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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第九十話 家族の祝福と、過ちを認めた者たち

「どこの馬の骨ともわからない男に、うちの大事な娘をやれるかっ」

「なんでママがその台詞を言うの」


 羽澄が作った料理の数々に舌鼓を打ちながらミロルが突然ぶっ込んできた台詞。

 呆れた顔をしているのは羽澄だけじゃなく、翔も同じだった。


「コルヴァン君の身元はしっかりしているから、そんなことを言うつもりはないよ」

「俺はなんの話をしているのかさっぱりわからないんだが……」


 現代ではよくあるシーンだが当然コルヴァンは分からない。

 そんな彼に羽澄と翔は口をそろえて。


「「気にしなくて良いよ」」


 と苦笑した。


「言っておくけど、コルヴァン君となら反対する気はない……俺はミロルに親が祝福する結婚をしてあげられなかったから――親の立場になったら、ちゃんと認めたいと思っていたんだ」


 今までミロルにも話したことが無い心の内に、ふざけていたミロルは小さな声で「ごめんなさい」と呟いた。


「まあでも、羽澄を不幸にしたら、許さないけどね」


 にこりと微笑みながら、片手で拳を作り、もう片方の手のひらにパチンと当てる。

 実際は衝撃波がでそうなほどの音が出て、コルヴァンは思わず身震いしてしまった。


「はいっ、絶対大切にします!」

「……翔さんは、元聖拳士にも勝てそうよね」


 こうして顔合わせ的な食事は、にこやか……たまにおびえつつ和やかに過ぎていった。


「そうそう、明日のことなんだけど」


 ふと思い出したようにミロルが声を上げる。


「私朝一でファルケ国に行ってくるわ……申し訳ないけど、家を出るのを早めたいのだけど」

「ああ、私は大丈夫だけど……もしかして遊毒茸の研究に進展があったのかな?」


 ミロルはエルシア王妹とケツァル国王との和解をしたことで、血統共鳴で会話できるようになっていた。


「ほら、トキアス様がおっしゃっていた……飲み薬のことを伝えたら、大興奮だったわ」


 それはギルド連合ギルド会館から出たときに会話した時、最後にトキアスがミロルに伝えた助言。


『空腹による依存性なら、胃に直接回復魔法か浄化魔法がかけられる錠剤を作ってみてはどうだ』

『胃に、直接ですか?』

『ああ、羽澄たちの聖癒布の話を聞いた後、浄化魔法入りの錠剤があれば、胃が荒れたときでも治せるんじゃないかと思ってな』

『それは……確かに、胃の荒れやむかつきは回復魔法をかけても治りませんね』

『確かに聖癒布は患部に貼りますから……直接治療している状態と同じになるということですね』


 ミロルと羽澄は納得すると同時に、思い浮かぶ薬があった。


『胃薬みたいね』

『確かに胃に直接届くから……胃薬はあながち間違いじゃないね』

『初めて聞いた言葉だが、名前からして胃に効きそうだな』

『今回の場合だと、遊毒茸の成分が胃に悪さをしていると考えられますから……もしかしたら効果的かも』


 コルヴァンとフォルンも胃薬の提案に興味が出る。


『本当はその薬を自分で作って売り出したいところだったのだが、なにぶん薬草の知識も技術も無いからな……聖骨院に相談しようと思っていたのだ』

『わかりました、お姉様……研究施設に提案してみます』


 こうしてミロルが血統共鳴で、薬の提案をエルシア王妹に報告したのだった。


「もうできたのかな?」

「可能性はあるわね『寝ずに作業すれば、明日には……』とか呟いていたから」

「薬ができるのは嬉しいが、無理しないでほしいな」

「明日の営業には間に合わないかもしれないけど、いいかしら」


 必ず忙しくなるであろう明日の営業、羽澄とコルヴァンは迷いなく微笑み頷いた。


「もちろん、フォルンもいるから大丈夫だよ」

「そうだな、それより依存性をすぐ治せるならその方法を探すことが優先順位としては高い」


 こうして明日、ミロルはファルケ国に向かうこととなった。



 そして次の日、ミロルはファルケ国に向かい、羽澄とコルヴァンは仲良く聖骨院に向かう。

 そこには石工職人による長蛇の列ができあがっていた。


「……全員いるみたいね」


 おとなしく並ぶ姿は、一昨日文句を言っていた職人とは別人のようだった。

 羽澄たちは少し気にしながらも聖骨院に入っていこうとすると、全員で頭を下げ、一斉に謝罪する。


「申し訳ありませんでしたっ」

「っ」


 少し驚きつつも、ちゃんと聞こえた謝罪に羽澄は優しく微笑んだ。


「今日は全力で、皆さんを治しますね」

「もし理不尽な発言があった場合は、容赦しないがな」


 にこやかな羽澄の後で、聖拳士だった頃の気迫でコルヴァンが佇む。

 その様子に、一度は頭を下げた石工職人たちは、またも勢いよく頭を下げるのだった。



 聖骨院が開く時間、宣言通りミロルは帰ってこなかったのだが、とある指示が羽澄に告げられる。


「あー……なるほど」

「羽澄、どうしたの?」


 コルヴァンと一緒に治療の補助として準備していたフォルンが、突然声を上げた羽澄に尋ねる。


「うん、今ママから連絡があって……治療試験の協力をしてくれる人を、石工職人から募れないかって」

「試薬が出来たのか?」

「そうみたい、本当に寝ずに作ったみたいで……」


 驚くコルヴァンに苦笑する羽澄、そして少し考えてからフォルンが口を開いた。


「研究所で安全性が確認されているなら、治療試験はいいと思うわ。

 協力してくれた人には完成した治療薬を、無料で提供するとか良いと思う」

「そうだな……今回の治療で、普段の治療より料金が掛かるわけだし、節約できると喜ぶ者もいるだろう」

「これで罰金が掛かっていたら……恐ろしいわね」

「ヴェル殿の『泣いて喜ぶ』って言う言葉も、あながち間違いじゃないな」


 羽澄の言葉にコルヴァンとフォルンも同意する。


「さあ、聖骨院を開けよう」


 方針が決まり、羽澄は聖骨院の入り口の鍵を開けた。


登場人物

羽澄の父親:鷹野 翔

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