198.C2
「こちら東域宇宙和平維持連盟所属スターキッドキャプテンアイリーン代行豊福昴、人工惑星C2統括支配人シュタインさん応答願う」
スターキッドはアイリーンが失態をやらかし海王星宙域からプロキシマケンタウリまでテレポートしていた。
アイリーンは能力を使い果たして昏睡状態に陥ってしまったので地球人の移民星として作られた人工惑星C2へは昴くんが連絡している。
「こちらC2シュタイン久しぶりだな昴くん、キャプテンアイリーンは君に連絡を任せて何をしているのかな」
「キャプテンは現在過労でお休みしています。入港申請したいのですが可能でしょうか」
「そうかそうだよなスターキッドが突然目の前に現れたので驚きはしたけどな、直ぐにイノマン博士かアイリーンがとんでもないことをしたんだろうとは予想したよ、そうかアイリーンがテレポートしてきたんだなそれで一体何処から跳んできたのかな」
「実は海王星宙域でちょこっとジャンプするつもりだったんですけどね気が付いたらここまで来ていたんですよ」
「それはまた無茶をしたものだ4光年を一瞬で来たのなら負担も大きいだろうな設備が整ったこっちで休ませたらどうかな」
「ありがとうございます、でも大丈夫だと思います。以前バーナード星までの7光年跳んだって自慢してた時は1日半眠っていたと言ってましたからこのままの状態で寝かしておこうかと考えています」
「そうかそれならその方がこちらとしても助かるかな、なにしろ急なことなのでアイリーンが大好きな宴会の準備なんかが間に合わないからな」
「いえいえお気遣いなくお願いします。ただひとつだけお願いがありまして、実は現在スターキッドの周囲に光精霊が集まっているのです、だから刺激しないように建物内へは入りたくないので他に適当な場所を提供して頂けないでしょうか」
「確かに光精霊が纏わり付いているな……エントリーと相談するからしばらく上空待機お願いできるかな」
「了解しました。連絡をお待ちしてます」
昴くんがふーっと吐息しながら副操縦席に沈む。
(久しぶりのキャプテン代行は疲れるなあ、言葉遣いにも気を付けないといけないしなあ)
「今みたいな遣り取りの仕方をアイリーンに教えてあげてよ、毎回毎回ひやひやしながら聞いているこっちの身のことも考えて欲しいよ」
スターキッドAIがいつものように愚痴を言う。
「こちらも石橋艦長への説明と連絡終わりました。アイリーンさんに『くれぐれも無茶をせず養生して欲しい』と伝言を受けました」
「アシュラさんありがとう、あとは留守番隊にどう説明するかだよな」
「あっちにはルビーが居るじゃないですか今リアルタイムオープン接続、いわゆるどちらからも覗き見状態ですから……あっ、怒った」
「いつも接続拒否してるルビーも心配してくれていたんだね良かったよ、リアルタイムならあっちの日常もわかるのかなあ良かったら教えてよ」
「他愛ないいつもの平凡な日々を過ごしていますね」
「よかった、平穏無事って聞くと心が安らぐよ」
「こちらC2エントリー、スターキッド応答どうぞ」
下からの連絡が入ったのでスターキッドAIとの会話を終らせアシュラに目配せした。
「こちらスターキッド通信士アシュラ、感度良好」
「スターキッドはビーコン誘導に従い妖精ドーム入り口へドッキングしてください、それと昴くんに代わってくれませんか」
「エントリーさんお久しぶりです。今は眠っている愛鈴はあなたの大ファンなんで凄く残念がると思います。それでご用件はなんでしょうか」
(エントリーさんはウッディ族の妖精なのに強そうでなんだか恐いんだよな、怒らせないようにしようっと)
「君たちが不老の加護を受けていることは知っている。だけど過労で死ぬことはあるのだよアイリーンにいくら言っても聞かないだろうから君が制止しなくてはいけないのだからね」
「分かりましたこれからは肝に銘じて十分気を付けます。こちらはスターキッドAIのオートパイロットで着陸します」
「C2了解、ドームで待っている」
「通信終了、ビーコン受信、オートパイロット移行準備完了」
アシュラがテキパキと言う。
「了解、スターキッドAIあとは任せたから宜しくね」
「ラジャー、お任せあれキャプテンはいつも自分の経験値を上げないといけないからとか言って僕には任せてくれないから腕が鳴りますよ」
「ちょっと待ってその言い方だとスターキッドAIが単独でドッキングするのって初めてなんじゃないだろうね」
「失礼な始めてではありませんしたとえ初めてだとしても優秀なAI様が間違えることはありませんよ」
(何だかかえって不安になってきたよ~、やっぱり僕が操縦した方が良いのかなあ愛鈴の気持ちが目に見えてわかる気がする)
「ビーコン誘導に従うだけだから大丈夫の筈だあまり心配するとハゲるぞ」
ピエロから助言を頂く。
