情を見せる。

「そうですよアイリーンだったら『カタツムリとチーターの競争よ』とか言い出しそうだとは思いませんか」

 艦橋主任のゴートさんも会話に加わった。

「そうですね例えるならカタツムリが10年掛けて進んだ距離をチーターなら1日で追い付くということです」

 後ろから声を掛けられた石橋艦長が振り向くとそこにはアイリーンから留守を任されているダイム、セント、ルビーの三人が立っていた。

「これからの事を打ち合わせしたいのですけどお時間ありますか」

 ダイムが続けて言う。

 B99はカイパーベルトの外縁部に沿って太陽風の影響を最大限利用して飛ぶことができる軌道を進んでいる。

 それから3年が経過した頃になってスターキッドが太陽系から1千億Km離れた恒星間宇宙を飛んでいたB99に追い付く。

 C2で30人の妖精さん達と共に乗り込んできたロースさんがシュー・ウォッシュナビを使ってB99まで跳ぶことを提案してきたけどアイリーンがその力は本来の目的のために温存するように促している。

 合流してから目的地アケルナルまでの距離はまだ百万分の一にも達していないと予測できたから。

 それに今回は太陽系とプロキシマ・ケンタウリ間に発生していたコスモホールが最大限にまで伸びてきていて経過時間の殆んどは光速時差によるもの。

 つまり石橋艦長は3年待ったのだけどスターキッド艇内時間は1週間しか経っていない。

 スターキッドは2日飛んでコスモホールに入り太陽系手前に出てそれから5日でB99に追い付いていた。

 ただここで改めて、AIがいつも自画自賛して光速スターキッドの最高速度は光速の80パーセント最大速度は光速をも超えると言っていることを思い出して欲しい。

「こちらスターキッドアイリーン、B99石橋艦長応答願います」

(ここは他に誰も居ない宇宙なんだからこんな格式張った挨拶は必要ないと思うのだけど礼儀だから仕方ないのよね、向こうの艦橋に居るゴートさんの耳が怖いかしらね)

 アイリーンは苦虫を噛み潰したような表情をしている。

「こちらB99艦長石橋、アイリーン無事で本当に良かった。いつもの場所にドッキングして問題ないビーコン誘導開始する」

「ちょっと待って、今回は妖精さん達を真っ直ぐナチュラルエリアへ案内したいのよだからいつもの場所じゃなくてハンガーに入れるかしら」

「了解した。だが光精霊は大丈夫なのかね」

「コウちゃんなら大丈夫よ今はスターキッドの中に居るわ」

「コウちゃんとは一体何か教えてくれないか」

 石橋艦長が確認を求めてきた。

「詳しい説明は後からでも良いかしら、コウちゃんがコウちゃんに進化して一緒だから大丈夫なのよ」

「???……それでサブキャプテンの昴くんは元気にしているかね」

「昴くんとお話しがしたいのねちょっと待っていま代わるわ」

「代わりました昴です。キャプテンが言っていることを訳しますと外で回っていた光精霊がヒト型の光妖精に進化してスターキッドの中に居るのでこのままハンガーに入っても問題なく大丈夫ですということです」

「わかった取りあえずハンガーの着艦スペースよりビーコン誘導する。それとささやかな歓迎会を開きたいのだけど……その妖精さん達も我々と同じものを食べるのかな」

「食べられないことはありませんけど僕たち地球人の生気を吸収して生きてるみたいです。だから食事の用意は不要です」

「ああ、わかったことにしておくよ今は詳しく聞かないでおこうか、ではハンガーで会おう……通信終わり」

「えっ、あっ、スターキッドキャプテン代行豊福昴通信終わり」

 昴くんは済まなさそうにアイリーンを見てから副操縦席に沈んでいく。

  挿絵(By みてみん)

  ロースさん、コウちゃん、エントリーさん


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