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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第九十四話 『国』と、家族を失った男を救う旅立ち

 ガルーダ国王がモズ国に旅立つ日、城の職務室にて、アルバスとストリを呼び、最後の打ち合わせをする。


「アルバス、今の状況を説明せよ」

「はっ、現在コンカ家は全員リューゲル国の本宅にいます。

 しかし、港にてコンカ家名義とされている高速艇があると確認」

「商人とはいえ、ただの貴族が高速艇か……おそらくモズ国が用意したものだろうな」

「カルガノは港にて国王のお見送りをした後、高速艇にてモズ国へ先回りする予定だと、連絡が入っております」

「そうか……ギブスはしっかりとやってくれているか」

「……はい、うまいことカルガノの懐に入れたと聞いています」

「バッセルがフォローし、ギブスの精神的な支えになってくれています。

 ……コンカ家を誇りに思っていたギブスには、辛い現実だとは思いますが――」


 今の状況をギルドで見守っていたストリは、そこまで言うと息を吸い込み確信を持った声色で言葉を続けた。


「彼らなら、絶対大丈夫です」



 場所は変わりリューゲル国の港、ここからモズ国に行くには遠すぎるため、一旦ファルケ国に寄る必要がある。

 王族専用の高速艇を使えばファルケ国へ寄る必要もないのだが、人や物が大量に乗せられないという欠点がある。


「最終確認だ、護衛騎士三十人、お世話係十人、料理担当五人、宰相と書記と会計が計六人……全員揃っているかっ」

「はいっ、全員確認しました!」

「食料、交易品、日用品、問題ありません!」


 飛び交う最終確認に、アルバスはまもなく船に乗り込むヒルンダ宰相に問いかける。


「やはり騎士は少なくないか? モズ国は軍事国家だ……用心に越したことはないが」


 その言葉に、呆れたような口調でヒルンダは口を開く。


「何度も申し上げますが、今回はあくまでも同盟交渉です。

 今回の軍事国家へ行くことを加味した上で、三十人なんです。

 これ以上多くすれば逆に敵対の意思があると捉えられかねません」

「それは聞いたが……」

「今回はことがことだけに、心配になる気持ちはわかります。

 しかし、護衛騎士を増やせば安心……というわけでもないのです」

「まあ、そうだけど……」


 ヒルンダの正論にまだ納得いっていないアルバスだが、彼女は周りに聞こえないよう、声を顰めて話を続ける。


「それに、今後については我々もそうですが、作戦を実行する全員が協力する必要があります」

「……」

「国王のことはわたくしにお任せください……作戦の成功、期待しております」

「わかった、国王は任せる……こちらのことは心配するな」

「一番心配していたのは、お兄様でしょう」


 背後からストリが、少し呆れたように突っ込んだ。

 彼は出航の準備が終わったと連絡を入れに来たのだ。



 船が出航し、甲板にはトキアスが小さくなるリューゲル国を見つめていた。


『トキアス様、無事に帰って来られることを、心より願っております』


 送りに来てくれたフォルンがそう言いながら、檜の贈り箱を渡してくれた。

 箱を開けるとシルバーのバックルに、宝石――に見えるが、羽澄たちの魔力が注がれた術石が散りばめられた腕輪が入っていた。


(私の好みに合わせてくれたのか……)


 すでに身につけている装飾品と馴染んでおり、特別な施しがされているとは気づかれないだろう。


「トキアス、その腕輪はお守りか?」

「ええ、フォルンから……贈られまして」

「私もな、子供たちから贈られたよ」


 国王が取り出したのは、蓋に三つの術石がはめられた懐中時計。


「子供たちだけでなく、レンカクもこの術石を作ってくれた」

「それは、とても強いお守りとなるでしょう」


 国王の嬉しそうな、言葉を聞きながら、トキアスは贈り箱の蓋の内側を国王と共に見る。

 そこにはブレスレットにはめられている、術石に封じられた魔法と、お守りの効力が書かれていた。

 術石は全部で七個、一番多いのは当然コルヴァンの術石だ。


「これは、なんとも……」

「フォルンから、というよりはコルヴァンから……ですかね」

「数もそうだが、珍しい魔法も多い……聖骨院は何故ただの治療師なのだ?」

「……それがいちばんの謎ですね」


 二人とも不思議そうな顔をしながら、もう見えなくなったリューゲル国に視線を向けたのだった。



 一方、国王を見送ったアルバスたちは、ここからが本番だった。

 ストリを港に残し、足早に城へ戻り騎士を招集させる。


[お兄様、コンカ家を乗せた船がモズ国へ旅立ちました、カルガノと奥方、サイシンとギブスも船に乗っております]

[わかった、ストリはそのままレンカクと合流してくれ]

[了解です]


 ストリから連絡を受けると、アルバスは騎士たちに命令を下す。


「第一隊はコンカ家の包囲と、親族並びに家臣の拘束。

 情報ではコンカ家の末娘が残り、本宅を守っているはずだ。

 第二隊は俺と一緒に遊毒茸の生息地に向かう、目的は遊毒茸の処分だ」

「はっ、第一隊、出ます!」


 証拠隠滅を計られないよう、第一隊でコンカ家当主がいない本宅の全てを抑える。

 そして第二隊は少数で、諸悪の根源である遊毒茸の生息地へ向かい、処分を行う。


「第二隊も、現場へ向かうぞ」

「はっ!」


 アルバスは護衛騎士の剣士テリクスと、魔法剣士のシュバと共に馬車へ乗り込む。

 もう一台騎士が四人乗った馬車と、遊毒茸生息地に向かう途中……アルバスは一人で考え込む。


(第一隊にはレンカクが同行し、尋問を担当する……これで次の栽培場を聞き出す)


 神選会の教祖であるレンカクは、魔法で発言が嘘か真実か見破ることができる。

 栽培場がある土地はギブスのおかげでわかっていたが、その詳細は不明なままだ。


(栽培場をモズ国へ移し、そのまま移住……とはな)


 そしてモズ国にて遊毒茸、増強剤の増産とさらなる研究……最終的にはどんなに怪我をしても戦う戦士を生む、恐ろしい薬を作成する予定だという。


(この情報を持ってきたギブスの表情は……ずっと忘れられないだろうな)


 リューゲル国を捨て、モズ国へ移住する計画を立て……そして罪はギブスになすりつける。


(これは国を守るためだけじゃない……)


 自分の家を愛した、たった一人の被害者を救うための戦いでもある。


登場人物

第二王子:ヴァルディア・アルバス

第三王子:ヴァルディア・ストリ

国王:ヴァルディ・ガルーダ

大富豪:ハルビア・トキアス

女宰相:ホウヅキ・ヒルンダ

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