(不老なんだからハゲないとは思うんだけどさ、もしかしたら若ハゲって老化とは関係ないのだろうか不安だ)
昴くんが頭の毛を気にしている間に妖精ドームとのドッキングは完了し検査官が来るのを待つ。
今回、艇内の査察は省略され検疫だけがドッキングハッチがある倉庫で行われた。
入場する三人に異常がないので検査官はそのままドーム連絡通路へ引き返す。
「ごめんピエロさん一人に留守を任せてしまって愛鈴を宜しく頼みます。では行ってきます」
「何を言うー、留守番役はいつも僕一人だったのにそんなに優しい言葉を貰った覚えはありませんよ」
スターキッドAIがすねて室内照明を少し暗くした。
「あーっごめんよ、いつもありがとう今回は二人だから君が留守番隊長だね」
「留守番隊長任されましたー」
機嫌が直ったみたいで室内が明るくなり虹色の輝きも加わっている。
「光精霊が入ってきてるのかなあ」
「アイリーンのことを心配しているみたいですよ、ピエロさんの時みたいに回復を試みて下さると良いのですけど」
レヴィは精霊の気持ちが分かるという特技も持ち合わせていた。
「レヴィもずっとアイリーンに回復の祈りを捧げていたけど大丈夫、疲れてない?」
「私のせいでこんなことになってしまったのですから少しでも早く回復されるようにと祈ってましたの」
「ありがとう、さあ一緒に行こうか」
ピエロに見送られ連絡通路に入っていく。
「久しぶり昴、アイリーンの姿が見えないのだけど何かあったのか」
ドームへ入った途端に炎族妖精ロースの歓迎を受け精霊獣フレアホースが以前の定位置になっていた左肩に乗ってきた。
「わあ、ロースさんにフレアホースさんお久しぶりです。前回は挨拶もしないで帰ってしまってすみませんでした」
「7年前の事か」
「あの時は九論さんの策略でコールドスリープさせられて気が付いたら冥王星だったんですよ、僕たちにとっては時差のせいで3年前の事なんですけどね」
「時差とは何だ?」
(僕にもよくわからないんだよな)
「あー、上手く説明できないけどロースさんは7年前と言ったけれど僕たちには昨日の事なんだよって言ってわかるかなあ」
(実際には違うしもっとややこしいんだよな)
「私にはわからないが……時の精霊に聞けば分かる筈」
(と、時の精霊って聞いたこともないけどなあ)
「その精霊って時間を自由にできるのかなあ」
「時の精霊と精霊使いが居ればできると聞いたことがあるが近くには居ない。アイリーンも隣に居ないがどうかしたのか」
「愛鈴はここに来るのにテレポートしてしまってね体力を使い果たして寝ているんだ」
「そうかそれなら、回復させに行っても良いか」
「そうだねでも今は多分光精霊が回復してくれていると思うからもう少ししてから一緒に行こうよ」
「やはり光の精霊が居るのか気配を感じていた……そうか私たちはもうお役御免で今回は別れ話を持ってきたのか」
「昴くんは新しい方と結ばれるために古い友人を切り捨てにされる人ではありませんわよ」
レヴィが1歩前に出て庇うように言う。
(どこの誰からこんな言い回し方を教わったのかなあ)
「あなたから弱いが精霊の力を感じる」
今ここに居るロースがレヴィに会うのは初対面になっている。
(あっ、以前に会ってるロースさんとフレアホースはパラレルワールドの別次元に居るんだったよな無事に生きてるといいのだけどな)
昴くんはレヴィさんに目配せすると心得てますと言わんばかりに頷く。
「名乗りが遅れましたわね、初めてお目にかかります私は海王族のレヴィと言います。これから宜しくお願い致します」
「水の精霊の気配」
「はい私たちは遠い昔、ウンディーネを母として人との間に生まれた子供がその後宇宙人に保護されてからの子孫になります」
レヴィが身に纏うシーツの裾をめくり上げて人魚の足を見せた。
(えっ、そんな話は初めて聞いたけど……)
昴くんは驚き落ち着くためとやり場のなくなった目を反らして遠くを見るとその光景で更に度肝を抜かれる。
「へっ、ここのドームって今こっちに向かって来ている妖精さんのために作ったんだよね、何でこんなに大勢の妖精さんが居るのかなあ、あっ、人も居るの?」
「おかしなことを言う、みんな予定通り1年前ここに来た」
(あれー、そうだったのかなあ光速時差の解消方法を見つけるまでは結構気にしてたんだけどなあ)
「そ、そうだったね記憶が混乱していたよ」
前回ここへ来た時はまだ光速時差の解消方法を知らなかったので冥王星までの帰り道で3年の時差が発生していた。
ドームの中を四人で歩き中央の建物へ入る。
「ようこそいらっしゃい昴くん、ここ妖精ドームには隣の受け入れドームで生活する人達の中から優しい感性を持っている人を選りすぐって来てもらっています。だから妖精達にとっては癒しの環境になっていますし新しい精霊も芽吹き始めました」
管制塔入り口で迷彩服に身を包んだエントリーが出迎えた。




