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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第九十一話 過ちの先に、託された情報

 聖骨院が開店し、石工職人の治療が終わった頃、ファルケ国から薬を持ってミロルが戻ってきた。


「お待たせー、全員分の試験薬持ってきたわよ」

「ママ、おかえり」

「ただいま……それじゃあ薬の説明は任せて」

「ああ、それじゃあ俺たちはこのまま他の患者を治療しよう」

「ミロルさん、お手伝いが必要であれば呼んでください」


 そう会話をしてからミロルは石工職人が待つ待合室へと向かう。

 受付をしているコルヴァンが、他の患者に聞こえないよう結界魔法を使う。

 トラブルが無いよう、見張りも兼ねていた。


「では、これから薬を配ってから説明します」


 薬を配り始めながらミロルは、意外としずかな職人たちに驚く。


(てっきり遅いとか文句をつけられるのかと思ったけど)


 一昨日の態度が酷く、ミロルが疑うのもしょうがない。

 配り終えた後も、おとなしくミロルの言葉を待っている。


(まるで犬に『待て』を指示している気分だわ)


 そんなことを思いながら、石工職人たちに向き合った。


「えーでは、説明します。

 これは植物の研究施設に依頼をしていた、遊毒茸に対抗した依存性を消す薬です。

 まあ、依存性は時が経てばなくなりますが、我慢できず原因である遊毒茸を接種すれば再発します。

 我慢する辛さは……皆さんがよく知っているでしょう」


 まるで演説のように問い掛ければ、全員高速で縦に頷く。


(やっぱり犬かしら、この職人たち)


 ちょっと笑いそうになるのを堪えつつ説明を続ける。


「理論上はこの薬を最長三日間、朝昼晩の毎食後に一錠服用すれば治るはずです。

 治る日数によっては、人によって違います。

 そしてこれはあくまでも試験薬ですので、治らない可能性もあります。

 その場合は、治療薬が完成した時点で、謝礼として無料で提供します。

 もちろん今回の試験薬で治った場合も、謝礼として金額はいただきません」


 ここまで一気に喋ると、一人の職人が「質問がある」と、手を挙げた。

 それは一昨日、人一倍羽澄に文句を言っていた人間だ。


「なんでしょう」


 少し身構えながらその質問を聞くと。


「この人数の薬代を無料にするとか正気か?

 いくら試験薬と言ってもこれを作る労力や、金額は相当なものだろう」

「それはそうですね。

 この研究所はこの国ではありません……謝礼も輸送費もバカになりませんね」


 本当は魔法を使って行き来しているし、共同制作として材料費は折半等、バカみたいに金額はかかっていない。

 ただイタズラ心でそういえば、まるで犬の耳が垂れるようにしゅんとなる職人たちがおかしくてしょうがない。


「それを違反を犯した我々に、しかも完成したら無料で提供など……聖骨院に負担がかかるだろう」


 言われて心配されていることに気付く、負担といえばそうだが、そこまで心配されるほどでは無い。


(どちらかというと、エルシアお姉様に負担をかけているのだけれど……)


 困ったようにコルヴァンを見れば、優しく微笑みながら頷き、素直な気持ちを言えばいいと背中を押される。


「依存性に関してはいろんな人が悩み、時間だけが治療方法とされていました。

 これを完成させることにより、悩める人たちを救うことができる……そこにお金は関係ありません。

――我々は治療師として、救う喜びのためにこの試験薬を完成させたいんです」


 ミロルは治療師としての素直な気持ちに、質問した職人も誰も何もいうことはできなかった。

 ただコルヴァンだけが、誇らしげに頷いていた。



【試験薬 胃浄化薬】


・一回 一錠(十五歳以下は服用禁止)

・体に問題ない薬だが、人によっては副作用が出る可能性あり(腹痛、頭痛など)

・胃から浄化していく薬なため、異常状態(毒、痺れ)だけでなく、回復や能力上昇の魔法が効かない可能性あり


※この薬により、胃の荒れ・もたれもなくなる可能性あり。

 その際は聖骨院へ報告すること。



「はい皆さーん、メモ取りましたかー?」


――はーい


「何かあればすぐ聖骨院に報告くれますかー?」


――はーい


「もう、禁制治療布はつかわないでください!」


――はーい


「うむ、よろしい」


 ミロルは満足げに頷くが、コルヴァンには大人が子供に言い聞かせているようにしか見えなかった。


(さすがミロルさん……といったところか?)


 と思っていると、ミロルが一人の男と話している。

 さっき治療薬の無料提供について質問していた男性だ。

 ふと、ミロルがコルヴァンを手招きする。


「どうした」

「うん、この結界を張ったまま聞いて欲しいんだけど」

「ああ、わかった」

「禁制治療布の購入方法について教えてくれるって」


 彼らは依存がやめられなかった場合、いつでも購入できるようにとギルドマスターのヴェルにも伝えていなかった話。


「俺はミロルさんのような、仕事に対してのプライドを忘れていたような気がする。

 金のためだけに働いて、効率よく仕事を終わらせ楽できるか……客が喜ぶことを考える気持ちを――忘れていた」


 口を開いた男は、後悔したように顔を歪めていた。


「もう二度と、楽な方には逃げない……そして俺たちのように偽物の粗悪品を使う人間がいないよう、この情報を役立ててほしい」



「ストリ様、治療師ギルドはいかがですか?」


 コルヴァンはフォルンとともにギルド連合会館に来て、表向きは治療師ギルドの様子見ということでストリと会話をする。


「前もって通知をしていたからか、治療師ギルドに登録してくれる治療師さんが多くて。

 早速治療師の派遣依頼があったから、紹介したところだったんだ」

「好調そうでよかった。

 俺たちは石工職人たちの治療で魔力がすっからかんです」

「午後はミロルさんに回復魔法はお任せしています……羽澄が一番大変ですので、帰りに美味しいお菓子でも買って帰ろうかと思っています」


 そんなたわいもない会話をしているフォルンとコルヴァンの様子に、ストリは何かを察したのか治療師ギルドの受付を、他のスタッフに任せる。


「今日の報告も兼ねて、こちらでお話ししましょう」


 そう言いながら、職務室に入り結界魔法をかけるストリ。


「さて……何かありましたか?」

「ストリ様……立派になられて」

「え、今そこ?」


 思わずフォルンが突っ込んでしまう。

 確かにコルヴァンは幼い頃からストリを見守っていたが、これから重要な話をしようとしている時に感動している場合じゃない。


「……失礼しました、弟のように思っていたストリ様が、ギルドマスターとして立派になられたと、思ったら……うう」

「そう言ってくれるのは嬉しいけど、とりあえず今は報告を聞かせて?

 何かあったんだよね」

「はい、コルヴァンは使い物にならないので私が説明します」


 何か諦めた表情になったフォルンは、ストリに説明を始めた。


「禁制治療布の購入方法がわかりました」

「それは、石工職人たちが?」

「はい、とても反省しているようで……購入場所にとある合言葉を言えば購入できるようです」

「ぐす、ただ、その合言葉が……酷くて」


 まだ涙目のコルヴァンが言葉を濁し、フォルンも言いづらそうにしている。


「……その合言葉は、コンカ家に関わることですか?」

「――はい」


 フォルンの返事にストリは全て察したように視線を鋭くした。

 実は少し前にバッセルから、とある情報を聞かされていた。

 それもコンカ家に関わる、酷い話。


(どうしてギブスばかりに、罪をなすりつけようとしていたのか……全てが明らかになった)


「教えてください、その合言葉を」


登場人物

第三王子:ヴァルディア・ストリ

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